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五百旗頭幸男監督インタビュー

新作『裸のムラ』は日本社会の縮図 五百旗頭監督が地方にこだわる理由

今のキー局や準キー局には、魅力も可能性も感じられない

新作『裸のムラ』は日本社会の縮図 五百旗頭監督が地方にこだわる理由の画像2
写真/石田寛

――問題を起こしながらも居直る市議たちの姿を追った『はりぼて』取材チームが、上層部からの圧力で解散を余儀なくされたと感じる結末でした。

五百旗頭 ラストシーンは誤解も生んでいるようですが、富山市議の問題に限らず、僕らが厳しい調査報道をしてきたことで、それをよく思っていない社内の上層部が、栄転を装った人事異動などで報道部を骨抜きにし、弱体化させたのは事実です。ただし、僕がチューリップテレビを辞めた原因は、そこではないんです。『はりぼて』の結末が表現として不十分だったことに関しては、忸怩たる思いもあります。

――2020年3月にチューリップテレビを退職し、同年4月に石川テレビに転職。報道での実績を評価されてのヘッドハンティングだった?

五百旗頭 いえ、僕からアクションを起こし、石川テレビに採用された形です。石川テレビにはドキュメンタリー制作の専門部署が以前からあったんです。かつては赤井朱美さんという名物ディレクターがおられ、「ドキュメンタリーの石川テレビ」と呼ばれていた時代がありました。でも赤井さんが退職してからは、なかなか賞を穫ることができなくなっていたんです。僕が「これ以上はこの会社にはいられないな」と思っていたところ、石川テレビが中途採用者を求めていることを知り、採用試験を受けました。面談では「ドキュメンタリーの石川テレビを復活させてほしい」と言われ、僕がこれまでに作ってきたドキュメンタリー番組も観てくれていました。

――『はりぼて』があれだけ話題になったので、東京のキー局、大阪の準キー局への移籍や、フリーランスでもっと幅広く活躍するという選択肢もあったんじゃないですか?

五百旗頭 僕が20代や30代前半だったら、東京のキー局に入りたいと考えたり、僕の故郷である兵庫に近い準キー局で仕事がしたいと思ったでしょうね。でも、ドキュメンタリーを作っていく上で、自分が本当にやりたいことはどこでやれるかと考えた場合、キー局や準キー局ではないことは明白でした。それは今のキー局や準キー局が放送している番組を観れば、分かることです。どこの局も似たような番組ばかりで、分かりやすさが求められ、決まったフォーマットに押し込まれたものだらけです。そこには僕はまったく魅力も可能性も感じません。

 それだったらローカル局で、自分の作りたいものを作りたい。キー局の顔色をうかがいながら売り込まなくても、今ならこうして劇場公開して全国の方たちに届けることもできます。配信して、海外に伝えることも不可能ではありません。時代は変わっていくし、変えていかなくちゃダメだと思うんです。キー局や準キー局じゃなくても、東京みたいな大都市にいなくても、面白いことができるんだということをチューリップテレビではやってきましたし、石川テレビでその可能性をますます広げていきたいんです。(2/7 P3はこちら

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