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『M-1』の“熱狂”にライブシーンの芸人が抱く違和感

文=エル上田(えるうえだ)

史上最年長のチャンピオンが誕生し、『M-1グランプリ 2021』が幕を閉じた。予選期間からの『M-1』の熱狂は年々加速し続けている。フリーの芸人として日々舞台で漫才をしているエル・カブキのエル上田は、その熱狂にある違和感を抱いているという。揺れる思いを抱えて見届けた今年の『M-1』から感じたものとは――。

『M-1』の熱狂にライブシーンの芸人が抱く違和感の画像1
M-1グランプリ公式HPより

「漫才」が「スポーツ」になった瞬間

 ナイツ塙さんの涙を初めて見た。

 50歳と43歳の苦労人コンビ 錦鯉が『M-1グランプリ2021』(テレビ朝日系)で優勝。今もネット上では感動の余韻が冷めやらない。

 錦鯉はライブシーンでは何年もスベり知らずだった。その実力と人柄ですべての芸人、ほぼすべてのお客に愛されていると言っても過言ではない(たった一度だけ原宿系のワーキャーライブで、「どう見てもお前東南アジアの工場長じゃねーかよ」というツッコミで女子高生が静寂に包まれたのを見たことがある)。

『M-1』はすっかり年末の風物詩として定着した。特にこの数年は、予選の段階から、応援している芸人が勝ち抜くたびに歓喜と祝福の声がネットにあふれるようになっている。そして負けた芸人の中には解散する組が現れ、ファンはダメージを負う。

 ここ何年か繰り返される光景に、はっきりと違和感を覚えたのは2019年にぺこぱが初めて決勝に進出したときだ。

 かつて彼らと同じ事務所に所属していた芸人たちが一つの家に集まり、決勝生放送を見ながら仲間の一挙手一投足に一喜一憂する動画が回ってきた。コメント欄には「仲間を祝福しあえる関係が素敵」みたいな文が踊っていたと思う。

「漫才」が「スポーツ」になった。そのとき、そう感じた。

「“松竹芸能の”ますだおかだです」その一言に掴まれた

 もともと、島田紳助氏が「漫才をなんとかしてくれ」と頼まれ「F-1」ならぬ『M-1』を創設した。それが2001年のことだ。

 漫才師たちがただならぬ緊張感の中、真剣勝負で渾身のネタをぶつけ合う。まさにケンカ。当時高校3年生だった筆者にはそう見えた。

 今と違って、審査員は滅多にコメントを振られることもなければ、笑うこともほとんどない。点数も70点から90点までと振り幅が大きく、負けた芸人は「公開処刑」にあったようだった。

 それはとても刺激的で、「道化」でしかなかった無名の若手芸人が一夜にして人生を逆転するまさに夢物語の始まりだった。
身一つで闘える!

 格闘家やプロレスラーに憧れたけど、身長が低く運動神経もなかった筆者は、吉本優勢の空気の中、「“松竹芸能の”ますだおかだです」その一言でドカン! と場をつかんだ背の低い漫才師に心をつかまれた(増田さんは柔道有段者の格闘技ファンだと後で知ったとき、一人合点がいったものだ。いや、誰がわかんだよ)。

スポーツマンシップに則り健闘を称え合う芸人たち

 その大会は今年17回目を迎え、もはや毎年恒例のお祭りとなった。初開催から20年が経ち、当時はなかったSNSが発達。お祭りムードは予選の段階から加速し続けている。

 同じ予選に参加し、負けたはずの芸人が勝った芸人を祝福し、「良かったー」とつぶやく。
負けた芸人はTwitter上で「今年のM-1はここまででした。すみませんでした!」と誰かに謝り、ファンと思しき人たちから「謝らないで! 私はあなたたちの漫才が一番面白いと思ってます!」と返される。

 文化祭か!

 いつからか「熱狂」はシャレじゃなくなり、サポーターと選手は時にフーリガンとなり炎上を巻き起こす。

 殺伐とした芸人同士の競い合いは古い概念となり、スポーツマンシップに則って自分を負かした相手とも健闘を称え合い、笑顔で一緒に写った写真をアップする。それを見たお笑いファンは「いいね」を押す。承認欲求の奴隷になった芸人はこれを繰り返し、賞レースの季節はまた巡ってくる。

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