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16年ぶり、令和に復活『真剣10代しゃべり場』 SNS世代のメンバーから消えた“バチバチ感”

「将来の夢はニート」の男子高校生とその理由

 タケルは高校生ながら、いろいろな活動を経験しているらしい。SNSマーケティングはするし、さまざまなイベントも手掛けてきた。なぜ、それらの活動をするかというと、面白いからである。

「めちゃくちゃ『起業せえへんの?』って言われることが多くて、それが苦痛で。(今やってる活動は)自分は好きやからやってるだけやのに、わざわざ仕事っていう型に当てはめられようとしているのが嫌。起業ってめっちゃ意識高そうに見えるやん。自分はそうじゃないのに、そうじゃない捉え方されるの嫌やん」(タケル)

 ここで、K-POPアイドルを目指す女子中学生から質問が飛んだ。

――タケルが「将来の夢、何?」って聞かれたとき、なんて答える?
タケル 「ニート。わかる?」

 インパクトを狙ってキメにいった放言がスベり気味になるのは、いかにも『しゃべり場』という感じだ。そもそも、なぜ彼はニートになりたいのか? ひろゆきみたいになりたいのだろうか。

「自分は好きなことがいろいろあって、その好きになったことをやっていきたい。それは仕事って形でもそうじゃなくてもいい。ただ、それを仕事って形で表して、いちいち『あなたはこういう人間なんだ』ってされるのがめっちゃ面倒臭いから、もうニートってことにしといたほうが楽」(タケル)

 決めつけられたくないから「将来の夢はニート」と伝えて煙に巻き、でも実際は違うことをする……ということらしい。やはりこじらせているし、「人にラベリングされたくない」と言いながら「この人はニート」という周囲のラベリングを受け入れているという矛盾にも気付いていなさそうだ。人にジャッジされたくないけれど、他者からの評価をめちゃくちゃ気にしているタケル。つまり、彼は全方向から理解されたいのかもしれない。

 案の定、タケルのやり方は他のメンバーから否定されまくった。

「言っちゃえばいいじゃん。『俺はこれとこれとこれやってるよ』って」
「人にジャッジされたくないから『ニート』って言っちゃうのは、自分の中心がズレている」
「それ、やめたほうがいいよ!」

 テーマ発起人が集中砲火されるパターンは、昔からの『しゃべり場』名物である。

令和のSNS世代に『しゃべり場』はそぐわない?

「将来の夢はニート」と言って煙に巻こうとするタケル。でも、彼は本当はどんな大人になりたいのだろう?

「自分がいいなって思う人は、人生楽しそうな人」
「メタバースとかNFTって言われるような新しい技術で活躍してる人が好きやねん。その業界ってこれから儲かるかわからへんし、給料も月8万円とかや。なのに、めっちゃ楽しそうやねん。その人らは、『この技術が面白い』って話しかしてこおへん。新しい分野で、ひたすら『これ、おもろいやん』って活躍しようとしてて。自分を持って頑張ってる人がカッコいいなと思うし、自分もお金稼ぐよりかはそういう大人になりたいと思う」(タケル)

 熱弁する彼の言葉を聞いた他のメンバーは、「それ、(タケルの)夢じゃん」と指摘した。「”好きなことを仕事にすべき”っていう風潮、おかしくない?」というタケルの提案と矛盾しており、そこを突いたのだ。こんな風に「はい、論破」な形で決着をつけたがるのも、若者の特権である。でも、確かにそんな熱い思いがあるのなら、“好き”を仕事にする人の気持ちをわからないわけがないだろう。

 逆張りで斜に構えるタケルを、メンバー全員でヨシヨシする展開に終始した今回。でも、タケルがいなかったら復活版『しゃべり場』は予定調和で終わり、つまらなかったはずだ。全員が同じ意見だと議論が成り立たないから、あえて反対意見のコメンテーター(杉村太蔵など)が口を挟むのは、ワイドショーでも理想の展開である。

 そういう意味で、令和に『しゃべり場』はそぐわない気がする。インターネットが深く根付いたこの時代、顔出しでガンガン主張する人間はSNSで格好のおもちゃとなる。オリジナル版『しゃべり場』の討論は、みんなもっと喧嘩腰だった。そのバチバチ感が減ったのは、SNSを知り尽くした世代というのも理由だろう。

 逆に言えば、ネット時代だからこそ若者にとって意義ある番組という捉え方もできる。ネットには多種多様な意見が存在するが、だからこそSNSでは自分と似た興味・関心を持つユーザーしかフォローしなくなる傾向(エコーチェンバー)に陥りがちだ。まったく違う意見の人と意見を交わす機会が、若い世代は激減した。

 SNSを観察すると、復活版『真剣10代しゃべり場』を視聴していた主な層は30代以上の大人ばかりだったという印象も受ける。今復活すれば、おじさんやおばさんが「今どきの若者は……」と文句を垂れる番組にしかならないのかもしれない。令和に『しゃべり場』はそぐわなかったか。

 

寺西ジャジューカ(芸能・テレビウォッチャー)

1978年生まれ。得意分野は、芸能、音楽、格闘技、(昔の)プロレス系。『証言UWF』(宝島社)に執筆。

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最終更新:2022/05/18 06:00
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