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『ラーゲリより愛を込めて』二宮和也が“全力”で残酷さを体現、戦争下の丁寧な人間ドラマ

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筆者撮影

 『男たちの大和』や『レクイエム・太平洋戦争』、『戦場から届いた遺書』など、戦争の中で生きた者たちの物語を多く書き上げ、その作風が当時の緊張感・恐怖感などに強い説得力をもたらしたノンフィクション作家・辺見じゅん。彼女が1989年に発表した『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』を原作とした映画『ラーゲリより愛を込めて』が12月9日から公開される。

 誰もが生きていることの実感を失い、人生を諦め、生命の炎すらも消えつつある……。そんな絶望の状況下でさえ、誰よりも生きたい、離れ離れになった家族と再会したいと願い続けた男・山本幡男を、二宮和也が演じる。

 山本に救われ、心動かされた者たちが、遺された時間の中で山本のためにできることは何かと立ち上がる。その姿は、涙なしでは観ることのできず、本作が“涙腺崩壊”映画であることは間違いない。

 二宮といえば、クリントイースト・ウッド監督作品『硫黄島からの手紙』(2006)における、世界的に評価された演技も記憶に新しい。本作も、キャスティングの段階から『硫黄島』がある程度、意識されていたのではないかとも感じられる、ベストキャスティングだった。

【ストーリー】
第二次大戦後の1945年。そこは零下40度の厳冬の世界・シベリア…。わずかな食料での過酷な労働が続く日々。死に逝く者が続出する地獄の強制収容所(ラーゲリ)に、その男・山本幡男は居た。「生きる希望を捨ててはいけません。帰国(ダモイ)の日は必ずやって来ます。」絶望する捕虜たちに彼は訴え続けた……。身に覚えのないスパイ容疑でラーゲリに収容された山本は、日本にいる妻・モジミや4人の子どもと一緒に過ごす日々が訪れることを信じ、耐えた。劣悪な環境下では、日本人同士の争いも絶えなかった……。

無念と絶望の中でも、最後まで生きたいと願い続けた男の言葉の重み

 おそらく日本映画における予算的な問題だろう。戦闘シーンがほとんどないため、背景に実感が湧かないという点はあった。造形部分での問題はあるものの、それを補うかのように、人間ドラマがとても丁寧に描かれている。

 例えば、今作は山本(二宮)と離れ離れになった妻(北川景子)や子どもたちといった、家族側の視点はあまり描かれていない。これも一方的で、映画における視点的には物足りないと感じるほどに、山本と強制収容所(ラーゲリ)の視点が主に描かれている。

 しかしそれによって、当時実際に収容所にいた人々が、無事であるのか、生活はできているのか、といった家族の状況を把握できない不安感というのを疑似体験させることに成功しているのだ。

 そして、唯一の連絡手段であった手紙の大切さ。現代と照らし合わせれば、ただ気持ちを伝えることがこれほどまで難しい環境だったのかと、その残酷さを痛感させられる。そして、一つひとつの言葉の重みを感じずにはいられない。

 何より心を揺さぶられるのは、誰よりも生きたいと願い続けた山本が、病に冒され、生きられない、最後に家族と会うことすら叶わない、そしてそれを受け入れないといけないというところだ。病には勝つことができないという残酷な現実は、過去も現在も共通する部分も多く、観ているだけで心を抉られるようだ。

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