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インフォーマ・ロスに陥った人々、そして……

ドラマ『インフォーマ』
ドラマ『インフォーマ』より ©カンテレ

ドラマ『インフォーマ』の放送が終了すると、入れ替わるようにNetflixでの全世界配信が開始された。そして、続編も望む声が高まっていき……地上波ドラマの枠を超えたエンタテイメントとして、業界内外に圧倒的な評価を残した『インフォーマ』とは何だったのか? 『インフォーマ』の原作者であり監修の沖田臥竜氏が同作を通して描きたかった、ネット社会や情報社会における人間の営みとはなんだったのか?  沖田氏による恒例エッセイ。

情報とは何なのか、インフォーマとは何なのか

 今、世界へと旅立った『インフォーマ』はどうしているだろうか。ドラマ放送終了後も忙殺されている日々の中にできる一瞬の空間に、そんなことをふと考えている自分がいる。「インフォーマ・ロス」というヤツだ。視聴者のみなさまからも続編を望む声などがたくさん届き、ありがたい限りである。

 なぜ、『インフォーマ』が世の中に突き刺さったのか。それは時代が求めていたからこそだと思う。そうした物語を生み出せたのも、今の時代だからだろう。

 なに⁈ そんな偉そうなことを言って、小説は大して売れていないじゃないかっ!だと…そうなのよ、本当、文芸は冷え切っていてねっ…て黙らっしゃい! 世の中がついてきてへんだけちゃうかい!…すまない、少しばかり取り乱してしまった。

 本題に戻そう。今の世の中、随分とSNSにビクついてしまっているように見える。SNSによって、便利になったのか窮屈になったのかすら、わからなく感じる時が誰にだってあるのではないだろうか。つまりは誠実と不誠実さえもが曖昧になってしまっている。

 こういうことを言えば批難されるのではないか、こういう気の利いた発言をすれば注目を集めるのではないか、という観念に囚われ過ぎてしまい、何が正しく何が間違っているかのという境界線すら見失われがちになってしまった。

 だが、本当は何も変わっていない。それを木原慶次郎は『インフォーマ』という物語を通して体現させ、現代社会の中で、木原は木原慶次郎を演じているのだ。一見、傍若無人にうつる木原にだって、迷いもあれば哀しみもある。それは冷酷に見える冴木亮平も同じだ。そして、三島寛治には三島寛治の営みがあり、すべての登場人物にそれぞれの生き方や生活がある。

 ネット社会になった現代においても、自分の目で見たもの、肌で感じる温もり、耳で聞いた声、鼻で嗅いだ匂いを信じるべきだ。それに、まさるものはない。いいねの数やリツイートの多さに一喜一憂したり、コメントにビクビクする必要はないのだ。

 今もどこかでネット社会に疲弊している人がいるかもしれない。そんな人たちに木原だったら「何をしょうもないことをいちいち気にしとんねん!そんなこと気にするひまがあるんやったら、お前、車の免許もってんのか?持ってんのやったら、やかましい!運転せんかいっ!」と言うだろう。

『インフォーマ』の台本
『インフォーマ』の台本

 三島は週刊タイムスの記者として、休みなんて関係なく張り込みをしているかもしれない。それが生きて行くということなのだ。そして、冴木はどんな世界で生きているのだろうか。多分、それを考えていくのが私の役目なのかもしれない。

 情報というものは、金ではない。承認欲求を埋めるものでもない。木原が物語でもこだわったのは、あくまで情報を武器に戦い続けることだ。情報を扱う仕事をしていると、「聞かなければ良かった」ということにも出くわすし、私の中で封印させてしまうこともある。相手が傷つける情報など、無意味でしかないならば、耳に入れる必要がないからだ。一方で、情報を知ることで、強くならなくてはならないことだってある。

 インフォーマとは何なのか。本当に存在する集団なのか。それともすべてが架空の存在なのか。それがはっきりとわからないからこそ、『インフォーマ』は世の中に突き刺さったのではないだろうか。フィクションとかノンフィクションとか、そんな概念に決して括れないのが『インフォーマ』という作品なのだ。

 もうしばらくすると、マンガ『インフォーマ』の連載が始まる。違うマンガの連載の依頼も来ているので、それも世に出すことがしっかりできればなと思っているし、ずっと監修に入っているドラマももうすぐで8カ月をむかえようとしている。そんな合間でも、ずっと『インフォーマ』のことを考えている。

 いつかまた、会えたら良いなと思いながら……心地良いインフォーマ・ロスを感じている。

(文=沖田臥竜/作家)

小説『インフォーマ』

沖田臥竜/サイゾー文芸/税込1320円
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週刊誌記者、三島寛治の日常はひとりの男によって一変させられる。その男の名は木原慶次郎。クセのあるヤクザではあったが、木原が口にした事柄が次々と現実になる。木原の奔放な言動に反発を覚えながらも、その情報力に魅了された三島は木原と行動をともにするようになる。そして、殺人も厭わない冷酷な集団と対峙することに‥‥。社会の表から裏まで各種情報を網羅し、それを自在に操ることで実体社会を意のままに動かす謎の集団「インフォーマ」とはいったい何者なのか⁉パンデミック、暴力団抗争、永田町の権力闘争、未解決殺人事件…実在の事件や出来事を織り交ぜ生まれた「リアル・フィクション」の決定版!


ドラマ『インフォーマ』
現在は、Netflixでは全世界配信中


4分で振り返る『インフォーマ』第1話~第5話 | Netflix Japan
 
桐谷健太演じる主人公で、裏社会・政治・芸能など、あらゆる情報に精通するカリスマ的情報屋“インフォーマ”木原慶次郎と、佐野玲於(GENERATIONS)演じる週刊誌「タイムズ」記者・三島寛治が、警察・ヤクザ・裏社会の住人たちを巻き込み謎の連続殺人事件を追うクライムサスペンス。事件の背後に存在する謎の集団のリーダーで、木原の因縁の相手となる男を、事務所移籍後初のドラマ出演となる森田剛が演じる。

作家。2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、小説やノンフィクションなど多数の作品を発表。小説『ムショぼけ』(小学館)や小説『インフォーマ』(サイゾー文芸部)はドラマ化もされ話題に。最新刊は『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』(同)、『ブラザーズ』(角川春樹事務所)。調査やコンサルティングを行う企業の経営者の顔を持つ。

Twitter:@pinlkiai

最終更新:2023/04/10 13:38
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