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性欲の解消だけではない……盗撮に“依存”する男たちの目的と被害を減らす“治療”

性欲の解消だけではない……盗撮に依存する男たちの目的と被害を減らす治療の画像1
(写真/Getty Images)

 警察庁の統計では、盗撮の検挙件数は2010年の1741件から2019年には3953件と倍以上に増えている。痴漢検挙件数は2007年の4515件をピークに2019年には2789件と減少傾向にあることとは対照的だ。急増の背景にはいったい何があるのか?

 大船榎本クリニックの精神保健福祉部長であり、盗撮加害者を含む様々な性犯罪者の“再発防止プログラム”に長年携わっている斉藤章佳氏は先頃、著書『盗撮をやめられない男たち』(扶桑社)を出版。同書の中で、そんな盗撮加害者たちの多くは性欲を目的にしているのではなく、盗撮行為そのものによる達成感や優越感を求めており、行為・プロセス依存の状態にあることを指摘している。盗撮加害者の知られざるファクトと、増え続ける盗撮を減らすために社会的に必要な取り組みについて、同氏に訊いた。

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斉藤章佳著『盗撮をやめられない男たち』(扶桑社)

加害と被害のバランスが取れていない犯罪

――盗撮の検挙件数が激増していますが、その背景は?

斉藤 スマホの普及と共に盗撮行為のハードルが下がったことが大きいですね。私たちのクリニックにおける受診者の推移を見ても、近年では痴漢よりも盗撮に関する相談が増えています。

 初めに断っておきますと、「特殊な人」が盗撮にハマるわけではありません。痴漢の加害者もそうですが、複数回逮捕されて弁護士の紹介や家族と共に私たちのクリニックに治療に来る方は、四大卒・家庭ありのサラリーマンが大半です。「自分でもできるかなと思って」といった些細なきっかけから問題行動を始め、「スマホがなければ盗撮しなかった」と語る人も多い。
 20年前であれば、ケータイ(ガラケー)での盗撮よりもビデオカメラ、デジカメ、小型カメラ等々の手口が多かったことを考えると、やはりデバイスの変化がもっとも大きい要因だと思います。この10年ほどで相談に来る人たちが低年齢化しており、盗撮している人の層が広がっている傾向があります。

――斉藤先生は盗撮をめぐる問題について、どんなことが世の中でもっとも理解されていないと感じていらっしゃいますか?

斉藤 性暴力の影響によって被害を受ける人が、どれほど大きな被害を受けているのかについてです。そのとき起きた「一次被害」については比較的理解されていますし、被害自体が可視化されやすいですが、実はその後の「二次被害」の影響が大きく、正確に実態が知られていない。被害者は、たとえ裁判が終わって加害者が罰を受けた後でも、生活の安全の感覚や自尊心にまで影響が及んで苦しんでいることが多い。盗撮とは単に女性の下着を盗み撮ることではなく、相手の自尊心や当たり前にある安全な感覚を奪う行為なんです。

――本の中には「ヒマを持て余すとやってしまう」という盗撮加害者の発言があり、驚きました。加害者側の動機の軽さと、被害者側が負う心の傷の重さが釣り合っていないですよね……。

斉藤 盗撮は加害と被害のバランスが取れていない犯罪です。「ヒマだから」というのは非常に雑な表現ですが、急遽空いた、やることがなくて持て余す時間に問題行動をしやすいのが依存症の方の特徴です。本書にも書いていますが、SALT(サルト)――すなわちSleep(睡眠不足)、Angry(怒り)、Lonely(孤独)、Tired(疲れ)が問題行動の再発のトリガー(引き金)としてよく挙げられます。

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