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性欲の解消だけではない……盗撮に“依存”する男たちの目的と被害を減らす“治療”

勃起や射精をしている人はほとんどいない?

――今、お話にあった「盗撮加害者には依存症になっている者が多い」ということ自体、知られていないですよね。

斉藤 盗撮をしている人すべてが依存症に陥っているとはもちろん言えませんが、繰り返していくうちに「やめたくてもやめられない」状態、つまり衝動制御ができなくなっていくことが考えられます。依存症の定義においては「コントロール障害の有無」が重要ですが、盗撮を繰り返す人には衝動制御障害――つまり、ある特定の状況や条件下で衝動の制御が困難、もしくはその衝動に抗えず対象行為を実行してしまうという傾向が見られます。

――撮ること自体が目的化して、撮った写真や動画をため込んでいるけど見返していないものも多いと語る盗撮加害者の発言もあり、これも驚きました。

斉藤 最初はマスターベーションを想定して盗撮(自己使用目的)していたのが、盗撮行為そのものによる達成感や優越感が動機になっていくケースが非常に多い。つまり、「盗撮のための盗撮」になっていくわけです。盗撮する前の緊張感と、盗撮した後の緊張の緩和による解放感が日常のストレスに対する一時的な対処行動になっていき、のめり込んでいってしまうんですね。
 こういうところが盗撮(窃視障害)と窃盗症(クレプトマニア)が似ているところです。万引き、クレプトマニアも最初は節約目的や金銭的な価値のために万引きしていたのが、繰り返していくうちに盗む物自体には興味がないのに盗むという行為への耽溺、つまり「万引きための万引き」に移行していきます。

――盗撮は性欲を解消するためにやっているわけではない、と。

斉藤 私が521名をヒアリングした範囲では、盗撮行為時に勃起や射精をしていると語った人はほとんどいません。もちろん、「盗撮時にはスカートの中を直接見ていないから勃起しないだろう」という解釈もあるとは思いますが、性的空想によって性欲を喚起されていれば勃起していると語る人がいてもいいはずなのに、「お風呂場をのぞく」といった「のぞき」を別にすると、盗撮加害者に関してはほとんど聞いたことがありません。

 以前、著書『男が痴漢になる理由』(イースト・プレス)という本で、痴漢をする人に対して行為時にどのくらい勃起や射精が伴っているかを訊きましたが、そのときは半々くらい。実は、痴漢も性欲のみに突き動かされて行動化しているわけではなく、盗撮同様、複合的な快楽が凝縮した行為といえます。

――先生のクリニックに治療に来た方に対する調査によると、盗撮を始めた動機は「興味本位」が26%、「性的関心」が18%、「盗撮サイト」が16%、「無音アプリ」が10%だそうですね。

斉藤 はい。アダルトサイトで盗撮モノのジャンルを好んで見ていた人や、「自分でもできそうだ」と思って好奇心から恐る恐る行動化し、やがて行為自体のスリルが目的になっていくケースがもっとも多いといえます。

再発防止のために刑罰と治療をセットに

――先ほどの521名のデータでは、盗撮開始の平均年齢は21.8歳(10~20代のうちに始めた人が全体の70%)で、盗撮者の平均頻度は週2~3回、そして盗撮開始から治療につながるまで7.2年もかかっていると著書にありました。問題行動を始めるのが若いうちからな上に、やめようと思うまでが長いですよね。

斉藤 逮捕を繰り返し裁判などになっていれば、さすがに周りも気づいて「専門治療に行ったほうがいい」と強く勧めますが、そうでもなければ日常生活のルーティンに組み込まれていて、「やめよう」という思考に至らない。しまいには、本人もなんのために盗撮をやっているのかわからないが、「盗撮しないといけない」というような義務感はある状態になっていく。これも窃盗症に似ています。

 加害者臨床の現場でよく聞くことができるエピソードとしては、「逮捕されなければ、ずっと盗撮を続けていました」という人が100%です。逮捕され、刑事手続きの段階で弁護人などから治療機関を紹介され、相談にくるケースがほとんどです。ということは、執行猶予が付く初犯の段階から刑罰と治療命令をセットにできれば、常習化する前に止めることができるはずです。

――本の中に、現在、盗撮行為は迷惑防止条例違反など微罪として扱われ、逮捕されても10万円程度の示談で済むことも多い一方、被害者のダメージが甚大であるため「盗撮罪」を作ろうという動きがあることが紹介されていました。もし、それが本当に作られるなら、刑罰と治療命令がセットになるといいですね。

斉藤 盗撮や痴漢、万引きのように被害者と加害者がいる他者の健康を害する依存症の問題では、「病気だから仕方ない」という考えに本人自身が傾きやすく、行為責任が隠蔽される危険性がある。また、世間から「なぜ加害者を治療しないといけないのか」と理解されるのに説明が必要です。しかし、私が考えているのは「刑罰よりも治療を」ではなく、「刑罰と適切な治療」という考え方です。加害行為の克服は本人の問題であり、薬物依存症と同様、刑罰だけでは再発防止ができないことは明らか。ですから、再発防止を目的とした専門治療をしていかなければ、また同じ犯罪が繰り返されることになります。

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