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『チコちゃんに叱られる!』なぜ弁護士は“福男”ばりに走るのか? 判決の紙を急いで出す日本の裁判システムの謎

文=寺西ジャジューカ(てらにし・じゃじゅーか)

『チコちゃんに叱られる!』なぜ弁護士は福男ばりに走るのか? 判決の紙を急いで出す日本の裁判システムの謎の画像1
『チコちゃん叱られる!』(NHK)

 6月18日放送『チコちゃん叱られる!』(NHK)のゲストは小芝風花とEXILEのTAKAHIRO。どちらも初登場だ。

今回、番組が取り上げたのは以下の3つのテーマだった。

・なんで子どもの頃は嫌だった注射が大人になると平気になるの?
・なんで人は12個で物をまとめたがるの?
・裁判で勝訴や無罪の紙を持って走っている人って誰?

子どもが受ける注射は大人の10倍痛い!?

 この日最初のテーマは、「なんで子どもの頃は嫌だった注射が大人になると平気になるの?」という疑問。いや、大人になっても痛いし平気じゃないんですけど……。まあ、真面目に問題を考えると、他に痛いことを経験したからというのはある気がする。何しろ、出産なんてすごい痛みだろう。だから、慣れたのでは? あと、注射する側の技術によるところも大きいと思う。上手い看護師さんに打ってもらうと、本当に痛みを感じない。その他に、昔と比べ注射針が細くなったという要因もあるはずだ。というか、本音を言ってしまうと、大人なのに注射を怖がっていたら恥ずかしい。だから、平気なフリして諦めて打ってもらっているのが正直なところである。

 いや、どうやらどれも不正解のよう。チコちゃんが発表した正解は、「痛みが10分の1になるから」であった。 そもそも、皮膚の表面には痛みを感じる痛点が1平方センチメートルあたり100以上あるらしい。痛点が刺激されると、その信号が脊髄を伝わって脳に伝わり、痛いと感じる。子どもの場合は脊髄に入った入口のところの神経がまだ十分に発達していない。大人は脊髄の入口の神経がしっかり分かれているので、痛みを分けて伝えることができるが、子どもはこの部分がまだ十分に分かれていないため、多くの神経が刺激されてしまう。そのため、同じ刺激でも子どものほうが痛みを強く感じるのだ。例えると、大人は1の刺激を1で伝えられるが、子どもは1の刺激に周りの神経が反応してしまい、刺激を数倍にしてから脳に伝えている。子どもの成長と痛みの感じ方を調べた研究では、7~9歳にかけて痛みの感じ方が男女ともにおよそ10分の1になっているとのこと。つまり、子どもは大人の10倍の痛みを感じながら注射を受けているのだ。

 これは半端じゃない話だ。大人の10倍痛いだなんて、そりゃあギャーギャー泣いて逃げ回るのも無理はない。今後、子どもに「これくらい我慢しなさい!」なんて言えなくなってしまったな……。というか、小さい頃にそこまで痛みを感じていたか、筆者はすっかり忘れてしまっていた。今の10倍痛いのなら、我ながらよく我慢できたものである。ただ、このデータに疑問がないわけじゃない。痛さとは主観的なものだ。そんなものを客観的に数値化できるのだろうか? この説を全面的に信用できないのだ。

 いや、「10倍痛い」にはもう1つ根拠があるらしい。子どもが感じる痛みには心理的な部分も関係している模様。不安や恐怖の感情によってさらに痛みが大きくなるというメカニズムがあるのだ。注射などの痛みが恐怖や不安の記憶として残ると、痛みを感知するセンサーや脊髄、脳の働きが変化し、今まで痛くなかった弱い刺激でも痛いと感じるようになるという。なるほど、この要因のほうが筆者は断然腑に落ちる。

 では、子どもが注射嫌いにならないためにはどうすれば良いか? 対策として、以下の3つの方法がある。

(1)意識をそらす
(2)皮膚をさする
(3)甘いものを食べる

 特に気になるのは、(2)の「皮膚をさする」だ。皮膚をさすってあげると脊髄の入口のゲートが閉じ、さらにスキンシップの作用でオキシトシンが脳から出て痛みを小さくするという。つまり、「痛いの痛いの飛んでいけ~」には科学的根拠があったのだ。余談だが、「痛いの痛いの飛んでいけ~」が世に広く知れ渡ったのは『8時だョ!全員集合』(TBS系)で加藤茶が使い始めたのがきっかけという説がある。

 最後に。このテーマには、少しばかりの意図が含まれていた気がする。今というタイミングで、ワクチン接種を促進する狙いもあったのではないか?

ツッコミどころ満載だった疑問「なんで人は12個で物をまとめたがるの?」

 この日2つ目のテーマは「なんで人は12個で物をまとめたがるの?」というもの。鉛筆やイチゴ、チョコレートなどが12個(1ダース)で売られていることを指しての疑問だ。確かに、不思議。だって、人間の指は10本なのだから。10ごとにまとめたほうが分けやすいし、数えやすい。ひょっとして、キリストの十二使徒から来ている? いや、チコちゃんが発表した正解は「争いが起きにくいから」だった。なんか、そのまんまの答えだな……。

 狩猟や採集をしていた時代から、仲間同士で食料や物を分けるという行為は人類にとって切実な問題だった。そして、分けるという観点で見るととても都合が良いのが12という数字だと番組は説く。例えば、ピザを分けるとき。10枚切りの場合、1人1枚ずつを除けば2人か5人でしか均等に分けることができない。9枚だと3人でしか均等に分けられない。それが12枚だと2人でも3人でも4人でも6人でも分けることができる。他の数と比べて12は分けられるパターンが多く、均等に分けるのにとても都合がよい数だった。だから、12という数字は争いが起こりにくいのだ……って、それなら「争いが起きにくいから」ではなく「分けやすいから」という正解にすればいいのに! なぜ、いちいちそんな遠回しな言い方をするのだろう?

 当時、時計の12時や1年の12カ月など12個に分ける考え方はすでに人類に浸透していた(前回の『チコちゃん』レビュー記事を参照)。この状況が「さらに12を使いたい」という気持ちを後押ししたと推測できるらしい。12でひとまとめにする12進法の考え方だ。

 例として、数の数え方を振り返ってみる。英語だと、one、two、three、four、five、six、seven、eight、nine、ten、eleven、twelve、thirteen、fourteen、fifteen……と、明らかにthirteenから呼び方が変わっている。

 ドイツ語だと、eins、zwei、drei、vier、fünf、sechs、sieben、acht、neun、zehn、elf、zwölf、dreizehn、vierzehn、fünfzehn……と、13を意味するdreizehnから呼び方が変わった。オランダ語も、een、twee、drie、vier、vijf、zes、zeven、acht、negen、tien、elf、twaalf、dertien、veertien、vijftienと~12までと13~の呼び方は明らかに違う……って、いやいや! ツッコミどころが多すぎて困った。そもそも、アメリカもドイツもオランダも同じインド・ヨーロッパ語族なんだから、数の数え方が似ているのは当たり前! じゃあ、日本は一体どうなのか? 十、十一、十二、十三、十四、十五……である。数え方は十三以降で全く変わっていない。そんな、日本をガン無視しながら立証しないでも。

 話を進めよう。我々の身の回りには、10個じゃなく12個でひとまとめにした商品で溢れている。例えば、トイレットペーパーは12ロール入りだ。イチゴも1パック12個入り。お中元のビールもドーナッツも赤福餅も野球ボールもゴルフボールも12個でひとまとめ。一体なぜ、今も12個をひとまとめにして売っているのか? それは、12という数が分けやすいからだけじゃない。もう1つ、「並べやすい」という性質を持っているからである。例えば、商品を並べるときに10個入りだったら10個で1列、2個で5列にするしか方法はない。でも、12個入りなら3個で4列、4個で3列など置き方のバリエーションが増える。12個だと売る側は並べやすいし、買う側は分けやすい。売り手も買い手もウィンウィンな数であり、この観点から見ても12は一番争いが起こらない数字なのだ……というのが、『チコちゃん』による解釈。実際、12個だと並べやすいし分けやすいと思う。

 でも、世の中を冷静に見てみてほしい。1ダースで売っている商品以上に、10個でまとまって売られている物のほうが多いはずだ。そもそも、世界中で10進法が広く使われている時点で矛盾しているし、日本人は数を「正」の字で数えていたものである。12を大正義にして話を進めるのは、やはり据わりが悪い。何しろ、森永のチョコレート『ダース』はダースを名乗りながら100円ショップでは9個しか入っていなかったりする。もはや、「12が分けやすい」も何もあったもんじゃない。だから、あまり納得のいかないテーマと答えだった。

裁判所でびろーんを出すのが禁止になり、今は弁護士がびろーんを担当

 この日最後のテーマは、「裁判で勝訴や無罪の紙を持って走っている人って誰?」という疑問。これ、実質的に三択問題だと思うのだ。きっと、裁判所の職員か弁護士か報道記者の内のどれかだろう。そういえば、ドラマ『リーガル・ハイ』(フジテレビ系)で、新垣結衣演じる弁護士・黛真知子が「無罪」の紙を掲げるシーンがあったはずだ。だから、答えは弁護士では? ……いや、チコちゃんが発表した正解は「足の速い若手弁護士」だった。「足の速い」まで書かないと正解じゃないのか……。というか、弁護士はあんなに慌ててやって来る必要があるのだろうか?

 実は、テレビや新聞でよく見る判決が書かれたあの紙は、弁護士の間で「はた」「びろーん」と呼ばれているそう。“びろーん”と出るから「びろーん」である。あんなお堅い場所で「びろーん」という言葉が多用されているという事実に笑う。谷啓に「びろーん」というギャグがあったが、響きとしては全く一緒だ。裁判の関係者や報道陣などに判決内容をいち早く伝えるために出され、公害問題や人権問題など注目度の高い裁判で出番が多いと言われている。

 今回、番組は2020年に初めて「びろーん」を出した弁護士の取材に成功した。加部歩人弁護士、その人だ。

「僕が初めてびろーんを出したのは、弁護士2年目になりたての頃で2020年。ニュースになった大きな裁判でした」(加部弁護士)

「僕が初めてびろーんを出したのは」という言葉のインパクトにたじろぐ。ここで唐突に始まったのは、「NHコスペシャル ドキュメント裁判 びろーんへの道」だった。加部弁護士のびろーん初体験に迫った再現VTRである。

 判決日まで残り2か月に迫ったこの日、担当の弁護士たちが集合した。議題は、判決内容を伝えるびろーんの文言だ。例えば、勝訴1つとっても「一部勝訴」「全面勝訴」「逆転勝訴」など判決内容によって使われる言葉はさまざま。どの判決にどのびろーんを出すべきか、議論しなければならない。原告の納得がいくびろーんを考えるため、会議は長時間に及んだ。結果、以下の文言に落ち着いた。「一部勝訴」「勝訴」「不当判決」「慰謝料を増額」「救済範囲拡大」「悪質性を認定」「実態を理解せず」の7種類だ。要するに、その場でびろーんの字を書いているのではなく、事前に何種類も用意しているということ。いや、それより“びろーん会議”が大真面目に開かれている事実に驚いた。このときの会議で、当日にびろーんを出す大役を任されたのは加部弁護士だった。

 加部が選ばれたのには理由がある。びろーんの歴史を遡れば、それは見えてくる。1963年の最高裁の判決など、当時は報道陣によって裁判所の窓からびろーんが出されていた。しかし1968年からは、秩序維持のため裁判所の敷地内でびろーんを出すことが禁止に。報道陣が出すびろーんをはじめ、当時の裁判所は色々な人がビラや看板等を出す状況があったらしい。それらの中には裁判そのものに抗議をする言葉もあり、公平な裁判ができなくなると考えた裁判所が敷地内でのびろーん発表を禁止したのだ。しかし、これでは判決内容を早く伝えられない。それからは、報道陣に代わって弁護士が裁判所の中から走り、びろーんを出すようになった。でも、そのためには裁判所の職員や警備員に行く手を止められない必要がある。だから、警備員をかわすためも足の速い弁護士が選ばれるようになった……って、兵庫県・西宮神社の「​開門神事福男選び」じゃないんだから! 1度、びろーんを持たせて福男に裁判所を走らせてみたいものだ。

 いや、今はもう裁判所内でびろーんを出すことはないらしい。それでも「外で待っている原告や報道陣に一刻も早く結果を伝えたい」という気持ちで、足の速い若手を選んでいるそうだ。つまり、もうただの様式美なのだろう。よく考えれば、走って来なくても電話とかLINEで外に伝えれば済む話である。それ以前に、法廷をテレビ中継すればこんなことをやる必要は全くなくなる。日本でしか残りようのないシステムだ。なんか、弁護士になりたい人が減るようなVTRだったな……。

 VTR終了後、「好きな足の速い人は誰?」と質問されたチコちゃんは「井出らっきょ」と即答した。5歳児なのに井出らっきょを知っているのか! 確かに、『ビートたけしのスポーツ大将』(テレビ朝日系)でカール君相手に100m走で善戦していたし、芸能界きっての韋駄天として有名だ。でも、果たして24歳の小芝風花は井出らっきょのことを知っていたのだろうか……?

寺西ジャジューカ(てらにし・じゃじゅーか)

寺西ジャジューカ(てらにし・じゃじゅーか)

1978年生まれ。得意分野は、芸能、音楽、格闘技、(昔の)プロレス系。『証言UWF』(宝島社)に執筆。

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最終更新:2021/06/25 18:00

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