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『ラーゲリより愛を込めて』二宮和也が“全力”で残酷さを体現、戦争下の丁寧な人間ドラマ

ラストのシーンには疑問も

 絶望と無念の中でも生きようとした姿、それを見守ることしかできない仲間たちの心境。実話ベースだからこその説得力と、時代の犠牲になった者たちの姿は、見事な反戦メッセージとしても強く機能しているといえるだろう。

 絶望の中にも光が見えるような演出は、『護られなかった者たちへ』(2021)でも現実の残酷さを容赦なく描いた、近年の瀬々敬久監督らしいといったところではある。ただ、最後の最後で残念なシーンがあるのは無念だった。

 お涙頂戴演出もやり過ぎるとくどいというもので、ラストに、ある俳優が登場し、スピーチをするシーンがある。ネタバレになってしまうから詳しくは伏せるが、1993年のドラマ版にゆかりのある人物だ。

 そのシーンが、観客に「最後にもう一度泣け!」と畳み掛けているようで、全体のバランスを崩してしまったのが残念でならなかった。


『ラーゲリより愛を込めて』

原作:辺見じゅん 『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』(文春文庫刊)
監督:瀬々敬久 
脚本:林民夫 
企画プロデュース:平野隆
出演:二宮和也、北川景子、松坂桃李、中島健人、寺尾聰、桐谷健太、安田顕 ほか
公式サイト: https://lageri-movie.jp/ 

 

バフィー吉川(映画ライター・インド映画研究家)

毎週10本以上の新作映画を鑑賞する映画評論家・映画ライター。映画サイト「Buffys Movie & Money!」を運営するほか、ウェブメディアで映画コラム執筆中。NHK『ABUソングフェスティバル』選曲・VTR監修。著書に『発掘!未公開映画研究所』(つむぎ書房/2021年)。

Twitter:@MovieBuffys

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ばふぃーよしかわ

最終更新:2023/02/24 11:37
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