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『女神の教室』高橋文哉演じる「口先だけ」優等生“真中”の成長劇

『女神の教室』高橋文哉演じる「口先だけ」優等生“真中”の成長劇の画像
高橋文哉演じる真中 | フジテレビ総合エンタメメディア「フジテレビュー!!」より

 北川景子主演のフジテレビ系月9ドラマ『女神[テミス]の教室~リーガル青春白書~』の第4話が1月30日に放送された。ロースクール(法科大学院)に教員として派遣された裁判官・柊木雫(北川景子)を軸とする、ロースクール生たちの成長ストーリーが描かれる本作。回を追うごとに、法律家を目指す若者たちの過去や境遇、悩みが明らかになっているが、第4話ではこれまでもチラチラと裏の顔がのぞいた真中信太郎(高橋文哉)がフィーチャーされ、彼の成長が描かれた回となった。

 イケメンで成績優秀、コミュニケーション力抜群……。表向きは非の打ちどころがない真中だが、団体から離れたときに見せるドライな仕草や、舞台となる青南ロースクール(青南大学法科大学院)では司法試験合格の必須条件のようにみなされている「藍井ゼミ」に入るために戦略を企てる策士の一面が散見されてきた。これまでは表立った動きが少なく、柊木が受け持つ主要ロースクール生5人のなかでは話題に挙がることが少ないキャラクターだったが、第4話では“腹黒キャラ”誕生の原因となったルーツが判明した。

 それは学生時代の友人らとの食事会。司法試験に関係のないことは排除する効率至上主義の真中だが、友人からの連絡に渋々参加。ロースクールでは優等生扱いだが、友人たちとはパワーバランスが逆転しているようだ。食事会で浮き彫りになったのは、外資コンサルティング会社などで活躍する“社会人”の友人と、ロースクールで司法試験合格を目指し勉強に励む“学生”である真中との立場の格差。どうやら真中は就活に失敗したようだが、「もともと弁護士志望だったから、試しに受けただけだよ」と友人の前では強がる。だが、友人たちから「そのうち、俺たち真中に逆転されるな。大企業の顧問弁護士とかになれば年収、億超えるんだろ?」と、真中を下に見ていることを示唆するナチュラルマウンティングを受け、真中の胸はえぐられる。

 家族に対しても、心の中で苛立ちを抱えながら表面上は真面目な長男を装っている描写は第3話でもあったが、第4話では妹が、自身が最終面接で落ちた外資コンサルティング会社の内定を得たことを報告されてしまい、真中は平気そうな顔をなんとか貫く。だが、周囲との差は開いていく一方で、内心では焦りや悔しさがさらに膨らんでいき、藍井ゼミ選抜テストでも集中できない。真中はテスト直後、「(テストの出来を)気にしても仕方ない。気持ちを切り替えよう」と話す実務演習の受講仲間たちに苛立ちをぶつけてしまう。そして「僕は君らとはレベルが違うんだよ。たまたま同じ授業受けてるからって一緒にすんなよ!」と、隠し持っていたエリート意識をあらわにするのだった。しかし、水沢拓磨(前田拳太郎)から「いいヤツぶって、人によく思われようと必死みたいだけど、バレバレだから」と見透かされ、「お前っていっつも口先だけだよな」と厳しい指摘を受けると、真中は何も言い返せず、その場を立ち去るしかなかった。

 真中は水沢と対立を深めていくが、正義感の強い水沢が「弱者に寄り添う弁護士」を目指し、実務演習でもその姿勢を有言実行する真っ直ぐな姿をどこか羨んでいるようでもあった。そして模擬裁判の授業で被告側の弁護をともに担当することになった天野向日葵(河村花)が、裁判に勝つためではなく、被告の立場を始め、さまざまな角度から当事者に思いを馳せ、真摯に検討する姿勢に真中は感銘を受け、ついに変化が生まれる。裁判が泥沼化して長期にわたる可能性があること、裁判が長引けば原告側にも大きな負担になること、また被告側が高額な損害賠償を支払うと倒産し、従業員が路頭に迷う可能性があることなどを鑑みて、真中は「徹底的に争って勝ち負けを決めたところで、それで依頼人が救われるとはどうしても思えない」と熱弁。「弁護士として依頼人にできること」として和解を申し出るのだ。模擬裁判の授業の目的から和解交渉は本来想定外だが、“弁護士は依頼人を勝たせるために存在する”と考えていたはずの真中が提案した和解は、「双方の依頼人のため」に実現することに。

 授業のあと、水沢は「和解なんて考えもしなかった」と、勝ち負けににこだわっていた自分を素直に反省し、真中を褒める。一方、真中は「でもそれは、弱い立場の人たちを助けたいからだよね。純粋にそう思えるのってすごいことだと思う。僕にはとてもできない」と返す。そして自分が「口先だけ」の人間であることを認め、周囲を見返すためだけに弁護士になろうとしていたという本音を明かしながら、「僕も、いい弁護士にはなりたい。水沢君とはちょっと違うかもしれないけどね」と心からの笑顔を見せる。歪んだエリート意識から生まれたコンプレックスの檻から、真中が解放された瞬間だった。真中は最後に、司法試験合格のためには必要ないと柊木の実務演習の授業を辞めようとしている照井雪乃(南沙良)に「実務演習だけど、無駄ってほどじゃないかもよ」と声を掛けるほどの変化を見せた。

 今回も柊木の実務演習を軸としたストーリー展開だったが、「勝てる弁護士が、いい弁護士じゃない」「依頼人に寄り添えることがいい弁護士」という柊木の“理想”に加え、「判決を勝ち取る弁護士は二流。一流は争わず、和解させる」という里崎教務主任(小堺一機)の持論も打ち出しながら、しかし現実はそう簡単にはいかない、だからこそ「互譲」という選択肢があるということを生徒たちに授業として体験させたかったという柊木の目的は、本作の方向性を示すものだったともいえる。

 その点は、第4話の隠れたハイライトでもある、研究家教員・藍井仁(山田裕貴)が柊木に見せた初めての動揺ともつながるところだ。柊木と藍井は指導方針の違いで度々衝突してきたが、柊木の実務演習の課題をたびたびくさす藍井は、今回は「生徒たちには“いい法律家”になってほしい」という柊木に対し、「いい法律家」の定義を苛立ちげに聞き返す。すると柊木から「あなたにはないんですか? 理想とする法律家の姿が」と率直に聞かれ、一瞬黙り込んで目を反らしたあと「考えたこともありません」とその場を去ろうとした。そして、柊木が今回提示した課題が「過去の判例を見れば答えは明白」「和解しか答えのない裁判」だったことを藍井は授業として意味がないと切り捨てようとするが、柊木は「そう簡単にいかないのが現実」「立場や考え方が違っても、どこかで折り合いをつけなきゃやっていけませんよ」と微笑む。理想を語るわりに、意外と現実的でもある柊木に、試験の採点を手伝おうかと声を掛けられると、「け、結構です」と戸惑う藍井だった。

 柊木から「予備校の講師のほうが向いている」と指摘され、「どうしてここにいるんですか?」とも問われていた藍井だが、確かに藍井はなぜ司法試験合格のための効率的な指導に特化し、司法試験合格後のことには一切興味を持たず、「過去の判例」にばかりこだわるのか。現在の藍井を形成した過去についても今後明かされることを期待したい。

■番組情報
月曜ドラマ『女神[テミス]の教室~リーガル青春白書~
フジテレビ系毎週月曜21時~
出演:北川景子、山田裕貴、南沙良、高橋文哉、前田旺志郎、前田拳太郎、河村花、佐藤仁美、宮野真守、小堺一機、尾上松也、及川光博 ほか
脚本:大北はるか、神田優
音楽:武部聡志
主題歌:Vaundy「まぶた」
プロデュース:野田悠介
演出:澤田鎌作、谷村政樹
法律監修:水野智幸
製作・著作:フジテレビジョン
公式サイト:fujitv.co.jp/themis

東海林かな(ドラマライター)

福岡生まれ、福岡育ちのライター。純文学小説から少年マンガまで、とにかく二次元の物語が好き。趣味は、休日にドラマを一気見して原作と実写化を比べること。感情移入がひどく、ドラマ鑑賞中は登場人物以上に怒ったり泣いたりする。

しょうじかな

最終更新:2023/02/06 12:00
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