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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.703

実録ミステリー『空気殺人』 大企業と国家が隠蔽しようとした家庭内大量殺人

文=長野辰次(ながの・たつじ)

実録ミステリー『空気殺人』 大企業と国家が隠蔽しようとした家庭内大量殺人の画像1
安全なはずの家庭で次々と犠牲者が出た事件をベースにした実録犯罪映画

 恐怖は目には見えない形でやってくる。そんな可視化できない殺人鬼によって、幼児や妊婦たちが次々と犠牲となる痛ましい事件が起きた。さらに恐ろしいことに、その姿の見えない連続殺人鬼を野に放ったのは、大企業と国家だった。映画『空気殺人~TOXIC~』(英題『TOXIC』)は韓国映画が得意とする、実話をベースにした社会派ミステリーだ。

 本作が題材にしているのは、韓国で起きた「加湿器殺菌剤事件」。イギリスに本社のある大企業の韓国法人が2001年から2011年まで販売した「加湿器用殺菌剤」に、毒性の強い化学物質・PHMG(ポリヘキサメチレングアニジン)が含まれていたことから、多大な犠牲者を出した事件だ。韓国環境保健学会が発表した論文によると健康被害者はおよそ67~95万人、そのうち1万4000~2万人が亡くなったと推定されている。メーカーは毒性があること知りながら商品の販売を続け、しかも事件が起きた原因を隠蔽しようとした。この殺菌剤の販売を認めていた国側の責任も問われている。

 経済効率のみを追求しようとした企業側の体質や国側のずさんな対応が、より多くの犠牲者を出すことになった。そのことから、2014年に起き、乗客304人が亡くなった旅客船沈没事故の悲劇になぞらえて、「家の中で起きたセウォル号事件」とも呼ばれている。

 本作の主人公となるのは、医師のテフン(キム・サンギョン)。仕事に追われる多忙な毎日を送っているが、ひとり息子のミヌの成長が何よりも彼の心の支えとなっていた。だが、そのミヌがある日、意識を失って病院に運ばれてきた。続いて、妻のギルジュ(ソ・ヨンヒ)も同じ症状で倒れてしまう。2人とも「急性間質性肺炎」だった。驚いたテフンが調べてみると、韓国内で同じような肺疾患で亡くなる人たちが続出していることが分かる。

 犠牲者たちは、幼児や妊婦、そして専業主婦がほとんどだった。しかも、事故は春先に多発していた。テフンが疫病学的調査を行なったところ、家庭内に備え付けられていた加湿器に使われている殺菌剤に問題があることが明らかになる。子どもや妊婦たちが風邪を引かないようにと購入していた加湿器が、毒性の強い殺菌剤を部屋中に振り撒いていたのだ。家にいる時間の多い人ほど、その犠牲となっていた。

 テフンの義理の妹・ヨンジュ(イ・ソンビン)が裁判に協力することになり、テフンは殺菌剤を販売するメーカーを訴える。このまま商品が市場に出回り続ければ、被害者はますます増えてしまう。家族を失った被害者遺族が集まり、原告団が結成された。だが、メーカー側はこの訴えを全面否定。さまざまな手段を使って、原告団の切り崩しにかかる。(1/3 P2はこちら

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