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2022年お笑いファンの胸を熱くさせた「根建のシビック」と「友保のどん兵衛」

2022年お笑いファンの胸を熱くさせた「根建のシビック」と「友保のどん兵衛」の画像1
囲碁将棋 吉本興業 公式サイトより

 2022年も数えきれないほどたくさんの面白いバラエティ番組が放送され、数々の名シーンが誕生した。その中でも僕が「2022年のテレビバラエティを代表する作品」だと強く思っているのが「根建のシビック」だ。このワードで即座に反応する人はお笑い変態の素質ありなのでぜひ、仲良くさせてもらいたい。「根建のシビック」は、プロ野球ファンで言うところの「江夏の21球」のように、今も一部のお笑いファンの間で語りぐさとなっている。

『水曜日のダウンタウン』(TBS/10月19日放送)

 昨年も賛否ある挑戦的な企画を多数放送した『水ダウ』だが、「1000万円を受け取ってもらうの逆に難しい説」において、囲碁将棋・根建さんがパンサー・尾形さんに1000万円を渡されそうになるも「他人からもらったお金ではなく自分が稼いだお金でシビックを買いたい、それが目標で頑張っているから」と頑なに1000万円を受け取らなかった姿に多くの視聴者が涙した。この勇姿はSNSで「根建のシビック」として瞬く間に拡散された。

 これだけでも十分素晴らしい作品なのだが「根建のシビック」はここで終わらなかった。

 このオンエア後すぐ、シビックを製造するHondaの公式Twitterが「根建さん熱いシビック愛をありがとうございました、ぜひ試乗にいらしてくださいね!」と投稿。さらにその2週間後にはHondaの施設に招待された囲碁将棋の2人が実際に、シビックを試乗する動画がSNS上で公開された。『水ダウ』きっかけで根建さんは瞬く間に夢の仕事にまで辿り着いたのだ。ちなみにその動画は今もYouTubeで視聴できるのでぜひ観てほしい。

Honda CIVIC 試乗の裏側 【囲碁将棋V-log】根建太一より愛をこめて

 そんな感動的な広がりを見せた「根建のシビック」と肩を並べて、2022年お笑いファンの胸を熱くさせたのが「友保のどん兵衛」だ。

『M-1グランプリ2022』(テレビ朝日/12月18日放送)

 昨年も大盛り上がりを見せた「M-1グランプリ」。先日放送された決勝戦はもちろん素晴らしかったのだが、それとは別のところで確実に大会を盛り上げたのが金属バット・友保さんと「どん兵衛」とのやりとりだ。

 友保さんが準決勝の会場にあった「どん兵衞」の巨大看板、通称「ジャンボどん兵衛」を半ば強引に持ち帰ったところ、どん兵衛公式Twitterが「ジャンボどん兵衛を探しています」と投稿。すると友保さんはYouTubeで自分が犯人なことを認め、罪を償うかのように「どん兵衛愛」を本気で語った。さらには「ジャンボどん兵衛」を持ち帰る友保さんの姿がM-1公式PVのラストカットに使用されると、どん兵衛公式Twitterが金属バットにエールを送るメッセージを投稿、友保さんも熱いメッセージを返信してかなりの反響を集めた。この一連の騒動が「友保のどん兵衛」だ。なんて平和な騒動なんだ。

「根建のシビック」「友保のどん兵衛」の共通点

「根建のシビック」「友保のどん兵衛」はいくつかの共通点がある。

 まず「当人が本当にその商品が好きだった」ということ。画面越しにもその愛が本物であることは十二分に伝わり、嘘偽りない愛が1番人々の心を動かすのだと改めて思った。テレビCMに人気者を起用するのは当たり前だが、女性タレントが牛丼店のCMをしていたりすると「絶対行かないだろ」と思うこともある。だからこそこの2つは視聴者の心に響きSNS上でバズったのだと思う。僕を含むお笑いファンは、根建さんのシビック愛に胸打たれてシビックに乗りたくなったし、友保さんの負けてなおM-1を盛り上げる姿に感動しながらどん兵衛をすすったはずだ、僕は1週間で3回すすった。

 また、素敵なムーブメントにつながった要因として「企業がフットワーク軽く対応した」というのが大きかったと思う。

 多くの視聴者は、大企業であればあるほどフットワークが重そうという先入観があるため、企業側がすぐさまSNSで反応し、次への展開につなげたことで、僕を含む視聴者は驚き、感動したのだと思う。近年この展開スピードがかなり早まっている気がする。僕は専門家じゃないので分からないが、このようなPRは高額なテレビCMよりも効果があるのではないか。上述したように僕はめちゃくちゃシビックに乗りたくなったし、この原稿を書き終えたらどん兵衛を食べると決めている。

「根建のシビック」「友保のどん兵衛」、この2つは、実際どれだけ売り上げに貢献したかは定かではないが、確実に話題にはなったし、みんなが商品に対してプラスの感情を抱いた。これは企業が商品をPRするときに非常に参考になるやり方だったと思うし、今後何かムーブメントを起こしたいときにマネすべき事例なのかもしれない。ただもちろん2つとも「偶然発生したムーブメント」であったことを忘れてはならない。「狙ってる」と思われたら途端に興醒めしてしまうので、真似することは容易ではないと思う。まして根建さんも友保さんもそんなムーブメントなんか「知らんがな」と思っているだろう。そのスタンスこそが「ガチ感」につながっていて、人々の心を動かすのだから。

 2023年はどんなテレビバラエティが放送されるのか。「テレビ離れ」がしきりに叫ばれる今、「根建のシビック」「友保のどん兵衛」のように、テレビのオンエアにとどまらない「放送をきっかけに二転三転していく愛のある企画」こそ、視聴者が求めているものなのではないだろうか。

 

 

高橋雄作(TP、プロデューサー・作家・社長)

プロデューサー、作家、社長。2022年夏、テレビ朝日を退職し独立。音声配信アプリ「stand.fm」コンテンツアドバイザー、お笑いラジオアプリ「GERA」チーフプロデューサー。YouTubeチャンネル「金属バット無問題」などを手掛ける。

Twitter:@takahashigohan

たかはしゆうさく

最終更新:2023/01/02 19:00
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