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3.11のコメディ映画は不謹慎か否か?に向き合う『永遠の1分。』

文=ヒナタカ

3.11のコメディ映画は不謹慎か否か?に向き合う『永遠の1分。』の画像1
C)「永遠の1分。」製作委員会

 3月4日より映画『永遠の1分。』が公開される。

 本作は『カメラを止めるな!』(17)で一世を風靡した上田慎一郎が脚本を務め、同作で撮影監督を務めた曽根剛がメガホンをとったヒューマンドラマだ。設定だけ見ると突飛に思われるかもしれないが、実際に観れば作り手の真摯な姿勢とメッセージに感動できる内容になった理由を記していこう。

『カメ止め』と同様の「作り手とリンクする」物語

 あらすじは、東日本大震災のドキュメンタリーの制作のために来日したアメリカ人映像ディレクターが、現地で楽しそうに芝居をする劇団の舞台を観たことをきっかけに、それを題材としたコメディ映画を思いつくというもの。さらに、主人公は当時の凄惨な被災状況や、簡単には拭い去れない深い悲しみも知り、「3.11を題材にしたコメディ映画は果たして実現可能なのか?」と葛藤することになる。

 劇中では「人類史上最悪のことをしたヒトラーであっても、コメディに引っ張りだこじゃないか」「いや、人間の愚かさはコメディに出来ても、自然災害はコントロールしようがないから、笑いに転換できるはずがないだろう」などといった対話も行われている。映画の作り手たちがそのように思い悩むことに加えて、その後は予期せぬ方向からのバッシングも浴びることになる。

 いわば、本作は「自然災害をコメディにするなんて不謹慎だ!」という問題提起そのものがドラマになっており、それは脚本を執筆した上田慎一郎の実際の心情や行動に一致している。というのも、2013年に監督である曽根剛から「3.11を題材にした映画の脚本を書いて欲しい」と依頼が来たものの、上田慎一郎は「自分が書くならコメディにしたい。しかし、3.11を題材にしたコメディなんてつくれるわけがない」と思ったという。

 上田慎一郎は自身は直接的な被災者ではなく、当時に被災地へ行った事もない「3.11の部外者」であり、その脚本を書く資格はないとさえ当初は考えたものの、3.11を題材にしたコメディ映画を「つくる人の話」であれば自分にも書けるかもしれないと思い直した。さらに脚本を直すにあたって、曽根剛監督らと共に被災地を視察し、被災地の現状を目の当たりにし、被災者の方々の生の言葉を聞いたという。

 そこで上田慎一郎は、被災者の方々から、当時の悲惨な話だけでなく、明るい話や笑い話も聞いて、大いに感動したという。「辛い中でも、いや、辛い中だからこそ必要な人間の明るさとユーモアこそが、人間の持つ強さだ」と強く思い、さらに被災地の視察を行いながら脚本の改稿を重ねていったそうだ。曽根剛監督もまた「映画を受け入れてくれ、気持ちを前向きにしてくれたのは、被災地の方々でした。その過程はすべて映画の中で描かれています」と語っている。

 作り手の映画に向き合う姿勢そのものが、劇中の登場人物の奮闘と重なりあっているというのは、『カメラを止めるな!』でも共通していたこと。その上田慎一郎が自身の作家性を活かし、かつ悲劇の中にある「笑い」の力を信じたことで、ある意味でドキュメンタリー的な側面も持つ、作り手と劇中の登場人物の想いがリンクする構造の映画が生まれたというわけだ。

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