日刊サイゾー トップ > エンタメ > アイドル  > K-POPと韓国の兵役義務

SHINeeとユンホが提示した“ベテランK-POPスター”の在り方 キャリアを分断する「兵役」の先にある景色

どんなに年齢を重ねても成長できることを体現したSHINee

 さらに2月にカムバックしたSHINeeも鮮烈だった。彼らはテミン以外が昨年後半に兵役を終えたばかり。どんな内容にになるのか楽しみだったが、想像以上だった。カムバ曲「Don’t Call Me」ではアーティスティックだがダーティなコンセプトを表現して見せた。アメリカやヨーロッパの誰かの真似ではなく、SHINeeらしいのにこれまで見たことないスタイル。

 あと歌詞もすごい。未練がましい元カノに「もう電話してくんな」と延々と言い続ける。解釈によっては、アイドルのプライベートにずけずけと侵食してくるサセンや、度を越した中傷をネットで繰り広げるアンチペンに対するステイトメントと読み取ることもできた。私もすべてのK-POPを聴いてるわけじゃないが、アイドルファンの問題をダイレクトに歌った曲はおそらく初めてだろう。

 さらに驚いたのが、これまでSHINeeの中ではどちらかといえばビジュアル担当と思われていたミンホが、歌もラップもダンスも異常にうまくなっていたということ。しかも彼は昨年11月15日に海兵隊を除隊したばかりなのだ。どんなに年齢を重ねても人間は成長できると身を以て表現しているかのようだった。

 SHINeeもユンホも韓国有数の芸能事務所であるSMエンターテインメントに所属するトップ中のトップ。K-POPのリビングレジェンド枠だからこそカムバに大きな予算が付いて、ゴージャスに活動できたという側面は確実にある。だがそれ以上に着目したいのが、彼らが20代の頃とはまったく違う挑戦的なイメージを打ち出してきたこと。これはRainとパク・ジニョンがコラボした「나로 바꾸자 Switch to me」にも言える。

ベテランたちの表現がK-POPをより豊かにする

 考えてもみて欲しい。普通なら友達と遊んで過ごす10代を黙々と練習生として過ごし、奇跡的な確率でデビューし、さらに血の滲むような努力で芸能界で自分たちの場所を作っても、20代のどこかで絶対に一年半も離脱を余儀なくされる。芸能界は、その間も絶え間なく消費者にコンテンツを提供し続ける。男性アイドルはヌルヌルと人々の記憶から消えていく。そんな構造があっていいわけがない。

 仮に20代のようなピチピチしたルックスを維持できなくなったら、今度は経験を創作活動に向ければいい。若い頃には気づかなかったことがたくさん見えてくる。歌でも振り付けでも歌詞でも。ベテランたちの表現は示唆に富んでいた。最近若いグループのインタビューで「SHINeeや東方神起に影響を受けた」という発言を目にする機会が多い。そういう意味でも、今回のカムバは後輩たちにも大きな影響を与え、より面白く豊かなK-POPシーンを作るきっかけになるはずだ。

宮崎敬太(ライター)

音楽ライター1977年神奈川県生まれ。「音楽ナタリー」「BARKS」「MySpace Japan」といったインターネットサイトで編集と執筆を担当。2013年に巻紗葉名義でインタビュー集『街のものがたり 新世代ラッパーたちの証言 (ele-king books) 』を発表した。2015年12月よりフリーランスに。柴犬を愛している。

みやざきけいた

最終更新:2021/03/17 12:00
12
ページ上部へ戻る

配給映画

トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • twitter
  • feed
特集

【4月開始の春ドラマ】放送日、視聴率・裏事情・忖度なしレビュー!

月9、日曜劇場、木曜劇場…スタート日一覧、最新情報公開中!
写真
インタビュー

『マツコの知らない世界』出演裏話

1月23日放送の『マツコの知らない世界』(T...…
写真
人気連載

山崎製パンで特大スキャンダル

今週の注目記事・1「『売上1兆円超』『山崎製パ...…
写真
イチオシ記事

バナナマン・設楽が語った「売れ方」の話

 ウエストランド・井口浩之ととろサーモン・久保田かずのぶというお笑い界きっての毒舌芸人2人によるトーク番組『耳の穴かっぽじって聞け!』(テレビ朝日...…
写真