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『ねほりんぱほりん』レビュー

葉梨前法相更迭と同じ日に「元刑務官」登場、死刑執行に関わる人たちの声「ふとしたときに…」

刑務官が受刑者に襲われたらどうする?

 刑務所には主に「総務部」、「処遇部」、「医務部」の部署があり、ショウゴさんとセイタさんは長年、処遇部に所属していた。工場や受刑者の部屋で問題が起きていないか巡回し、問題が発生した際に即座に駆けつける部署である。

「処遇部の中で1番“花形”とされているのが、工場担当です。刑務作業のことがわかっていて、かつ、受刑者に対して毅然と対応できるということが認められている人なので。1人前になった刑務官がそういうところを任されます」(セイタさん)

 刑務所の中なのに、“花形”って……。セイタさんは刑務官4年目で、50人の受刑者がいる工場の工場担当を任されたらしい。50人の受刑者に対して、担当は彼1人である。

山里 「『ひょっとしたら、自分を襲ってくるかもしれない』という状況で働くのって、むちゃくちゃ怖くないですか?」

セイタ 「やっぱり一斉に襲われたら何もしようがないので、『そのときはどうしようかな?』とは考えます」

 前科者50人を1人で管理するのだから、怖くないわけがない。極度に荒廃した学校の担任教師、といったところか? ただ、何かがあったときのため非常ベルが工場内には設置されているようだ。これを押したら、どうなるのか?

「警備担当の職員だったり、待機している刑務官全員が1分ぐらいで一斉に集まってきて、数の力で制圧します」(セイタさん)

 もしも受刑者が襲ってきたら、刑務官全員で制圧し、懲罰房へぶち込むというわけだ。でも、1カ所に全員が集まったら、他の場所が手薄にならないだろうか? 2008年には徳島刑務所で虐待(医師が肛門に指を入れてくるなど)に耐えかねた受刑者たちによる暴動事件も起きたし、刑務官も泰然とはしていられない。あと、1対50という状況のなか、東日本大震災が起きたときの所内はどうだったのだろう? もう、想像もつかない。

山里 「非常ベルを押したことはあります?」

セイタ 「あります。何度もあります」

「何度も押したことがある」、それだけ危険な職場ということだ。中でも、彼が最も印象に残っているのは、新人時代のエピソードだそう。

 先輩の工場担当者が休憩に行き、その間の監督を彼は任されることに。すると、目の前である受刑者が私語を交わしていた。「何、話してるんだ!」とセイタさんが注意すると、その受刑者は「話してねーわ。なんだ、てめえコラ!」と向かってきたそうだ。そこで、彼は非常ベルを鳴らした。

「でも、終わった後に、任せていただいた担当から『勝手なことするんじゃねーよ、コラ!』って言われたんです。(工場の)作業をする際に、生産管理というのがあるんですね。『1日に何件あげなきゃいけない』っていう。で、そのときに自分に突っかかってきたのが、その数を管理する役職を与えられた、工場としては大事な受刑者だったんです。非常ベルを鳴らすと、その受刑者は懲罰行きなんですね。『その間の生産管理、どうする気なんだ、お前!』って」(セイタさん)

 いや、工場管理の延長で非常ベルを鳴らしたのに、「工場の生産に影響が出るだろ!」と怒られるのは本末転倒なのでは……。役職を持つ受刑者には、他の受刑者と等しい処罰を与えてはならない? つまり、刑務所の中にも忖度は存在するということだ。シャバの社会とまったく同じである。その忖度に気付き、「自分は役職に就いてるから大丈夫」とナメてかかってくる受刑者だって現れかねない。刑務所内でこの構造は、はっきり言って問題ありだ。

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