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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.660

男はなぜ“危険な女”に手が伸びてしまうのか? 万田邦敏監督が描く恋愛奇談『愛のまなざしを』

文=長野辰次(ながの・たつじ)

男はなぜ“危険な女”に手が伸びてしまうのか? 万田邦敏監督が描く恋愛奇談『愛のまなざしを』の画像1
仲村トオルと杉野希妃が共演した“怖い”恋愛映画『愛のまなざしを』

 映画という虚構世界では、“狂った女”はとても美しい存在としてスクリーンに映し出される。万田邦敏監督の恋愛サスペンス『接吻』(08)は、狂気によって研ぎ澄まされた小池栄子の美しさが脳裏に焼き付く映画だった。同じく万田監督が撮り、仲村トオル、杉野希妃、斎藤工が共演した『愛のまなざしを』も、常軌を逸した恋愛の行末が描かれている。

 万田監督の待望の新作『愛のまなざしを』は、小さな精神科病院が舞台だ。日常生活からはみ出した“狂った女”を描くには、これ以上はない設定だろう。患者に対して誠実なカウンセリングを行なうことで評判の精神科医・滝沢貴志(仲村トオル)の診察室に、綾子(杉野希妃)が現れる。綾子は交際相手からモラハラを受けており、精神状態が不安定になっていた。交際相手とは距離を置き、生活環境を整えることを勧める貴志を、綾子はすっかり信頼する。元気になっても、貴志に会うために綾子は病院に通い続ける。

 患者の前では明るく振る舞っている貴志だが、実は6年前に妻の薫(中村ゆり)を亡くし、そのことがトラウマとなっていた。薫の面影が忘れられず、貴志は精神安定剤が手放せない状態だった。たまたま夜の病院に立ち寄った綾子は貴志の苦悩を知り、自分たちは似た者同士だと迫る。「患者とは付き合うことはできない」と拒む貴志だったが、綾子は「患者じゃなければいいんでしょう?」とすでに心の病から回復していると主張する。

 綾子は両親を早くに亡くし、ずっと孤独だったという。さらに、自分を引き取った叔父とその息子から性的虐待を受けていたという衝撃の過去も打ち明ける。「彼女を守ってやれるのは自分しかいない」と貴志は思い込み、綾子と再婚することを決意する。だが、綾子の口から出てくる言葉は、どれも嘘だらけだった。

 男の関心を惹くために平気で嘘をつく女。こんな女に手を出したら危ないと分かっていながらも、男はどうしようもなく引き寄せられてしまう。貴志もまた、困っている人を放っておくことができないという職業的な使命感もあって、綾子にかまってしまう。綾子と付き合うことで、亡くなった妻・薫を忘れられるかもしれないとも考えたのだろう。いわば「共依存」関係に陥った貴志と綾子が破滅的な恋愛地獄へと転がり落ちていく一部始終を、観客は目撃することになる。

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