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手塚治虫からカレー沢薫まで……動物にも隠毛にもなる「漫画家の自画像」徹底分析

400作以上を読んだ著者のオススメ作品とは?

──特にこれは面白いとか、これが重要だと感じた作品をいくつか教えてください。

南 歴史的には、やはり島本さんの『燃えよペン』は重要です。「漫画家マンガは大御所が描くもの」という固定観念を打ち壊し、「こういうの描いていいんだ!」となった。あの作品があったからこそ、誰もが臆せず漫画家マンガを描けるようになったわけです。漫画家マンガ中興の祖ですね。

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島本和彦『燃えよペン』(小学館)

 基本中の基本を押さえるという意味では、永島慎二の『漫画家残酷物語』、藤子不二雄Ⓐの『まんが道』。なぜか今度舞台になった『サルまん』(『サルでも描けるまんが教室』)も読んでおかないといけない作品ですよね。小林まことの『青春少年マガジン1978~1983』もすごくいい。

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永島慎二『漫画家残酷物語』(グループ・ゼロ)
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藤子不二雄Ⓐ『まんが道』(小学館)
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相原コージ・竹熊健太郎『サルでも描けるまんが教室 21世紀愛蔵版』(小学館)
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小林まこと『青春少年マガジン1978~1983』(講談社)

 今回の執筆にあたって初めて読んだものでは、つのだじろうの『その他くん』が時代を先取りしているなと思いましたね。1976年の作品なんですが、漫画家を目指す少年が主人公で『サルまん』的ハウツー要素もある。フィクションながら、作中に手塚治虫や石森章太郎、藤子不二雄コンビ、さらにはつのだじろう本人も出てくるというメタ構造になっていて、かつ、マンガ業界のことがわりとリアルに描いてあるんです。マンガ界のピラミッドが出てきて、「トップは一握りだ」「一流と二流の差ははっきりある」みたいな辛辣なことも言っていて、かなり面白かった。

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つのだじろう『その他くん』(ゴマブックス)

 今、連載中の作品では松本大洋さんの『東京ヒゴロ』が素晴らしいので、ぜひとも読んでもらいたいですね。

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松本大洋さん『東京ヒゴロ』(小学館)


南信長(みなみ・のぶなが)

1964年生まれ。マンガ解説者。朝日新聞読書面コミック欄のほか、各紙誌でマンガ関連記事を企画・執筆。著書に『現代マンガの冒険者たち』『マンガの食卓』(共にNTT出版)、『やりすぎマンガ列伝』(角川書店)、『1979年の奇跡』(文春新書)、『もにゅキャラ巡礼』(楠見清氏との共著/扶桑社)など。2015年より手塚治虫文化賞選考委員も務める。

マーケティング的視点と批評的観点からウェブカルチャーや出版産業、子どもの本について取材&調査して解説・分析。単著『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの?』(星海社新書)、『ウェブ小説の衝撃』(筑摩書房)など。「Yahoo!個人」「リアルサウンドブック」「現代ビジネス」「新文化」などに寄稿。単行本の聞き書き構成やコンサル業も。

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最終更新:2021/12/30 18:39
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