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『家つい』自宅は不潔だが、心は高潔なプロボクサー「僕の中では正解です」

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『家、ついて行ってイイですか?』(テレビ東京系)

 5月18日放送『家、ついて行ってイイですか?』(テレビ東京系)は、題して「芯が通ったイケメンSP」であった。

やたらと入る自慢は、父へのコンプレックスの裏返し?

 今年1月、赤羽の商店街でスタッフが声をかけたのは、いかにもビジュアル系な42歳の男性だ。全身黒ずくめの出で立ちに革手袋、サングラスをかけた彼は、一体どういう人なのか?

――何者でいらっしゃいますか?
「僕はこれでも看護師です。看護師でトータルビューティーサロンのオーナーをしています」

 そもそも、「何者ですか?」というスタッフの聞き方がおかしい。それほど、カタギじゃない雰囲気が彼にあったのだ。なにしろ、男性が羽織っていたのは20万円もするロングコートで、腕にはめているのは300万円もするHUBLOTの腕時計である。

「よくGACKTに似てると言われます」

 正直、あまり似ていない。つまり、自己評価が高いということだ。羨ましい性格である。

 というわけで、彼の家について行くことに。なんと、8,000万円もする豪邸に住んでいるらしい。事実、彼の自宅へ近づくにつれ、横切る車のグレードが上がっていくのだ。

「この辺はベンツとかBMWばっかりですよ。この高台はみんな金持ちです。資産家や偉い人ばっかり」

 赤羽にそんな高級住宅地なんてあるのだろうか……。筆者は聞いたことがない。というか、看護師ってそんなに儲かるものなのか?

 そんなこんなで、男性の自宅に到着。着くなり、彼は入り口にある看板の電源を入れた。経営するサロンの看板だ。看護師なのにサロン経営者という二足のわらじがよくわからない。看護師に副業は許されるのか? それとも、今の彼は看護師じゃないのだろうか。

 家の中に入ると、1階はそのままサロンスペースになっていた。まっさきに彼が説明したのは、自慢のマッサージチェアである。

「これ、AIの80万円のマッサージ機なんですけど、人間の施術をすべて超えたと言われる日本で評価が最強のマッサージチェアです」

 家の値段といい、服の値段といい、ちょいちょい自慢の入る人だ。ところで、もう看護師の仕事はしていないのか? すると、彼は1冊のパンフレットを見せてくれた。東大病院の施設を紹介する冊子らしい。そこに掲載された1枚の手術中の写真を彼は指差した。

「ここにいる、これです。この身長の高いのが自分です。一際、身長が高いですよね。臨床の現場って40歳ぐらいが限界と自分の中で思ってて、もうアンチエイジングの時代だと思ったので(この店を)開業しました」

 さらっと高身長をアピールしつつ、東大病院勤務の経歴を明かした男性。2階に上がると、今度は薄型の壁掛けテレビが目についた。

「ちなみにこれ、薄さ5ミリの壁掛けです。100万円っすよ」

 キッチンに行くと、今度は自身の家事力について語り出した。

「基本的に料理は毎日やってるんで。教育って名のもとに小4のときには父に強制的に包丁を持たされてたし、炊事洗濯、家事は全部やりました」

 浴室に行くと、そこはカスタム済みだった。外から丸見えのスケルトン仕様だし、カラー照明で室内の雰囲気は一気に変わるし、湯船はジャグジーである。まるで、ラブホテルみたいだな……。

 彼は自己顕示欲を一切隠さない。正直、どこかコンプレックスを感じさせるほどだった。この人は心の奥底に何か抱えているのだろうか?

 3階に上がると、室内の様子が一変する。『ドラゴンボール』のフィギュアが大量に飾ってあるのだ。所有数は、なんと約300体! 42歳という年齢は完全にドラゴンボール世代だ。今まで以上に彼の話は止まらなくなった。

「親が厳しくて、テレビを見させてくれなかったんです。で、大人になってからネットで見れるようになるじゃないですか。それでやっと、(『ドラゴンボール』を)全部見れるようになりました」
――ここまで好きになったのはどうしてですか?
「いろんな親子像とか、いろんな人生があって。勝手気ままに闘うことが好きで修業するお父さん(悟空)に対し、息子(悟飯)は息子で父に憧れて一生懸命修行するし」

 彼の中には、『ドラゴンボール』の最も好きなシーンがあるという。

「コソコソ努力する悟飯の姿もスゴい。そして、それを強くしようとするもともとは悪のピッコロさんに親子愛みたいな気持ちが芽生えてきて。悟飯が『あぁー、殺される!』っていうとき、ピッコロが『うぉー』って悟飯の前に現れ、仁王立ちで身代わりになって死んじゃうんです。俺、あのシーンを見たら何回でも泣きます。『自分の父親だったらそうしてくれるかな?』とか思っちゃいます」

 彼の父は、医療系の大学で教授を務めているという。著書も多数あるそうだ。母は薬剤師で、姉も看護師と保健師の資格を所有している。

「周りから見たらボンボンに思われがちですけど、僕は塾も行かせてもらえなかったし。国公立現役主義、滑り止めなし、(父から)『落ちたら働け』って言われてたんで」
――どうして、そんなに厳しかったんですか?
「厳しいっていうか、父親にとってはそれが当たり前。ちょっと聞いただけで頭に入っちゃうような天才だったから、いちいち試験勉強するという感覚がないんです。『できて当たり前』という感覚が(子どもには)つらいし、褒めてもらえないっていうのもつらい。『父親のようにならなきゃいけないのか?』って常に比べている自分がいます」

 18歳になると男性は家を飛び出し、奨学金で看護専門学校に入学した。学費はすべて自らが稼ぎ、以来、実家の敷居は跨いでいないという。やはり、彼はコンプレックスを抱えていた。父へのコンプレックスである。そして……これは境遇として仕方なかったと思うが、医者ではないことへのコンプレックスも抱えているように感じた。彼は本当は医者になりたかったのだと思う。でも、塾に行かずに医学部へなんて進めないのだろう。

 国家試験を受ける際に使っていた参考書を見ると、ボロボロなのだ。努力していたことがわかる。頑張って手にしたことなら、好きなだけ自慢してもいいと思う。

「悟空って何回死んでも、結局生き返ってるじゃないですか(笑)。自分でも頑張るけど、ドラゴンボールで願いを叶えてもらって生き返ったりとか。普通ならあり得ないけど、自分がダメだと思っても、まだ何かあるかもしれないという可能性を感じさせてくれる。無限の可能性を秘めながら、自分は生きていきたいなって」

 ストーリーに感銘を受けて人生を語る姿勢は、『ドラゴンボール』の正しい使い道だ。この作品に触れて生き方が変わった人は少なくない。

「どんな逆境があっても『修行の一環だろう』みたいな(笑)。あえて、自分に負荷をかける。重たい甲羅を背負ったり、悟空もそういう修行の仕方をしますし。そういう意味で父親には感謝しかないし、強くなれたのもその修行の成果だと僕は思ってます」

 話を聞いて感じたのは、父への思いである。コンプレックス、感謝、さまざまな感情があるだろうが、彼はどこかで「ピッコロみたいな父であってほしかった」と思っていた気がする。

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