“異例”尽くしの大河『鎌倉殿の13人』は「ワナビー」が「セレブ」を脅かす物語?

文=堀江宏樹(ほりえ・ひろき)

──歴史エッセイスト・堀江宏樹が国民的番組・NHK「大河ドラマ」(など)に登場した人や事件をテーマに、ドラマと史実の交差点を探るべく自由勝手に考察していく! 前回はコチラ

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ドラマ公式サイトより

 放送開始が迫り、期待が高まる新・大河ドラマ『鎌倉殿の13人』。今のところ、これまでの大河を踏襲していない部分が目立ちます。本格的な番宣が行われ始めたのは、放送開始まで1週間を切った時点からでした。ここまで情報公開をほとんど行おうとしない大河も珍しい気がしますね。題字を書家が担当していないことや、タイトルの表記を「十三人」ではなく「13人」にしているところも、異例といえるでしょう。

 1月3日にNHK総合で放送された『北条ファミリーが語る!「鎌倉殿の13人」放送直前SP』という宣伝番組を見ることができましたが、『鎌倉殿』の主人公である北条義時を演じる小栗旬さんら主要キャストが撮影の裏話をざっくばらんに語るのが番組のメインで、作品の時代背景などには“あえて”迫ろうとしない制作意図が感じられました。

 これは戦略なのでしょうね。ドラマのキャッチコピーの一つが「源平・鎌倉時代を舞台にした予測不能エンターテインメント」ということもあるのでしょうが、この平安末期~鎌倉初期にあたる「源平・鎌倉時代」の歴史は、多くの日本人にはあまり馴染みがありません。

 『鎌倉殿』の物語は、2012年の大河ドラマ『平清盛』でいうところの、視聴率がいよいよ怪しくなってきた中盤以降あたりから始まると以前も指摘しました。『麒麟がくる』のように、明智光秀、織田信長、徳川家康……誰もが知る英雄たちが活躍する戦国末期のドラマとは異なり、『鎌倉殿』では複雑な歴史背景を説明すればするほど、「マニアックすぎる。今年は見なくてもいいかも……」などと視聴者に感じさせる可能性もあるのです。

 だからこそ、『鎌倉殿』を「予測不能エンターテインメント」として位置づけ、「とにかく偏見なしに放送を一度見てください、ちゃんと面白いはずだから……」と視聴者を誘導したいのでしょう。歴史ドラマだけれど、歴史背景にはあえてほとんど触れない宣伝方法はきわめて異例といわざるをえませんが……。

 しかし、宣伝番組『北条ファミリーが語る!』は、俳優さんたちを集め、ただ語らせたわけではなく、『鎌倉殿』のドラマがどう描かれるかを推測しうるものでした。ざっくばらんなトークのように見せて、さまざまなヒントが散りばめられていたように感じたからです。

 たとえば源頼朝役の大泉洋さんと、その妻の北条政子役の小池栄子さん、そして政子の弟である北条義時役の小栗旬さんの会話の中に、こんな場面が……。政子・義時姉弟と頼朝は、現代の感覚でいえば「家族」であり、義時にとって頼朝は姉の夫、つまり「義兄」なのに、義時から頼朝に対して気軽に「ヘイ、義兄(にい)さん!」などとは呼べない関係だよね……と小栗さんが発言し、笑いが生まれていました。

 しかし、これこそ実は、ドラマの見どころにつながる内容だったかもしれません。

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