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『A-Studio+』司会の鶴瓶自ら取材しゲストの“本物のリアクション”を引き出す凄み

『A-Studio+』鶴瓶の取材力でゲストの本物のリアクションを引き出す凄みの画像1
『A-Studio+』TBS公式サイトより

 放送作家の深田憲作です。

 「企画倉庫」というサイトを運営している私が「あの企画はどこが面白いのか?」を分析し、「面白さの正体」を突き止めるための勉強の場としてこの連載をやらせてもらっています。

 今回のテーマは「トーク番組『A-Studio+』について」です。

 『A-Studio+』はTBS系列で毎週金曜23時から放送されている、笑福亭鶴瓶さんと藤ヶ谷太輔さんが司会を務めるトーク番組です。2009年4月に放送を開始しているので、この春から15年目に突入する長寿番組です。

 番組の形式は、毎回1人のゲストを招いて30分トークをしていくシンプルなスタイル。「○か×で答えてください」「ゲストのお宅拝見」といった企画モノは一切ありません。そういったところから、一般の方からすると「ごくごく普通のトーク番組」に映っているかもしれません。ただ、私個人的にこの番組は凄い企画だと思う点があります。

 それは、司会者である鶴瓶さんがゲストの家族や友人に事前取材を行っているところ。本来、こういったトーク番組ではスタッフが取材を行い、収録前に司会者と打ち合わせをして「家族がこんなことを言っていました」といった具合に伝えます。それを本番で「君の家族がこんなこと言ってたで~」とトークをするわけです。しかし、この番組では司会者の鶴瓶さんが直接、関係者に会いに行って取材をしているのです。

 私が記憶する限りでは、司会者がゲストの関係者に会いに行って事前取材をするレギュラー放送のトーク番組は『A-Studio+』をおいて見たことがありません。しかも、鶴瓶さんほどの大物芸能人が、芸能人ではない一般の方を相手に取材する番組というのは、特番でもそんなに無かった気がします。

 1人のゲストにつき最低でも3~4人は取材をしていますから、大変な労力です。レギュラー番組としてそれを毎週やるのはかなり過酷な作業。もし私が「鶴瓶さん司会でトーク番組を作る」という企画会議に呼ばれても、鶴瓶さんに事前取材をしてもらうといったアイデアは出ないと思います。いや、アイデアとして浮かんだとしても提案はしません。会議で他の人からこのアイデアが出たとしても「そんなの現実的じゃないし、鶴瓶さんや事務所に断られちゃうのでは?」と否定的な意見を言ってしまうでしょう。

 テレビの世界である程度のキャリアを積むと、そういう具合に「これは無理だろう」と自分の中で勝手に発想の制限をするクセがついてしまいます。この番組を見ると、その無意識の制限が面白い企画の種を潰しているのだなと、自戒の念がわきます。

 この番組は「鶴瓶さんが取材をする」というアイデアを出した制作スタッフも凄いと思いますし、それを受けた鶴瓶さん・事務所側も凄いと思います(もしかすると鶴瓶さん側からこのアイデアを出した可能性もありますが)。他にも多数仕事を抱えていて、芸能人としても大御所である鶴瓶さんが、事前取材を行うという労力を買って出るのは凄いことだと思います。

 そして、オンエアでその事前取材の様子を写真のみでしか出さないところにも凄みを感じます。テレビマンであれば、鶴瓶さんクラスの大物が取材に行っている様子は、映像で出したくなるはずです。取材の現場もきっと面白いところは山のようにあるはずですから。これに関しても、私が会議にいたら「映像を1つも使わないのはさすがにもったいなくないですか?」と言ってしまいそうです。

 一見、費用対効果の悪い演出に思えますが、番組を見ると鶴瓶さんが足を使って取材をしていることが、ゲストの本物のリアクションを引き出すことに繋がっていることが分かります。

「お前の親友の○○ちゃん、あれオモロイやっちゃな~」

「え……?(親友の取材時の写真が出て)えーーー!!!鶴瓶さん、○○ちゃんと会ったんですか!?」

 この番組で定番となっているこのゲストのリアクションは、何度見ても飽きません。それは“本物のリアクション”だからです。トーク番組という仕事をこなすための“作られたリアクション”でないことは誰の目にも明らか。

 リアクションだけでなく、『A-Studio+』でゲストが発する言葉は、ウソ偽りのない“本物の言葉”に思えます。だからこそ、番組として面白いのはもちろん、ファン以外の人たちにもゲストの魅力も伝わりやすい。『A-Studio+』に出ているのを見てあの芸能人のファンになった、という方も多いのではないでしょうか。

 テレビ制作の現場では「汗をかいた番組作りをしなければいけない」といったことがよく言われます。楽をして作った番組、もしくは楽をして作っているように見える番組は視聴者の心に刺さらない、という意味合いです。まさに『A-Studio+』は汗をかき、汗をかいた分だけ視聴者に刺さっている番組だと思います。それでは今日はこの辺で。

放送作家。松本人志・高須光聖がパーソナリティを務めた東京FMのラジオ「放送室」で行われたオーディションをきっかけに放送作家の高須光聖に師事。以降、テレビやYouTubeでさまざまな番組を担当。主な歴代担当番組は『くりぃむナントカ』『シルシルミシル』『めちゃ×2イケてるッ‼』『ガキの使い 笑ってはいけないシリーズ』『得する人損する人』『激レアさんを連れてきた。』『新しい波24』『1周回って知らない話』『ゴン中山&ザキヤマのキリトルTV』『GET SPORTS』『ヨロシクご検討ください』『青春高校3年C組』『今田×東野のカリギュラ』など。

Twitter:@kikakusouko

企画倉庫

ふかだけんさく

最終更新:2023/03/03 09:00
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