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『あたらしいテレビ』人気放送作家の「裏方はTwitter見るの禁止!」という提言は是か否か?

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『あたらしいテレビ 2023』(NHK)

 いまや毎年恒例ともいえる新春特番『あたらしいテレビ 2023』(NHK)が、今年も元旦に放送された。

 以前は千原ジュニアを司会に、鈴木おさむやヒャダインといった面々が出席し、円卓を囲んでああだこうだ放談する番組だったが、コロナ以降は形式が変わった模様。今回は杉浦友紀アナウンサーを進行役に据え、佐久間宣行、パンサー・向井慧、あのちゃんの3人が出演者として登場している。

 パッと見で、佐久間のパワーバランスが突出して強く見える。以前の円卓形式では、複数のエンタメ強者が好きなコンテンツを出し合いつつ、その最中にこぼれ落ちる知見が視聴者にとっての栄養になったものだが、今回は果たして?

40代以上が「テレビはオワコン」と言うのはなぜか?

 今年、特に出色だったのは現役テレビ制作者たちが出席した座談会、「裏方視点としてのテレビの今」である。出席者は以下。

芸人:Aマッソ加納
放送作家:竹村武司(『魔改造の夜』)
テレビ朝日:小山テリハ(『イワクラと吉住の番組』『あのちゃんねる』)
テレビ東京:大森時生(『島崎和歌子の悩みにカンパイ』『Aマッソのがんばれ奥様ッソ!』)
フジテレビ:原田和実(『ここにタイトルを入力』)

 特に小山、大森、原田を登場させているあたり、“若手の作り手”から声を引き出すための座組ということがわかる。あと、『あたらしいテレビ』の前身番組、『新春TV放談』の頃より座談会の力関係はフラットだ。『TV放談』ではベテランが口を開くや時代からのズレを露呈して自滅、そのズレを修正できないという展開が目立ったが、それをキャスティングで未然に防いだと言える?

 まず、進行役の加納が口を開いた。

「最近、すごい思うのが、40代以上の人のほうが、わかってると思わたれすぎて『テレビなんか終わりだよ』って言いますよね」(加納)

 2通りの解釈があると思う。1つ目は、加納が言った通りの読み。「テレビはオワコン」と言うことで“新しい自分”の人物像と気分を自家発電し、でも実体は当人が自覚するほど新しくない……という年長者のパターンである。2つ目は、“メディアの王様”として君臨した輝かしい頃のテレビを知っているから、今を嘆くニュアンスで「テレビは終わった」と口にしてしまう年長者のパターンだ。

「テレビの華やかな頃を見ちゃってるから、それと比べちゃうんでしょうね」(竹村)

 どちらなのだろう? というのも、ここ数年は『あたらしいテレビ』(『新春TV放談』)自体が「若者はあまりテレビを見ない」的なコンセプトを選んでいたはずだからだ。言ってしまうと、かつての同番組は“新しい自分”の雰囲気を自家発電する傾向にあった。良い言い方をすれば今年は前向きになったし、悪い言い方をすればしれっと転向したとも捉えられる。

小山 「若い世代のほうが、面白いものがYouTubeにあろうがTikTokだろうがテレビだろうが、あんまり意識しないじゃないですか。『Netflixだから』とか。だから、面白いコンテンツを作ればたぶんそれはSNSとかで届くって思ってるし、それで普段ものを見てるから、あんまりテレビに対する悲壮感はないのかなって思います」

大森 「個人的にテレビが今、1番ハードルが低いんで面白いことをやりやすいと思ってますね。基本ベース、YouTubeとかNetflixのほうが面白いと思われているので、テレビでちょっと面白いことをやると『すごく面白い』と思われやすいというか」

 大森の発言が尖りまくっている。かつて、テレ東で大森の先輩だった佐久間は、後輩の発言に「生意気でいいでしょ(笑)?」と、どこか誇らしげだ。出る杭を潰さない佐久間のリアクションがいい。

 一方で、「佐久間は鬼才」「藤井健太郎は至高」という賛辞はそろそろ古いという感じも受ける。いつの日か、佐久間が『新春TV放談』でのテリー伊藤みたいな枠になったらどうしよう……なんて不安までよぎってしまった。

企画の「成立」を正義とする風潮は是か非か?

 ここから、テーマは次のフェーズへ。最年長、竹村が口を開いた。

「昔のほうが(テレビを)衝動で作っていた気がする。今、『なんでこれやんの?』ってよく言われるんですけど。(番組を作るために)理由がいるんです。今の時代、こっちが面白いと思ったからじゃダメなんだっていう。もうちょい昔のテレビって、作り手が『面白いからやってんだ』っていう気持ちが強かった印象はあります」(竹村)

 企画を通すためにマーケティングしたり、「○○だから、このコンテンツを作るんです」という理由付けが必要な世界になってしまったわけだ。

大森 「『成立』って言葉が多いですね、やっぱり」

原田 「そうです、『成立はしてるね』とか『なんとか成立させましょう』みたいな(笑)」

大森 「成立してなくても僕は面白いと思うんですけど。『成立』って言葉は、実はテレビ局内で1番くらいに聞く言葉だと思うので」

「成立」は、普段から佐久間がよく言いがちな言葉である。ワイプに映る佐久間の顔を見ると、苦笑いしている。

 2022年のテレビ界でランジャタイが人気を博したのは、「成立」を正義とする流れのアンチテーゼとして、彼らがテレビマンから票を集めた結果な気がする。一方、テレビマンがテレビの今を語る『あたらしいテレビ』を「成立」させるべく今回キャスティングされたのが、重鎮・佐久間という気もするのだ。

向井 「俺はいろいろ成立させてきたなぁ~」

佐久間 「そうね。成立と裏回しをたくさんやってきたもんね(笑)」

向井 「胸が痛いVTRでもありました(苦笑)」

杉浦 「いやいや、番組を作る側としては頼もしいなと思って(笑)」

 番組終盤、向井はこんな発言した。

「大成立時代がきてほしいですね。『成立こそ正義』っていう(笑)」(向井)

「成立はカッコ悪い」という風潮も、それはそれで違うと思うのだ。今年の番組の流れで「大成立時代」を望み続けた向井は、逆に信用できた。

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