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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.691

庇護者の不在を描いた『ベイビー・ブローカー』と現代の姥捨山物語『PLAN 75』

文=長野辰次(ながの・たつじ)

庇護者の不在を描いた『ベイビー・ブローカー』と現代の姥捨山物語『PLAN 75』の画像1
是枝裕和監督の新作映画『ベイビー・ブローカー』。韓国で初登場1位に

 カンヌ映画祭でパルムドール(最高賞)を受賞した『万引き家族』(18)の是枝裕和監督、アカデミー賞作品賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』(19)の主演男優ソン・ガンホがタッグを組んだ『ベイビー・ブローカー』が公開される。是枝監督にとって初めての韓国映画であり、今年のカンヌ映画祭で最優秀男優賞(ソン・ガンホ)とエキュメニカル審査員賞の2冠に輝いたことでも話題となっている。

 赤ちゃん取り違い事件を題材にした『そして父になる』(13)、幼児虐待や年金不正受給問題を扱った『万引き家族』(18)に続く、是枝監督ならではの「擬似家族」もの。裕福な家庭に新生児を紹介するブローカーコンビと我が子を育てることができない若い母親が、理想の家庭を求めて旅をするというロードムービーだ。重いテーマだが、ソン・ガンホらの軽妙な演技が楽しめる。

 是枝監督のカンヌ映画祭での談話が興味深い。子どもを産む女性と違い、男性は父親になることになかなか実感を持ちづらい。親になることに時間も体験も要する。そのことから福山雅治主演作『そして父になる』を撮った是枝監督だが、「女性でもすぐに親になれるわけではない」と友人から批判されたそうだ。その反省から生まれたのがリリー・フランキー&安藤サクラ共演作『万引き家族』であり、今回の『ベイビー・ブローカー』だった。この3作品はつながっていることが分かる。

 韓国で撮影された本作は、『万引き家族』と同様にグレーゾーンの人たちが主人公となっている。お金に困っているサンヒョン(ソン・ガンホ)と施設で育ったドンス(カン・ドンウォン)は、「赤ちゃんポスト」に預けられた直後の新生児をこっそり連れ出し、お金持ちの夫婦に横流ししている。親に捨てられた赤ちゃんでお金儲けを企む悪どいコンビだ。

 だが、サンヒョンらには言い分がある。赤ちゃんは施設で育つよりも、裕福な家庭で育てられたほうが幸せになれると。確かに経済的に余裕のある家庭のほうが、進学や就職などの選択肢は増えるかもしれない。しかも、子どもに恵まれない夫婦にも喜びをもたらす。サンヒョンと弟分のドンスは、自分たちは善行をしているのだと主張する。

 限りなくクロに近いサンヒョンとドンスだが、お人好しで、根っからの悪人にはなり切れない。一度は「赤ちゃんポスト」に赤ちゃんを預けたものの、考え直した若い母親・ソヨン(イ・ジウン)が彼らの旅に同行することになる。さらに温かい家庭を知らない男の子・ヘジン(イム・スンス)も加わる。このうさん臭い連中を、刑事のスジン(ぺ・ドゥナ)とイ(イ・ジュヨン)が追跡していく。

 サンヒョンたちの会話は、盗聴器でスジンたちに筒抜けだ。生まれてきた赤ちゃんにとって本当の幸せとは何かを、それぞれが考えるようになる。(1/4 P2はこちら

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