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性欲の解消だけではない……盗撮に“依存”する男たちの目的と被害を減らす“治療”

先生も親も盗撮の“教育”ができない

――では、盗撮を減らしていくためには、どんな取り組みが必要でしょうか?

斉藤 性犯罪や性暴力を減らしていくための予防的な取り組みとしては、一次予防、二次予防、三次予防の三段構えが重要です。

 一次予防は「啓発・教育」です。たとえば痴漢や盗撮もそうですが、学校での性教育ではほとんど扱われていません。先生や保護者も、なぜ痴漢や盗撮をする人がいるのか、そしてやめられないのか、明確に答えられる人がいない。でも毎日、痴漢被害に遭っている女子生徒がたくさんいる。校内で隠し撮りされた画像が男子生徒のLINEグループでシェアされているような実態があるのに、ネットリテラシーの教育でも許可なく他者を撮影するということの暴力性について扱われていない。このように、一次予防は性教育や加害者臨床の専門家が情報を発信していかないといけない領域です。

 二次予防は「早期発見・早期治療」です。問題行動開始から専門治療につながるまでの期間を短くするには、先ほど言ったように早い段階で刑事手続きに乗ることで治療につなげる流れを作る。ここは法改正が必要なポイントです。現在は治療に来る、来ないは任意ですが、治療プログラムに通うことが「必須」になれば、たとえ治療中断して再発したとしても、再度繰り返さないためのチャレンジがしやすくなります。治療の持続性が作れることが大きい。

 三次予防は「再発防止」です。具体的には、私どものクリニックでやっているようなリラプス・プリベンション・モデル(Relapse Prevention Model)に基づく専門のプログラムがあります。多くの依存症の問題で悩んでいる患者さんが依存行為をやめられなかった理由として、「やめかたがわからない」と答える方が多いんですね。盗撮に限らず、アルコールや薬物、ギャンブルでも同様です。今度こそやめようと決意して、家族に対して宣言するようなことは何度もやっている。いろいろ自己流で試すけれども、再発して以前の状態にまた戻ってしまう。「やめ方のノウハウを教える」ことも依存症の心理教育で重要なポイントなんです。どのようにすれば「やめる」ではなく「やめ続ける」ことができるのかについて、さまざまな視点から学習、そして実践してもらうプログラムを行います。

 この一次予防、二次予防、三次予防が連動して初めて、痴漢や盗撮の件数が減っていくのではないかと思っています。

斉藤章佳 (さいとう・あきよし)

精神保健福祉士・社会福祉士。大船榎本クリニック精神保健福祉部長。1979年生まれ。大学卒業後、アジア最大規模といわれる依存症回復施設の榎本クリニックでソーシャルワーカーとして、約20年にわたりアルコール依存症をはじめギャンブル・薬物・性犯罪・DV・窃盗症などさまざまな依存症問題に携わる。専門は加害者臨床で、現在までに2000人以上の性犯罪者の治療にかかわる。著書に『男が痴漢になる理由』『万引き依存症』(共にイースト・プレス)、『「小児性愛」という病――それは、愛ではない』(ブックマン社)、『しくじらない飲み方 酒に逃げずに生きるには』(集英社)、『セックス依存症』(幻冬舎新書)など多数。監修に漫画『セックス依存症になりました。』(津島隆太・作、集英社)がある。

マーケティング的視点と批評的観点からウェブカルチャーや出版産業、子どもの本について取材&調査して解説・分析。単著『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの?』(星海社新書)、『ウェブ小説の衝撃』(筑摩書房)など。「Yahoo!個人」「リアルサウンドブック」「現代ビジネス」「新文化」などに寄稿。単行本の聞き書き構成やコンサル業も。

いいだいちし

最終更新:2021/09/15 18:00
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