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ひろゆきの“論点ずらし”を完封した呂布カルマ、タレント適性がバレる!

ひろゆきの“論点ずらし”をことごとく捕まえる呂布カルマ

 続いてのテーマは、「ラッパーに倫理観を求めるのは アリorナシ」。本心としては「ナシ」の立場だが、逆に今回は「アリ」側の立場を希望した呂布。ラッパー擁護派ともいうべき「ナシ」の立ち位置をあえてひろゆきに譲り、論戦を繰り広げたいようだ。

「呂布カルマ、2連勝なるか?」(ナレーション)

「カルマ」と「なるか」で固い韻を踏むナレーションがニクい。というわけで、ディベートがスタート!

ひろゆき 「普通のJ-POPだと、『愛がどうだ』とか『世界平和に』的なものをテーマにした曲があるじゃないですか? そういう曲で有名になったラッパーは、今までにいるんですか?」
呂布   「メジャーな人はそれを歌いがちですね。僕はインディーズなんですけど、アンダーグラウンドは自分の犯罪行為の告白とも取れるような内容を歌うことが一般的。(ラッパーは曲と)そのままのライフスタイルなので、たびたび逮捕されてしまうことが多いんですけど」
ひろゆき 「カルマさんは今までどんな犯罪歴をバラしてきたんですか?」

 ディベートが始まった途端、犯罪歴の聞き出しから議論に入ろうとするひろゆき。動線が前代未聞だ。

ひろゆき 「例えば、北野武さんの『アウトレイジ』という映画がありますが、悪いことをやっている人ばかり出ますよと。それはそれで、そういう作品としてみんな受け止めてるわけじゃないですか。それは虚構の世界としてあってもいいと思うんですけど」
呂布 「もちろん。創作物の中では何やったっていいんですよ」
ひろゆき 「フリフリの服着ているアイドルがその曲(犯罪行為を歌う曲)を歌っても、聴いている側は現実感がないから、自分たち(ラップのオーディエンス)と同じような生活環境の人がやってるほうがいい、となる。リアリティーがなくなっちゃうんじゃないですか?」
呂布 「アイドルの話だと、恋愛禁止のくせに恋愛の歌ばっかり歌ってるからそのリアリティーは関係ないんですよ。歌の中で歌うのはいいし、過去の経験として歌ってそれを教訓に『今はそうじゃない』って言うのはいいんですけど、それをずっと引きずっていつまでも捕まったり悪いことをしてる状態は、やっぱりよくないよねっていうことです」

 まず、呂布の「恋愛禁止のくせに恋愛の歌ばっかり歌ってる」という切り返しがスーパーパンチラインだ。ひろゆきの策で「これがアリならあれもアリでしょ?」「これがナシならあれもナシだよね?」と論理の飛躍をし、相手を混乱させる常套手段はおなじみだが、その飛躍にあえて乗っかり、逆に具体例を出しつつ的確に相手を仕留めにいった呂布に痺れる。

 ここから、議論は“倫理観”“モラル”の定義付けへと進んでいった。

ひろゆき 「モラルで言うと、刺青入れるのってモラル上は良くないと言われるわけじゃないですか」
呂布 「言われますか?」
ひろゆき 「温泉に入れなかったり、法律上は何の問題もないけれど……」
呂布   「(遮って)いやいや、刺青の人が温泉に入れないのはドレスコードとして入れないのであって。刺青を入れているのに無理やり『(温泉に)入れんかい!』って言えば、モラルに反するんですけど」
ひろゆき 「ドレスコードに反する行為じゃないですか、刺青って?」
呂布 「でも、それはモラルじゃなくないですか? 高級なレストランにサンダルで入ろうとして『入れませんよ』って言われるのと同じことなので、刺青を入れてるのがモラル違反だとは全然思わないです」
ひろゆき 「……(目をパチパチ)」

 倫理観、モラルの定義付けをしようとしたひろゆきは悪手だったと思う。多様性の時代に「タトゥー(刺青)はモラルに反する」とすると、議論としては分が悪い。タトゥー禁止をドレスコードの問題とした呂布の論に攻め手をなくし、ダメージを被った際に必ず見せる“目パチクリ”のリアクションを晒したのも印象が悪かった。

 論破されかけると微妙に論点をずらし、相手に質問し返すのはひろゆきのいつもの手だ。

ひろゆき 「じゃあ、モラルや倫理観って法律とは別にどういうことを指します? モラルと法の差が、いまいちカルマさんの中でハッキリしてない気がして」
呂布 「じゃあ、例えばモラルに反する行為ってのはどういうことなんですか? さっきの刺青はそれにあたらないと思うんですけど。例えば、老人や妊婦に席を譲らないとか」
ひろゆき 「だから、それがモラルや倫理観です。世間ではこうしたほうがいいって言われてること、例えば、『大学行ったほうがいいよ』と世間で言われてても、『俺たちは行かないよ』という考えのコミュニティの人たちがいるのは当然じゃないですか」
呂布 「それはモラルとか倫理とはまったく関係なくないですか?」
ひろゆき 「え、なんでですか? だって、みんなが『こうしたほうがいいよ』ということで、『ちゃんと学校に行って勉強したほうがいいよ』ってあるじゃないですか」
呂布   「中卒や高卒で働く人はいっぱいいるので、その人たちが社会一般の常識から外れているとは僕は思わないです」
ひろゆき 「だから、小学校や中学校のときに……」
呂布 「(遮って)それは義務教育のレベルですよね。それは確実に行くべきなんです」

 モラルの一例として「席を譲らない」が呂布から挙がったが、これは正論だ。しかし、それを深めるでもなく、次なる例として「大学に行かない」もモラルに反すると主張したひろゆきが破綻状態に陥っている。さすがにこれは暴論だし、「進学しないのは反モラルだから、大学に進みます」と決断する人なんているはずがない。本心から真面目に言っているのか、「翻弄してやろう」という魂胆からズレた論を発したかは不明だが、こういうことを恥ずかしげもなく言えるメンタルがひろゆきである。

 しかし、それらの仕掛けを呂布は必ず捕まえた。結果、返す言葉が見つからずにひろゆきはテンパり、新たな別の質問を投げかけることで仕切り直しを試みる。でも、またそれも呂布に仕留められる。さらにカウンターの答えにくい質問を呂布から投げ返され、逆アップを食らって攻め手をなくすひろゆき。2人のディベートは、まさにこの繰り返しだった。相手に説明させ、そこに茶々を入れて揚げ足を取るひろゆきの戦法がまるで通じなかったのだ。質問攻めでマウントが取れないとなると、ひろゆきは万事休すだ。

 結果、第2ラウンドの判定は2-2で引き分けに。これは解せない。恋愛禁止アイドルのくだりなど全編で完璧なアンサーを返していたし、論点ずらしもしっかり指摘していたし、的を射た事例の提示で相手を追い込み続けた呂布はパーフェクトだった。さすがに、この判定結果は首をひねる。

 ディベート後、両者は以下のようなコメントを残した。

――手応えはいかがでしたか?
呂布 「やっぱ、上手にそらしてくるなという感じですかね(苦笑)」
ひろゆき 「僕、よく言われるんですけど、そらしてるつもりがないので、もし『ここ、それてる』ってのが次あったら教えてもらえるとありがたいです」
呂布 「(ニヤニヤ)」

 論点ずらしを指摘されると、いつも「そらしているつもりはない」と真顔で言い張るひろゆきが怖い。そらしてるように感じさせず自分の土俵へ持っていく手法は、彼のデフォルトのはずだ。なにより不憫だったのは、今回に関しては弁明までダサかったこと。負け惜しみに聞こえてしまったのだ。ニヤニヤの表情でひろゆきの言葉を受け止めた呂布には、「終わった後にしゃべんな!」と言ってほしかった。まあ、フリースタイルバトルにおける呂布も、どちらかと言えば“そらす側”のラッパーなのだけれど……。

 今回のディベートはドキュメントだ。「コワモテは得か、損か?」を論じる場にイケメンの事例を持ち出してきたり、「モラル」と「皆がいいと思ってること」をすり替えて中卒と高卒を反モラルに含めようとしたけども、呂布がそれらすべてを封じたことで、ひろゆきの“ずらしテクニック”をわかりやすく晒す貴重なサンプルに昇華した。質問の繰り返しで攻撃一辺倒だったはずが、質問主のひろゆきが打ち負かされる結末へと着地した両者の論戦。いびつな形のディベートだった。

呂布カルマ、タレントとしての天賦の才がバレる!

 数十秒の間に揚げ足を取り合うだけでなく、ビートに乗りつつライムを考えるフリースタイルラッパーのスゴさを再認識した。相手のターンが終わらないうちに話の意図をつかみ、アンサーまで見つけ出すスピード感。そう考えると、ゆっくり話せるディベートは呂布にとってお手のものだったのかもしれない。

 さらに、痛感したのはラッパーの“聞く能力”だ。相手のラップをちゃんと聞き、その上で自分の言葉を返すのがフリースタイルバトル。そりゃあ、ディベートも強いはずだろう。

 これまで、この企画では「芸人VSひろゆき」でマッチメイクされるケースがほとんどだった。芸人がウケ狙いに走りながら自ら論理を破綻させ、無理やり場を面白くさせる形ばかりだったのだ。その点、「呂布VSひろゆき」は本来のディベートの面白さだった。こうなると、続きも期待できるか? HIP HOP界から第2、第3の刺客が登場する、『論破王』ラッパーシリーズの恒例化を、である。MCを務めるニューヨークの嶋佐和也は私感を述べた。

「無理かもしれないけども、ここまできたらGAMIさんも見たいね。漢 a.k.a. GAMIも」(嶋佐)

 呂布や漢は相手の矛盾を突く対話型のラッパーのタイプである。確かに、強そうだ。しかし、他のラッパーが同じようにできるかといったら疑わしい。絶対できなさそうなラッパーの顔が、頭に何人も思い浮かんでいる。そういう意味で、呂布単体のスピンオフに期待したほうが現実味は高そうだ。事実、呂布本人も「ひろゆきさんがお忙しい時は論破王スピンオフよろしくお願いします」とツイートしている。

 昨年の『相席食堂』(朝日放送)出演といい、ヤンマガwebのグラビア評論の連載といい、メディア業界において呂布のタレント適性は次第にバレ始めてきている。そこへきて、今回のディベートだ。呂布はまた、仕事を増やすのか。

寺西ジャジューカ(芸能・テレビウォッチャー)

1978年生まれ。得意分野は、芸能、音楽、格闘技、(昔の)プロレス系。『証言UWF』(宝島社)に執筆。

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最終更新:2022/05/28 20:00
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