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東大研究チーム、再発した乳がんの完全消失に実験成功 進行がんの根治に新たな可能性

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 日本人の死因の第1位はがんで、21年には26.5%ががんで亡くなっている。がんは再発を予防するのが難しい。東京大学の研究チームは9月20日、再発した乳がんを完全消失させる実験に成功したと発表した。

 https://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/ja/news/release/20220920.html

 がんの主な治療方法である手術、化学療法、放射線治療は、がん細胞だけでなく、周囲の正常組織や臓器にも傷害を与える。このため、正常細胞・組織への傷害は副作用として患者の体に大きな負担を強いる。このため、正常細胞や組織を傷つけることなく、がん細胞のみにダメージを与える治療法の開発が求められている。

 そこで、新たながん治療法として、近赤外光を使用した光免疫治療法の開発が進められており、切除の難しい進行がんの患者の生活の質を、保ちながら実施できる治療として期待されている。

 光免疫療法は、腫瘍細胞を認識する抗体に光で活性化される化合物(光増感剤)を結合させた薬を使用する。薬の活性化には、腫瘍細胞局所に集まった光増感剤に効率よくエネルギーを与えるために、体の深部に到達できる近赤外光を使用する。

 この光照射によってエネルギーを受け取った光増感剤は化学反応を起こし、細胞表面付近で細胞を傷害する物質である「一重項酸素」を発生させる。これにより、光増感剤が集積した腫瘍細胞のみを殺すことで、周囲の正常細胞、組織へのダメージをなくした新しいがんの治療法として開発が進められている。

 研究グループは人工的に合成された、製造しやすい上に腫瘍細胞表面に存在する抗原特異的に結合する抗体ミメティクス薬剤と、人工的に設計された光を当てると一重項酸素を従来薬より多く作る、Ax-SiPcを結合させた治療薬「FL2」を開発に成功した。

 抗体ミメティクスは分子量の大きな抗体を模倣しつつ、分子量を小さくし結合特異性を増すように人工的に設計されたタンパク質。抗がん剤や抗ウィルス剤、イメージング用検査薬として開発が進められている。

 また、Ax-SiPcは近赤外線の照射で活性化されがん細胞など殺すシリコン・フタロシアニン化合物で、垂直方向のリンカーの結合部位を持つ新規化合物。

 新開発された「FL2」は、ヒト乳がん細胞に発現し細胞の増殖などに関係しているタンパク質HER2に特異的に結合する。このため、マウス体内へ投与された「FL2」はマウスへ移植されたヒト乳がん細胞へ集積する。

 研究チームはヒト乳がん細胞を移植した腫瘍塊を持つ10匹のマウスに対し、「FL2」の投与を行い、光照射による治療を行った。

 1回目の治療後、全てのマウスで急激に腫瘍塊の大きさが減少し、肉眼的には腫瘍が消えたように見えても、病理検査ではがん細胞の一部が残り、治療30日後、半分の5匹に肉眼的再発が認められた。

 これら5匹のマウスに1回目と同じ手法で2回目の治療を行い、全例で肉眼的に腫瘍の消失を確認した。さらに1回目の治療後約90日、2回目の治療後約30日目に、10匹全てのマウスの剖検を行い、病理学的にも腫瘍細胞が完全に消失し、治療部分は正常な皮膚の状態へと回復していることを明らかにした。

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