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【日刊サイゾー】関西バラエティ番組事件簿

『ミルクボーイ内海と5人のクセ監督』ニッ社・辻のとんでもない映画の才能が開花!?

『ミルクボーイ内海と5人のクセ監督』ニッ社辻のとんでもない映画の才能が開花!?の画像1
関西テレビ『ミルクボーイ内海と5人のクセ監督』公式ツイッターより

 全国で人気のタレントを多数輩出し、またローカル番組らしい味わいがクセになる、関西制作のテレビ番組に注目する連載「関西バラエティ番組事件簿」。

 今回は、11月19日深夜にオンエアされた『ミルクボーイ内海と5人のクセ監督』(関西テレビ)を取り上げたい。

 同番組は、ミルクボーイの内海崇を主演に、相方・駒場孝、令和喜多みな実・野村尚平、ダブルアート・タグ、ニッポンの社長・辻、エルフの荒川がそれぞれ監督として制作した短編映画を流すというもの。5本すべてが京都を舞台にしており、映画『ひとくず』(2019年)の上西雄大監督がスペシャル審査員として出来上がった作品をジャッジする。

 ちなみに本記事ではネタバレに少々触れているので、これからカンテレドーガで見逃し配信を鑑賞予定の方は、ご注意願いたい。

ニッポンの社長・辻監督作は2021年のなかでも珠玉の短編

 大きな驚きを得た傑作を完成させたのが、ニッポンの社長の辻監督だ。筆者が2021年に鑑賞した短編作品のなかでもトップ級のすごさである。『団子屋』と題したこの短編は、団子屋の店主が、客である越後屋(内海)の傲慢な態度に腹を立て、団子に毒をふりかける物語。

 5作品のなかでもっとも映画的だった同作。究極的におもしろい短編映画というのは、セリフがなくても伝わるものだと筆者は考えている。その点、辻監督のこの『団子屋』は、フランスの映画発明者で「映画の父」と呼ばれるリュミエール兄弟が1895年に手がけた、無声の短編作品群を彷彿とさせた。チャーリー・チャップリン、バスター・キートンの無声映画はまさに代表的だが、映画とはつまり動画であり、「人が動いて何かをしている様を描く」という意味で、『団子屋』はとても重要な要素を押さえ作り上げられていた。

 例えば、ふたりの女性を両脇に抱えてだらしなく歩いている越後屋の登場場面。「ガハハ」という笑い声がなくても十分「いけ好かない感」がにじみ出ている。また団子屋で文句を垂れまくる様子も、クレームのセリフがなくても分かる。言葉やテロップに頼りがちな映画が多い分、仕草や動作だけでも魅せられるのは、映画監督として大きな才能と可能性があるのではないだろうか。

板尾創路、品川ヒロシ、ゴリらに続くか?

 越後屋、団子屋の運命が、話の始まりと終わりで変化(成長、退化など)しているところも、映画のストーリー作りとして完璧である。また映画には「ハプニング」とそれが起こるきっかけの「アイテム」の出現も大切な要素だが、そういう意味で毒団子が加わってくるのも見事である(しかも団子屋が話の舞台なので飛び道具っぽくなっていない)。

 団子を食った越後屋の奇妙な体調変化は、三池崇史監督が作るバイオレンスコメディのような手触りだ。団子屋店主が毒団子を作っている場面で、「店主の手にくっ付いた毒の粉はどうなるんだろう」と気になったが、それもちゃんと回収してくるあたり隙がない。短い時間のなかでこれだけの起伏を盛り込めるのはびっくりである。興奮しっぱなしで鑑賞した。

 撮影当日は現場に駆けつけることができずリモートで指揮を執ったとのことだが、もしその場で内海らの演出をおこなっていたら、さらに末恐ろしい作品になっていたかもしれない。番組中「将来は映画を撮りたいと思っている」と語った辻監督。お笑い界には、板尾創路、品川庄司・品川ヒロシ、ガレッジセール・ゴリ(監督時は照屋年之名義)など名監督がいる。辻監督のこれからに期待したい。

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