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東大研究チーム、再発した乳がんの完全消失に実験成功 進行がんの根治に新たな可能性

 また、治療によりがん細胞が受けた影響を確認するため、光照射10日後で治癒途中の治療部位の病理学的な解析を行い、全ての腫瘍細胞は凝固壊死しており、壊死した腫瘍細胞の周りには免疫系の細胞が集まってきていることを確認した。これにより、光免疫療法では光増感剤が集積したがん細胞のみが、光照射により特異的に壊死に至っていることを明らかにした。

 研究チームでは、「FL2反復投与は光が到達できる皮膚腫瘍の根治に効果的であり、腫瘍免疫の活性化に有効な可能性がある」としている。

 さらに、光免疫療法により腫瘍免疫を誘導し、進行がんの根治率を高められれば、増加している進行がんの根治に新たな可能性を与えることになり、「今後、光免疫治療とがん細胞の体細胞変異に由来する変異タンパク質であるネオアンチゲンへのRNAワクチンを用いた腫瘍免疫治療を併用した実験を発展させることで、より広範な進行がんの治療につながることが期待できる」という。

 根治、再発防止が難しいがんでは、治療後も再発に怯えながら生活を送る人も多い。だが、今回の研究結果が実用化され、乳がんだけではなく、他のがん再発に対して有効な治療法になれば、多くのがん患者にとって肉体的にだけではなく、精神的にも安心感を与えることになるだろう。

 

 

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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最終更新:2022/09/30 08:00
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