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アレのどこが面白いの?~企画倉庫管理人のエンタメ自由研究~

『うわっ!ダマされた大賞』現役3テレビ大演出家が仕組んだ「目線の転換」

『ダマされた大賞』現役日本3テレビ大演出家が仕組んだ「目線の転換」の画像1
『うわっ!ダマされた大賞』日テレTOPICS より

企画倉庫」というサイトを運営している私が「あの企画はどこが面白いのか?」を分析し、「面白さの正体」を突き止めるための勉強の場としてこの連載をやらせてもらっています。

 今回のテーマは「『うわっ!ダマされた大賞』について」です。

『ダマされた大賞』は日本テレビで定期的に放送されているドッキリの特番で、2010年から12年続いている長寿番組です。番組をご覧になったことがある方には出川哲郎さんやデヴィ夫人がドッキリの仕掛け人として奮闘するイメージが強いかと思います。最新の特番が先日、12月11日に放送されていました。

 この番組の総合演出は日本テレビの局員である古立善之(ふるたちよしゆき)さん。古立さんは『世界の果てまでイッテQ』『月曜から夜ふかし』『1億3000万人のSHOWチャンネル』の総合演出であり、これまで手掛けた番組のほぼ全てで高視聴率を獲得している、日本屈指のスーパーテレビマンです。『アメトーーク』を手掛けるテレビ朝日の加地倫三さん、『水曜日のダウンタウン』を手掛けるTBSの藤井健太郎さんらと並び、同業のテレビマンから強い関心を集める演出家の1人です。テレビ番組の評価は視聴率だけにあらずですが、その観点だけで見ると、ここ10年のテレビ界において最も大きな成功を収めた演出家は、古立さんで間違いありません。

『ダマされた大賞』は古立さんが総合演出を務めているため、『世界の果てまでイッテQ』と共通する出演者・スタッフが多く見受けられます。これを読んで、両番組のナレーションや編集のテイストが近いことにお気づきになった方もいるのではないでしょうか。

 では、『ダマされた大賞』のどこが面白いのか?

 この番組の大きな特徴は「ドッキリのターゲットではなく、仕掛け人にスポットを当てていること」ではないかと思います。

 普通、ドッキリではターゲットにスポットを当てて、そのドッキリが面白くなるように演出します。もちろん、『ダマされた大賞』でもターゲットにスポットは当てられています。しかし、プラスアルファでドッキリの仕掛け人として奮闘するデヴィ夫人や出川哲郎さんにもスポットを当てて、キャラクターやストーリー性をつけているんです。そのため、ドッキリのネタやターゲットのリアクションが楽しめるだけでなく、仕掛け人の奮闘劇としても楽しめる作りになっています。

 普通のドッキリ番組であれば、ドッキリ自体が失敗したり、ターゲットのリアクションがイマイチだった場合は、ただつまらなかったという結果に終わるのですが、『ダマされた大賞』では「ドッキリに失敗した仕掛け人の物語」として、そのネタを面白くできるわけです(もちろん、仕掛け人にスポットを当てれば失敗すらも面白くなる、という単純なものではなく、現場での演出力や編集力があってこそ成せる業だと思います)。

 テレビの制作現場ではよく「目線」という言葉を使うのですが、同じような企画でも「どこに目線をつけるか」で、見え方が全く異なることがあります。例えば、TBSで恒例となっている『壮絶人生ドキュメント プロ野球選手の妻たち』と特番があるのですが、これは『プロ野球戦力外通告・クビを宣告された男達』という番組の目線を変えて生まれたもの。両番組は、どちらもプロ野球選手を題材にしたドキュメンタリーなのですが、選手本人ではなく、その家族に目線を当てることで、似て非なる番組が生まれたわけです。

 目線ということでもう1つテレビ番組を例に挙げるなら、近年で1番のヒット番組として注目されている『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』(中京テレビ/日本テレビ系)も目線のつけ方で成功した番組だと思います。テレビ界では古くからデカ盛りグルメを扱うのは定番となっていますが、この番組は従来のデカ盛り番組とは目線を変えて、メニューではなくお店の店主にスポットを当てています。この目線のつけ方がこの番組のヒットの要因の1つであることは間違いありません。

 グルメ、ドキュメント、歌、トークなど、テレビ番組には様々な定番ジャンルがありますが、似ているように見えてそれぞれの番組が目線のつけ方を工夫して、独自性を出すような作りがされています。今後、そこにも注目していただくと新たな楽しみ方が出来るかもしれません。それでは今日はこの辺で。

 

 

放送作家。松本人志・高須光聖がパーソナリティを務めた東京FMのラジオ「放送室」で行われたオーディションをきっかけに放送作家の高須光聖に師事。以降、テレビやYouTubeでさまざまな番組を担当。主な歴代担当番組は『くりぃむナントカ』『シルシルミシル』『めちゃ×2イケてるッ‼』『ガキの使い 笑ってはいけないシリーズ』『得する人損する人』『激レアさんを連れてきた。』『新しい波24』『1周回って知らない話』『ゴン中山&ザキヤマのキリトルTV』『GET SPORTS』『ヨロシクご検討ください』『青春高校3年C組』『今田×東野のカリギュラ』など。

Twitter:@kikakusouko

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最終更新:2023/02/28 06:33
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