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容赦なき都会サバイバル映画『ずっと独身でいるつもり?』の魅力

「変化」をポジティブに受け取れるメッセージも

容赦なき都会サバイバル映画『ずっと独身でいるつもり?』の魅力の画像3
多彩な出演者が物語を盛り上げる。(©2021 日活)

 容赦ナシの地獄のような映画だったと初めに掲げたが、本質的には都会で生きる全ての人々にエールを送る作品となっていることが重要だ。田中みな実は現代の30代の女性について以下のように語っており、それは映画の精神性と一致する価値観だった。

「仕事をしている、結婚している、子どものいる・いない、独身。それぞれの価値観で生きていても周囲は『こういう人』と決めつけ、カテゴライズしようとする。雑音を排除できるほどの自信はなく、世間にどう見られているかもやはり気になってしまう。若者からイタく見えていないだろうか、年上から生意気と思われないだろうか。女としてもしっかりと輝 いていたい。30 代前半から中盤、後半へとひとつずつ歳を重ねる毎に気持ちの変化やそれに伴う環境、人間関係が変わるのは必然で、ひとつひとつの選択が大きな意味を持ち始める大切な10年なのであろうと推測します」

 そうなのだ。年齢を重ねることでより周りから「カテゴライズ」される残酷性は確かに現実にはあるが、一方でその「変化」そのものをポジティブに受け止めることはできる。前述した通り田中みな実は2歳差の年齢の設定についても熟考し提案するほどに現実を見据えているが、考え方そのものは変えていけると認識している、田中みな実というその人が聡明な方なのだと気付かされた。

 その先にあるメッセージについては、徳永えりが作品を振り返って語った以下の言葉が完璧だった。

「『自分の幸せは自分で決める』ことの大切さを改めて感じました。性別や年齢、その他何にも囚われず、自分が生きたい生き方を選ぶことができれば、それだけで十分素晴らしいことだなと思いました」

 その通りだ。本作は都会でサバイブする女性たちの人生を、胸をえぐるような容赦のなさで描いてはいるが、(だからこそ)生き方を「自らの意思で」選び取る尊さが際立つ物語でもあったのだ。それは30代の女性に限らない、全ての人にとっての人生の目標にもなるだろう。わずか94分の上映時間で、それを描き切った本作は、間違いなく傑作だ。

『ずっと独身でいるつもり?』

2021年11月19日公開
主演:田中みな実 市川実和子 松村沙友理 徳永えり 稲葉友 松澤匠 / 山口紗弥加 / 藤井隆 / 橋爪淳 / 筒井真理子
原作:おかざき真里(原案:雨宮まみ)「ずっと独身でいるつもり?」(祥伝社フィールコミックス)
監督:ふくだももこ 脚本:坪田文 音楽:池永正二(あらかじめ決められた恋人たちへ)
主題歌:にしな「debbie」(WARNER MUSIC JAPAN)
製作:鳥羽乾二郎 エグゼクティブプロデューサー:福家康孝 企画・プロデュース:谷戸豊 プロデューサー:柴原祐一
ラインプロデューサー:濱松洋一 撮影:中村夏葉 照明:渡辺大介 録音:原川慎平 美術:佐久嶋依里 装飾:折戸美由紀
編集:宮島竜治 スタイリスト:山本杏那 ヘアメイク:寺沢ルミ 音響効果:井上奈津子 キャスティング:細川久美子 助監督:齊藤勇起 制作担当:天野佑亮 宣伝プロデューサー:梅原もも子
制作プロダクション: ダブ 企画・配給:日活
クレジット:(C)2021 日活

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最終更新:2021/11/20 08:00
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