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小川彩佳アナ離婚批判報道に垣間見られる「わきまえない女が許せない人」たちの存在

小川彩佳さんの反論にある正当性

 小川彩佳さんが「事実誤認があります」と発言したのは、記事の中に“誤情報”があるからに他ならない。そして、テレビ番組に出演しているアナウンサーだからといって、法律はもちろんのこと、すべてを暴露しないといけないという社内規定もないだろう。それを「正々堂々と反論すべき」などと、あまりにもおかしい。

「正々堂々」の意味は、「恐れたり怯えることなく立ち向かうさま。また正しい態度で立派であること。悪びれたところがなく、やりかたも正しいこと」だ。彼女は現時点で、すでに正々堂々としている。にもかかわらず、「プライベートを語らない」というだけで、まるで犯罪者が罪の証拠を隠しているかのようにあげつらっている。

 そもそも、小川彩佳さんがすべてを語りたがらないのも当然だ。離婚や財産分与といった話題は、非常にセンシティブでプライベートな話題だ。それに関して、メディアで多く語りたくないだなんて当然のことだ。

 そして、どの事実が誤認であると詳細に語ったとしても、必ずそれに関しての誹謗中傷やウェブニュースの記事が彼女に寄せられるだろう。TBSは、恐らくそれがわかっている。だからこそ、小川彩佳さんの代弁を承ったのだろう。彼女自身が発言すれば、角が立つ。もしかすると、彼女に対して批判的な意見を持った何者かが彼女を物理的に攻撃するかもしれない。

 ただでさえ信じていた夫の裏切りに心を痛めている中でそういった事態になれば、彼女が潰れてしまいかねない。TBSはそれを危惧し、彼女を守るためにこれまでして来なかった「フリーアナウンサーの代弁」を担ったのだろう。

 もし「筋違い」と指摘するのであれば、こうしたイレギュラーな対応をしたTBSに対してであるが、私は、何の意味も持たない慣習を無視して、ひとりのアナウンサーを守るために会社として行動したTBSが、とてもすばらしいと感じた。

 しかし、批判は小川彩佳さんに向く。「無関係である企業に個人の見解を代弁させて輪を乱した不正義な悪女」といったようにあげつらい、批判の目を向けさせる。真っ当な人であれば、いったいこのようなことをして何になるのかと思うかもしれない。けれど、こういった報道は、一部インターネットユーザーから非常に求められている。

 それは、「わきまえない女が許せない人」だ。

被害女性は“悲しい顔”をしていないと社会性を失う

 不倫報道のみならず、セクハラ、性犯罪といった、女性としての被害を受けた女性は、悲しんでいなければ社会性を失ってしまう社会が形成されている。これは、経験した人でないとわからないかもしれない。

 女性が女性として受ける被害は、刑事事件であれ民事事件であれ、「女性が自衛を怠った結果」とされることが非常に多い。だから、被害を訴える女性は、反省していなければならない。怒るだなんて以ての外、憤りを表明した瞬間に「犯罪をでっちあげた悪人」さながらバッシングされ、社会性の一切を失ってしまいかねない。

 つまり、被害をつまびらかに訴えた上で社会性を保ちたければ、一生「私が至らなかったから悪いんです」と悲しい顔をしていなければならない。怒ったり笑ったりしてはいけない。永遠に悲しみに沈む被害以外の被害を訴えれば、モンスター被害者だとしてバッシングされて然るべき存在とされる。

 これは世間からだけでなく、警察からもそう扱われるのが実情だ。

 ストーカー被害を相談した女性に対して「思わせぶりな態度を取ったから悪い」として追い返すという事例は、しばしば私の耳に届くし、私もそうやって追い返された経験が何度もある。どう考えてもストーカーが悪いし、犯罪被害に遭ったら怒って当然だ。

 そういった背景があるからこそ、多くの女性は泣き寝入りを選ぶ。一度訴えてしまえば、一生それがついて回る。永遠に怒ったり笑ったりできない。それをするためには、社会不適合者と扱われる覚悟をしなければならない。それであれば、社会性を保つために泣き寝入りしたほうがマシだと考えて。

 あまりにもばかげている。どのような表情、立ち振る舞いをしようと、被害は被害としてそこに在って、その性質は何も変わりはしない。それなのに、視覚情報ですべてを判断する安直極まりない人があまりにも多すぎる。そしてそういう人に限って、安直にSNSで批判を拡散する。そして、批判、誹謗中傷、不満、そういった悪意がインターネットに充満し、何の罪もない人がバッシングしてインセンティブを獲得するネットメディアが幅を利かせ、加害者を肯定する社会が着々と形成されていく。

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