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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.708

バイオレンスホラー新時代の幕開け! 閉塞感を吹き飛ばす『オカムロさん』

『ベイビーわるきゅーれ』の伊澤彩織が見せる重厚な殺陣

バイオレンスホラー新時代の幕開け! 閉塞感を吹き飛ばす『オカムロさん』の画像2
『ベイビーわるきゅーれ』の殺し屋役で注目を集めた伊澤彩織

 松野監督の商業デビュー作『オカムロさん』は、上映時間73分と超コンパクトにまとめられたバイオレンスホラーだ。従来の日本のホラー映画は湿度の高い、じめじめした気持ち悪さを漂わせたものがほとんどだったが、少年期を上海や台湾で過ごした松野監督が撮った『オカムロさん』はカラッとした空気感があり、ハイテンポな上に、見終わった後には爽快さまで感じられる。低予算ホラーながら、社会風刺やコメディ要素も含み、何よりも明るいポップさが印象的な作品となっている。

 ストーリーも極めてシンプル。キャンプ場で一夜を過ごしていた5人の若者たちが、次々と斬殺されるという猟奇殺人事件が発生する。どうやら若者たちはスマホで「オカムロさん」という言葉を検索した後、何者かによって首を斬り落とされたらしい。警察の調べによると、犯人は普通の人間とは思えないほどの怪力の持ち主であるようだ。

 キャンプ場の事件では、「オカムロさん」の名前を3回唱えた倉里すず(吉田伶香)だけが生き残った。だが、すずは自分だけが生き残ったというショックから塞ぎ込み、カウンセラーの葉治怜太(バーンズ勇気)のもとに通うようになる。しばらくして、やはり「オカムロさん」に家族を皆殺しにされた早良綾子(伊澤彩織)とも知り合う。すずと綾子は共に「オカムロさん」への復讐を誓い、トレーニングに励むことに。やがて、すずは意外な形で「オカムロさん」と遭遇する。

 ヒロイン・すずを演じるのは、2002年生まれの吉田伶香。本作が映画初主演となる。100人近く参加したヒロインオーディションで、抜群の感情表現とセンスのいいアクションを披露し、審査に当たった松野監督やプロデューサーたちから満場一致で選ばれている。映画序盤はおっとりしていたすずが、中盤以降は別人のように顔つきが変わっていく。カメラを前にした本番での集中力がハンパない、将来が楽しみな新人女優だ。

 カウンセラーの葉治を演じるバーンズ勇気は、舞台を中心に活躍しており、映画でメインキャストを務めるのは今回が初めて。爽やかなイケメンキャラながら、大きな見せ場が用意されている。吉田伶香やバーンズ勇気は初めてアクションシーンに挑戦するということもあり、がむしゃらに自分の役に向き合っている。そんなひたむきな姿が心地よい。「オカムロさん」という地獄からの使者と対峙することで、本作の主人公たちは“生”を輝かせる。

 若いキャストたちの中で重みのある存在となっているのが、すずと共にトレーニングを積む綾子役の伊澤彩織だ。1994年生まれの伊澤もまだ若手女優と呼んでいい年齢だが、『ベイビーわるきゅーれ』(21)のキレッキレの殺陣で注目を集め、今やすっかり売れっ子アクション女優となった。松野監督と同じ日大芸術学部映画学科の卒業生で、松野監督の先輩にあたる。伊澤が大学時代に撮った監督・主演映画を、松野監督は授業で観ており、当時からすでに完成度の高かった伊澤のアクションに感嘆したそうだ。綾子役は伊澤の出演が決まってから脚本を書き換えた、伊澤をイメージしたキャラとなっている。

 すずと綾子のシスターフッド感を盛り込みながら、『オカムロさん』は壮絶な殺陣を交えたクライマックスへと突入していく。(2/3 P3はこちら

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