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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.660

男はなぜ“危険な女”に手が伸びてしまうのか? 万田邦敏監督が描く恋愛奇談『愛のまなざしを』

文=長野辰次(ながの・たつじ)

決定稿とは真逆となった映画の結末

男はなぜ“危険な女”に手が伸びてしまうのか? 万田邦敏監督が描く恋愛奇談『愛のまなざしを』の画像3
貴志は亡くなった妻・恵(中村ゆり)のことがどうしても忘れられない

 本作の英題は『Love Mooning』となっている。「mooning」には月光を浴びてボーッとしてしまうこと、お尻を丸出しにして相手を挑発する行為などの意味がある。綾子に挑発され続けた貴志は、誠実な精神科医だったはずが完全崩壊するはめになる。さらに茂の思惑も絡み、貴志、綾子、茂の関係は知恵の輪のように複雑に絡まっていく。どうすれば、この難解な知恵の輪をほどくことができるのだろうか。

 万田監督は本作のラストをどうするかを決めずに、撮影を進めたそうだ。愛することに本気で悩み続ける主人公たちをカメラで追い続けるうちに、「救い」のあるラストを用意することにしたという。その結果、決定稿とは真逆の結末となった。ただし、「救い」と言っても安易なハッピーエンドでは収まっていない。常人には理解しがたい着地点となっている。

 平凡な幸せであっても、それを手に入れるのは容易ではない。仮に、その幸せをようやく手に入れても、その幸せがいつか壊れてしまうのではないかという不安に今度は怯えることになる。薬物の過剰摂取と同じくらい、恋愛への過剰な依存は恐ろしい結果を招いてしまう。

 しかし、堕ちていく恋愛にブレーキを掛けることも、また難しい。その上、綾子はブレーキどころか、アクセル全開で迫ってくる。本作はどこまでも恋人に一途な女の歪んだ純愛を描いた恋愛奇談だ。狂った女のまなざしが忘れられない。

 

『愛のまなざしを』
監督/万田邦敏 脚本/万田珠実、万田邦敏
出演/仲村トオル、杉野希妃、斎藤工、中村ゆり、藤原大祐、万田祐介、松林うらら、ベンガル、森口瑤子、片桐はいり
配給/イオンエンターテイメント、朝日新聞社、和エンタテインメント 11月12日(金)より渋谷ユーロスペース、池袋シネマ・ロサ、キネカ大森、イオンシネマほか全国順次公開
©Love Mooning Film Partners
https://aimana-movie.com

長野辰次(ながの・たつじ)

長野辰次(ながの・たつじ)

フリーライター。著書に『バックステージヒーローズ』『パンドラ映画館 美女と楽園』など。共著に『世界のカルト監督列伝』『仰天カルト・ムービー100 PART2』ほか。

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最終更新:2021/11/05 18:00
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