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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.691

庇護者の不在を描いた『ベイビー・ブローカー』と現代の姥捨山物語『PLAN 75』

「自己責任」という言葉で個人を追い詰める社会

庇護者の不在を描いた『ベイビー・ブローカー』と現代の姥捨山物語『PLAN 75』の画像4
コールセンターに勤める瑤子(河合優実)。孤独な高齢者を電話でサポートする

 カンヌ映画祭でパルムドールを受賞した今村昌平監督の『楢山節考』(83)が描いた「姥捨山伝説」を、現代社会に置き換えたような物語に『PLAN 75』はなっている。短編版では描かれなかった「プラン75」申請者とコールセンターのスタッフとのやりとりが印象的だ。

 申請者が “その日”を迎えるまでを電話でサポートするコールセンターのスタッフ・瑤子(河合優実)を、身寄りのないミチは「先生」と呼んで慕う。死を覚悟することで、孫のような年齢の瑤子と出会うミチ。時間制限された2人の電話でのやりとりが、あまりにもせつない。

 赤ちゃんの幸せを考える『ベイビー・ブローカー』と同じく、『PLAN 75』もひとつの命と社会との関係を描いたドラマとなっている。高齢者に尊厳死の権利を与える「プラン75」というシステムを利用するかどうか、「赤ちゃんポスト」を前にしたソヨンと同様に、ミチもまたギリギリまで悩む。「自己責任」という言葉が、ソヨンやミチたちを追い詰めていく。

 悩むことをやめてしまえば、その人が生きている価値さえも消滅することになる。それぞれの答えを求めて、人間は葛藤しながら生きていくしかないようだ。シロかクロかの二者択一ではなく、もっと豊かなグレーゾーンを許容する社会であってほしいと思う。

 

『ベイビー・ブローカー』
監督・脚本・編集/是枝裕和
出演/ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、ぺ・ドゥナ、イ・ジウン、イ・ジュヨン
配給/ギャガ 6月24日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
©2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd. ALL RIGHTS RESERVED
gaga.ne.jp/babybroker

 

『PLAN 75』
脚本・監督/早川千絵 脚本協力/Jason Gray
出演/倍賞千恵子、磯村勇斗、たかお鷹、河合優実、ステファニー・アリアン、大方斐紗子、串田和美
配給/ハピネットファントム・スタジオ 6月17日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー
©2022「PLAN75」製作委員会/Urban Factory/Fusee
happinet-phantom.com/plan75

最終更新:2022/06/17 22:19
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