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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.694

磯村勇斗初主演映画『ビリーバーズ』 カルト宗教を題材にした社会派エロス!

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無人島で実験的生活を送るカルト宗教の信者たちを描いた『ビリーバーズ』

 新興宗教とセックスを題材にした山本直樹の青年漫画『ビリーバーズ』(小学館)が、ピンク映画出身の城定秀夫監督によって実写映画化された。冴えない高校生たちの青春群像劇『アルプススタンドのはしの方』(20)が高い評価を得て、一般映画でも注目を集めるようになった城定監督が長年望んでいた企画だった。孤島で暮らす3人の男女の関係性が、信仰心と性欲のせめぎ合いによって大きく変化していく様子が描かれている。

 2022年に入って『前科者』『PLAN75』などの話題作が次々と公開されている磯村勇斗にとって、『ビリーバーズ』は初主演映画となる。5月の公開以降、現在もロングラン上映が続く犯罪ミステリー『夜を走る』では自己啓発セミナーの主宰者を怪演した名バイプレイヤーの宇野祥平が共演。さらにオーディションで抜擢された若手女優・北村優衣(撮影時21歳)が、抜群の存在感を放っている。社会から隔離された無人島でのサバイバル生活を、3人のキャストは赤裸々に演じてみせている。

 オペレーター(磯村勇斗)、議長(宇野祥平)、副議長(北村優衣)は、南洋の孤島で暮らしている。おそろいのTシャツを着た3人は、新興宗教団体「ニコニコ人生センター」に入信しており、本部からの指示に従って島での実験的共同生活を送っているところだった。

 3人の間には、いっさいの秘密は許されていない。朝起きると3人は独特な瞑想を行ない、質素な食事を済ませた後、昨晩見た夢の内容を事細かく報告し合う。俗世間に汚れた心と体を浄化させ、「ニコニコ人生センター」を創設した「先生」が常々語っている「安住の地」へ行くことが、この実験的生活の最終的な目的だった。

 3人は外界との接触も禁じられ、閉ざされた空間での規則正しい生活を繰り返していた。当然ながら、健康な男女が一緒に生活していれば、性欲がむくむくと湧き上がってくる。だが、エロい夢を見ることは、心が欲にまみれているからだと、年長者である議長は性欲の存在を否定する。エッチな夢を見て、射精してしまったと告白したオペレーターは、合議の結果、土を掘った穴の中で一昼夜を過ごすことに。3人はますます禁欲的な生活を送るようになる。

 しかし、我慢していた性欲は蓄積され、ダムが決壊するように溢れ出すことになる。議長の目の届かないところで、お互いの肉体を夢中になって貪り合うオペレーターと副議長がいた。そして、3人の間に秘密が生じたことで、彼らの関係性も大きく崩れていく。

 無人島で過ごす男女を主人公にした映画に、イタリアの官能作『流されて…』(74)や若き日のブルック・シールズが半裸姿で主演した『青い珊瑚礁』(80)、本多猪四郎監督のホラーファンタジー『マタンゴ』(63)、木村多江主演作『東京島』(10)などがある。それらの作品と同様に、本作の主人公たちも社会常識の通じない無人島でどんな変貌を遂げていくのかを、観客は観察者のように見つめることになる。(1/3 P2はこちら

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