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堂本剛がファンクを鳴らすことの意味 SWING-Oが語る「ミュージシャン」堂本剛

堂本剛という強烈なコーティングで仕上がったものは「堂本剛」にしかならない

堂本剛がファンクを鳴らすことの意味 SWING-Oが語る「ミュージシャン」堂本剛の画像4
写真/石田寛

―― SWING-Oさんはライブだけでなく、制作面でも関わっていくわけですが、本格的に関わるようになったのは、2012年のアルバム『shamanippon -ラカチノトヒ-』からですよね。

SWING-O 僕が関わるまでの剛くんは、まだファンクというほどファンクでもなかったというか、「ファンキーJ-⁠POP」って印象はあって。2010年ぐらい、僕が関わった前後から、スライ(&ザ・ファミリー・ストーン)だったりP-FUNK的なものとか。僕自身が70年代大好き人間なんで、70年代的なファンクをちょっと現代に構築したのが2010年代で。2018年ぐらいから、Gakushiくんになってからが、ざっくり80s的な。もちろん、どの時代にもスライっぽいのがあったり、今でもP-FUNKっぽいのもあるけど、僕が関わった時代はより70年代っぽい色を付けられたかな。

―― 制作では、本人から具体的な方向性とかリファレンスが示されたりするんでしょうか?

SWING-O なんとなく、ですね。こういうテーマの曲を書きたいとか。例えば僕がアレンジした中で「Tu FUNK」って曲があるんですけど、あれはただ、スタジオでバンドでリハーサルしてる時に、ドラマーのDUTTCHが「ありがトゥー」とか「なんとかでトゥー」とか言ってるのを、「トゥーおもろいな」って。「トゥヨシやし俺。トゥヨシのトゥーファンク作ろうぜ」みたいな。そういうところから、「ほなSWING-⁠O、トゥーファンク作ろう」「こんな言い回しをちょっと曲にしたい」っていう、それぐらいの青写真が示されて。それに対して僕が「こんな感じでどう?」って見せて、「それええやん」とか、「もうちょっとこうできるか」「こういうコーナーを入れたいんやけど」って返ってくるっていう、ディレクションしてもらう感じですかね。こっちは「こんなアレンジどない?」っていうアイディアをどんどん出していく。

 だから彼はそういうアイディアをどんどん出してくれる人を集めてるんですよね。“明確なイメージを再現するためのバックバンド”って関係性じゃない。たとえば、「音源に対して忠実に」というのが普通によくあるメジャーの現場なんだけど、剛くんの場合は、音源を出した直後のツアーでも、リハーサルで「(アレンジは)全然変えてええで」って言って。ドラムなりキーボードなり、誰かがアイディアを出して、「それええやん。これでいこ」「これおもろいよ、これでいこ」みたいな。

―― 最終的には剛さんがまとめていくわけですよね。

SWING-O 料理の素材はこちらが用意するけど、どう仕上げていくかは彼が決める。「ごめん俺ここで、スパイスやっぱ入れたいねん」みたいな、そういうディレクションですね。でも、みんなが楽しそうだったら、「ええんちゃう」みたいな。そこまで自分のイメージを突き通したいんじゃないんですよね。むしろ仕上げる段階のほうが彼はこだわるんですよ。作る過程は、みんなが楽しんでればお客さんも楽しんでくれるんちゃう、みたいな。あまりそこにエゴはないのかな。でもミックスとか仕上げでは、言葉とか音のバランス。声。声の響かせ方とか。仕上げの部分ではすごく時間をかけて、自分のセンスを出してくるっていう印象ですね。

――人によってはデモの段階である程度「こうしたい」みたいなのが固まってる方もいるじゃないですか。でも全然真逆なんですね。

SWING-O 本人も打ち込みは作ってくるけど、数年前ですらもう、そんなに作り込んでこないというか。気に入ったギターフレーズとかは、「ちょっとこれは生かしたい」とかいうのはあっても、あくまで青写真で、そこまでこだわってない。むしろ初期のほうがこだわってたのかも知れないですね。

―― SWING-Oさんは堂本剛名義からENDRECHERI名義に変わる(戻る)、両方の時期で関わっていたわけですが、何か変化は感じましたか?

SWING-O 何でしょう、一緒にやっているメンバーの違いがあるので、その結果として音の違いはあるけれど、やっていること自体はそんな変わってるわけじゃないので。ステージの衣装がド派手になったのが今なのかな。そういう、もうちょっと、それこそPファンク的というか“奇人変人大集合”寄りになって、よりお祭り的なことにしていこうっていう印象ですかね。踊りも、KinKi Kidsではもちろんやってるけど、ソロであんなにやるのってあんまりやってこなかったと思うので。そういう意味では、よりエンタメに。ファンクでエンタメ。サーカスのようなってことなのかなと。客観的な印象ですけど。

――改めて、堂本剛のファンクってどういうものだと考えてらっしゃいますか? 平安神宮であったり奈良出身であったり日本の歴史であったり、そういうものをいろいろと組み合わせてるところはありますが。

SWING-O それで、その要素で十分でしょう。日本人が発信するファンクという意味では、日本語の歌詞も、ありがちなポップスの言葉とは全然違う。読み方もよくわからない造語をどんどん作るし。あと、必ず日本の音階を使ったものがある。でも後ろのビートやカッティングやシンセなんかは、全然USのファンクのサウンド。だから、本人の歌メロと、歌詞と、本人が弾くギターの音階はめっちゃ日本で、1人だけちゃんと日本人として佇んでいて、後ろはUSのファンクという、そこが彼独自のファンクになってるのかもなって気はします。彼の声と彼のギターを抜いたインストがあったら、これ普通のファンクやんみたいになってるかもしれない。みんなに自由にやらせつつ、ちゃんとコーティングする。堂本剛という強烈なコーティングで仕上がったものはもう堂本剛にしかなっていないっていう。でも実はその中にいるみんなはのびのびやっているっていう。すごい場所をお作りになりましたね(笑)。

――ここまでゴリゴリにファンクをやる日本人っていうのも珍しいですし。

SWING-O だから、アイドルというポジショニングの方々の可能性というのを思うんですよ。ヒップホップであれなんであれ、どのシーンの人たちでも結局ヒット曲を作らなきゃいけないっていう時に、どうしてもJ-⁠⁠POP的な要素を求められてしまうじゃないですか。どんなにコアなものを持っていても、マスに吸収されそうになっていく図式って、どんなジャンルでもあると思うんだけど。最初からマスなところにいる人、タレントとしての存在感がうまく作り上げられた人は、あとはどこへ行っても、むしろ行くところがコアであればあるほどよかったりする。

 最初にコアにいる人がコアのまま居続けるのが難しい時代ですよね。R&Bシンガーって言ってる人の曲が全然R&Bに感じないっていうのはよくあるわけじゃないですか。そういう意味において、ポップスターな、マスなポジションがもうできてしまった人であるからこそできることっていう。その内の1人、堂本剛が、まさかのファンクに興味を持ってくれたことで、自分の過去作った音源の中でも一番かっこよくファンクに仕上がったものといえば堂本剛の曲になったわけで。「Funk がしたいんだ どしても」っていう曲があるんですけど、これ以上のファンクはなかなか作れないと思う。こういうメンツでこういうレコーディングしてってのは普通は予算が下りないから。

 「恋にも愛にも染まるような赤」っていう曲は、ブラック系が好きな人だったら、もうイントロからカーティス(・メイフィールド)の「(Don’t Worry) If There’s a Hell Below, We’re All Going to Go」をオマージュしてるのがわかるけど、その曲で『ミュージックステーション』に出させてもらったりしたので、こんな自由放題な70s趣味全開なものがマスに届けることができたっていうのは、本当にありがたい経験だった。彼と連絡取ることは今でももちろんあるので、また70s的な、僕の色が欲しくなる時があれば、また絡むでしょうけれど。そういうマスな存在、ポップな存在だからこそ、こういうことができる。だからこそこういうファンクが生まれる。

 他のファンクアーティストにもっと頑張れよって言っても頑張れないですよ。例えば在日ファンクの浜野(謙太)くんも役者やったりしてるけど、そうやってなにがしかの方法でマスに行かないとファンク活動を維持できないのが普通な気がします。その点、オーサカ= モノレールは草彅剛くんと舞台(音楽劇『アルトゥロ・ウイの興隆』)をやってたけど、それは僕らと堂本剛との関係と同じ匂いを感じます。独裁者の誕生という物語の中に、ジェイムズ・ブラウンの音楽を使いたいって、しかもステージ上でオーサカ=モノレールが生演奏するっていう。そういうことができるという意味で、やっぱりアイドルというかポップスターこそ、コアを求めてるんだなって思うんですよ。そういうのを見てると、僕みたいな人種の希望になるっていうか、ワクワクを感じさせてくれる。ダブル剛ですね、偶然。コアな人のこれからの生きる道としてすごく希望になるんじゃないかと思います。

 

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SWING-O(スウィンゴ)aka 45
1969年兵庫県加古川生まれ。黒い現場にこの男あり。SOUL、HIP HOP、CLUB JAZZ、BLUESを縦横無尽に横断するそのスタイルで、日本に確かな痕跡を残し続けるピアニスト、プロデューサー。現在は「幸せであるように」で知られるファンクバンド「FLYING KIDS」のキーボーディストとしても活動中。
これまで防弾少年団、Rhymester、堂本剛、AI、bird、元ちとせ、清水翔太、Zeebra、山崎まさよし、さかいゆう、KREVA、YO-KING、JAY’ED、wyolica、Kyoto Jazz Massive、DOBERMAN INFINITY、近藤房之助など名だたるアーティストたちと絡んでおり、これまでに関わったアルバムは200枚以上。自身も、45名義を含め5枚のソロアルバム、10枚以上のレコードもリリースしており、ヨーロッパ全域でのリリースも経験。
今年は、制作からジャケットまで全て手がけるプロジェクト「45」名義で新曲を5カ月連続リリースしており、5月25日には「Make You Smile 2022」を発表したばかり。
https://swing-o.info/

● 『越境音楽祭~ついでにSWING-O誕生日前夜祭』
日時:6月24日(金)OPEN 18:30/START 19:30
会場:代官山 晴れたら空に豆まいて

SOUL PIANIST/PRODUCERのSWING-Oが演奏するグランドピアノにあらゆるジャンルの演者たちが絡んでいく そんなイベントが#越境音楽祭 ついでに、SWING-Oが53才になる誕生日の前夜祭でもある
http://haremame.com/schedule/72770/

末﨑裕之(ライター/編集者)

ライター・編集者。音楽を中心に、俳優・ドラマ~映画の取材まで。共著に『新R&B教本 2010sベスト・アルバム・ランキング』(スペースシャワーブックス)。まれにラジオ出演(NHKラジオ第1、FM802他)、作詞(アイドリング!!!他)も。
Twitter:@hsuezaki

すえざきひろゆき

最終更新:2023/03/14 14:08
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