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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】 vol.642

令和日本は「鎖国」状態が続いたままだった!? 難民申請をめぐるドキュメント『東京クルド』

文=長野辰次(ながの・たつじ)
令和日本は「鎖国」状態が続いたままだった!? 難民申請をめぐるドキュメント『東京クルド』の画像1
トルコから日本に来たラマザンとオザン。日本の小中高で学び、日本語は堪能だ。

 日本は今も鎖国状態が続いている。そう言うと、あなたは笑うだろうか。「江戸時代じゃあるまいし。東京オリンピックも始まるじゃないか」と否定するだろうか。もちろん、大手メディアは世界各国から選ばれた五輪選手たちの活躍を、連日にわたって伝えるに違いない。だが、その一方では日本の難民申請に対する法務省の難民認定率は0.53%(2020年)に過ぎず、入管こと出入国在留管理庁の収容所に入れられた外国人たちは非人道的な扱いを受けている。日向史有監督が撮ったドキュメンタリー映画『東京クルド』は、トルコで迫害されて日本に逃れてきたクルド人たちのシビアな現状を伝えている。

 本作の主人公となるのは、トルコ生まれ日本育ちのクルド人であるラマザン(19歳)とオザン(18歳)という2人の若者だ。トルコでは少数民族となるクルド人は、トルコの公的な場ではクルド語での会話を禁じられるなど、さまざまな差別や迫害を受けてきた歴史を持つ。1980年代以降、クルド人の独立を目指すクルド労働者党「PKK」の活動が活発化し、武力闘争には直接関係のないクルド人たちまでトルコ軍による粛清にさらされるようなった。トルコから日本へはビザなしで渡航できるため、生命の危険を感じて日本に逃れてくるトルコ系クルド人が近年急増したという社会背景がある。

 映画の冒頭では2015年10月にトルコ在日大使館前で起きたトルコ人とクルド人との激しい乱闘騒ぎが映し出されるなど、今も両民族間の亀裂は大きく開いたままだ。クルド人はトルコで迫害され、さらに日本で難民申請しても一件も認められていないという不安定な立場を強いられている。それでも、東京周辺には1500人前後のクルド人が暮らしているという。

 ラマザンとオザンは幼なじみで、2人とも小学生の頃に家族と一緒に日本にやってきた。2人とも流暢な日本語を話すだけでなく、仕草も服装もすっかり日本の若者っぽくなっている。日本の小中学校を卒業したものの、いまだに難民申請は認められていない。高校まで卒業したラマザンはトルコ語、クルド語、日本語が話せることから将来は通訳になるのが夢だ。外国人には難しい、漢字の勉強にも励んでいる。「将来、将来、将来」。ノートにびっしりと漢字を書き連ねるラマザンを、家族が温かく見守っている。

 一方のオザンも高校に通っていたが、1年で中退し、解体工事の現場で汗を流している。ラマザンもオザンも入管への収容を一時的に解かれた「仮放免」という立場であり、就労は許されていない。でも、生活保護を受けることもできないため、働かなくては食べていけない。解体現場で、黙々と働くオザン。世間では「不法就労外国人」とされる若者の素顔を、カメラはクローズアップする。

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