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クロ現「コロナ禍の路地裏に立つ女性たち」生活保護を拒む女性、路地裏を“居場所”とする女性

底辺を這いずるのは女性も男性も同じ

 コロナ禍の去年から10~20代の若い女性を路地裏で多く見かけるようになった。地方の食品工場で非正規労働者として雇われていた千夏さん(仮名)は、コロナでシフトを大幅に減らされてしまった。現在、彼女が路地裏に立って手にするお金は月10万円で、そのうちの3万円は親への仕送りにあてているという。

「(コロナ前は)月に8万くらいもらってたんですけど、それが2万くらいに減っちゃってるんで何カ月か(他の仕事を)ずっと探してて、コロナでやっぱり見つからなくて」(千夏さん)

 街娼までして得た月の稼ぎは10万円で、その内の3万円は親へ仕送り。コロナ禍前でさえ、非正規雇用で月にたった8万円の収入だった。昨年、岡村隆史の「コロナで風俗に可愛い子が降りてくるはず」という趣旨の女性蔑視発言が話題になったが、もはやその次元の話ではない。とうの昔に、日本全体が貧困で苦しんでいた。

 取材VTRが終わると、スタジオにいる論客が持論を唱え始めた。女性や子どもの貧困を研究する立教大学の湯澤直美教授が口を開く。

「今の日本の社会はセーフティネットの底の底も抜けている状況だと思いますが、さらに女性を追い込んでいる現実がある。いまだに女性の差別とかジェンダー格差が解消されていない」
「女性を貶めていく仕組みがすでに社会に埋め込まれているのだと思いました。女性の性を買うとか搾取するとか、女性への暴力とか、そういう中の究極的な状況を見たと思いました」

 路地裏に立つ女性を特集した今回であったが、この現実を性差別に結びつけるのは浅はかという気がした。先決なのは、貧困問題。底辺を這いずるのは女性も男性も同じである。体を売る女性をどう救えるか話し合うべきなのに、ジェンダー論に結びつける切り口からは逆に女性差別を利用した印象を受けた。大切なのは彼女たち一人ひとりを理解することのはずだ。

 番組は女性の相談窓口にアクセスできるQRコードを紹介したが、これも危機感が足りなかった。彼女たちの困窮度を理解していない。全員がスマホを持っていると限らないし、素直に電話番号を表示するべきだった。あと、路上に立つ女性たちはNHKを見ていない気がするのも悲しい。そもそも、受信料も払えていないだろう。

 深刻なテーマだっただけに、もうあと2歩ほど突っ込んだ内容であってほしかった。「こんな現実がある」と問題意識を掲げ、解決を探らないまま自己満足で終わった感があったのだ。「生きていくのは大変」と視聴者に思わせ、その先に進む展開は果たしてあるのか? この日、クロ現プラスが終わり、その次に始まった番組が政見放送だったのも据わりが悪い。冗談にしか思えなかったのだ。

寺西ジャジューカ(芸能・テレビウォッチャー)

1978年生まれ。得意分野は、芸能、音楽、格闘技、(昔の)プロレス系。『証言UWF』(宝島社)に執筆。

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てらにしじゃじゅーか

最終更新:2021/11/10 07:00
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