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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.648

カンヌも絶賛、人間の隠された心の闇を旅する西島秀俊主演の話題作『ドライブ・マイ・カー』

文=長野辰次(ながの・たつじ)

※この記事は、2021年8月14日 に配信した記事の再録です。

カンヌも絶賛、人間の隠された心の闇を旅する西島秀俊主演の話題作『ドライブ・マイ・カー』の画像1
カンヌ映画祭で脚本賞ほか4冠受賞となった『ドライブ・マイ・カー』

 人間が犯した過ちは、いつまで責められ続けるのだろうか。過去の言動やかつて発表した作品内容の一部を問われ、表舞台からの退場することになったクリエイターたちが近年は少なくない。村上春樹の短編小説を『寝ても覚めても』(18)の濱口竜介監督が映画化した『ドライブ・マイ・カー』は、主人公が亡くなった妻の犯した過ちと向き合い、ひと筋縄では済まない人間の多面性を受け入れていく物語となっている。

 今年のカンヌ映画祭コンペ部門に出品され、脚本賞、国際映画批評家連盟賞、キリスト教関係者が選ぶエキュメニカル審査員賞、フランスの独立興行主らが選ぶAFCAE賞の4冠に輝いた「ドライブ・マイ・カー』は、村上春樹が2014年に刊行した短編小説集『女のいない男たち』(文藝春秋)から「ドライブ・マイ・カー」を中心に、「シェエラザード」「木野」などの要素も取り入れている。村上春樹作品の映像化は、市川準監督の『トニー滝谷』(04)、イ・チャンドン監督の『劇場版 バーニング』(18)など短編小説を原作にしたほうが、観客側もイマジネーションを刺激されて面白い。

 小説版「ドライブ・マイ・カー」は、主人公の家福と専属ドライバーとの車中でのやりとりを描いただけの単行本でわずか48ページの短いエピソードだが、濱口監督と脚本家の大江崇允は、舞台俳優である家福が通う劇場のパートを大きく膨らませ、ほぼ3時間ある見応えのある人間ドラマに仕立てている。

 家福(西島秀俊)は舞台俳優であり、演出家でもある。脚本家だった妻・音(霧島れいか)を病気で失い、喪失感を抱えて生きている。心の傷がまだ癒えない家福は広島で開かれる演劇祭に招待され、期間中は専属ドライバーのみさき(三浦透子)が家福の愛車「サーブ900」を運転することになる。演劇祭参加者が事故を起こさないようにとの、演劇祭運営側の配慮だった。

 演劇祭で上演される演目は、チェーホフの『ワーニャ伯父さん』。自分のそれまでの人生を悔やむ初老の男の物語だ。家福も立ち会ったオーディションでキャストが選ばれ、日本だけでなく、フィリピン、台湾、韓国、と多彩な国籍による配役となる。これだけ出身地も言語もバラバラだと、コミュニケーションは容易ではない。しかも、韓国出身の女性イ・ユナ(パク・ユリム)は、韓国手話を使う。そんな彼らと家福との共通言語は、『ワーニャ伯父さん』の台本と俳優としての感性と表現力だった。

 キャストにはもうひとり、注目すべき人物が加わっていた。若手の二枚目俳優・高槻(岡田将生)だ。実は高槻は家福の亡くなった妻・音の不倫相手であり、家福はそのことに気づいていたが、知らないふりを通していた。高槻は実年齢に近い医師役を望んでいたが、家福はイメージの異なるワーニャ役として起用する。戸惑う高槻を、家福はほくそ笑んでいるかのように映る。演劇を通して、妻の不倫相手への復讐を果たそうとしているのだろうか。

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