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自殺率高いのは「40~50代でうつ病を患っている女性」厚労省と警察庁発表

自殺率高いのは「40~50代でうつ病を患っている女性」厚労省と警察庁発表の画像1
写真/Getty Imagesより

 もっとも自殺する可能性が高いのは、「40~50代でうつ病を患っている女性」。厚生労働省と警察庁がまとめた「22年度中の自殺の状況」を分析すると、そんな結果が導き出された。

 自殺者数は2019年までは減少を続けていたが、20年に新型コロナウイルスの感染拡大の影響による雇用の悪化などもあり、2万1081人と前年比912人(4.5%)増加した。21年には2万1007人に同74人(0.4%)減少したが、22年は2万1881人と同874人(4.2%)と大幅に増加した。

 男女別では、男性が1万4746人と前年比807人(5.8%)で大幅に増加。女性は7135人と同67人(0.9%)と小幅に増加した。男女比では、男性は女性のおおよそ倍の自殺者数の状態が続いている。(表1)

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 人口10万人当たりの自殺者数を示す自殺死亡率は、17年以降は16人台で推移していたが、6年ぶりに17.5人と17人台に上昇した。男性の自殺死亡率は21年の22.9人から24.3人に急上昇している。女性は21年の11.0人から11.1人と小幅な上昇にとどまった。(表2)

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 自殺者を年齢階級別で見ると、20代、30代および70代は前年比で減少した一方で、10代、40代、50代、60代、80代以上は増加した。特に、50歳台は4093人で前年比475人(13.1%)増、60歳台は2765人で同128人(4.9%)増、40歳台は3665人で同90人(2.5%)増と40~60代の増加が目立っている。

 40代は20年の新型コロナ感染拡大以降、各年代で唯一、3年連続増加し、また、50代も2年連続で増加している上、22年の増加数は475人と18年以降のすべての年代の中で最も増加数が多かった。(表3)

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 年齢階級別の自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数)では、50代の20人以上が継続している上、40代も21年、22年と2年連続で20人を超えている。40代、50代以外に20人を超えたのは、21年の20代だけで、40代、50代の自殺死亡率の高さが伺われる。その上、50代は21年の21.3人から22年には23.4人と2.1人も増加した。(表4)

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 自殺者の内訳は、有職者が8576人で前年比586人(7.3%)増、学生・生徒等が1063人で同32人(3.1%)増、無職者が1万1775人で同136人(1.2%)増と、無職者が全体の53.8%、有職者が39.2%、学生・生徒等が4.9%の順となっている。

 自殺の原因や動機はひとつではない。さまざまな原因や背景により自殺行動に結び付いているケースが多い。また、自殺者の原因や動機はすべてが解明されるわけでもない。22年の自殺では、自殺者のうち、原因・動機が特定されたのは1万9164人(87.6%)、特定できなかったのは2717人(12.4%)となっている。

 この自殺統計では、原因・動機が明かになった1万9164人について、遺書等の生前の言動を裏付ける資料のほか、家族等の証言から考えられる原因・動機も含め、自殺者1人につき4つの原因・動機を「家庭問題」、「健康問題」、「経済・生活問題」、「勤務問題」、「交際問題」、「学校問題」、「その他」に7分類、さらに、各分類について詳細な内容を項目別に集計している。

 7分類では、家庭問題4775人、健康問題1万2774人、経済・生活問題4697人、勤務問題2968人、交際問題828人、学校問題579人、その他1734人となっており、20代から80代以上のすべての年代で男女ともに「健康問題」が1位と圧倒的だ。

 ところが、2位には各年代の特色が現われる。20代は全体では勤務問題だが、男性は経済・生活問題、女性は交際問題と分かれる。30代から60代までは全体では経済・生活問題だが、男性は経済・生活問題に、女性は家庭問題に分かれ、70代、80代以上は全体、男女ともに家庭問題が2位となる。(表5)

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 そこで、7分類の中で原因・動機とした上げられたもので多いものを各分類の詳細な該当項目で調べると、驚くべきことが判明した。

 20代から80代以上の全世代の男女とも1位の健康問題で、20代から80代以上の全世代の男女ともに1位の原因・動機としてあげられているのは、「うつ病」なのだ。女性では20代から70代のすべての年代で、自殺者の20%以上が「うつ病」が原因・動機となっている。年代でも、30~70代ですべての自殺者のうち15%以上が「うつ病」をあげている。(表6)

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 自殺の原因・動機として、例えば60代女性の29.4%、50代女性の27.8%、70代女性の27.6%が「うつ病」をあげているが、これは他の原因・動機と比較すると突出して高い。例えば、各年代の男女で「うつ病」以外で最も高いのは、20代女性の11.3%、30代女性の10.1%にあげられている「その他の精神疾患」だ。

 この「その他の精神疾患」は20代から30代の男女、40代から70代女性の自殺の原因・動機の2位となっている。ちなみに、40代から70代男性の自殺の原因・動機の2位は、経済・生活問題としてあげられている「生活苦」となっている。

 このように、自殺者数、自殺死亡率、自殺の原因・動機などを総合的に判断すると、「40代、50代でうつ病を患っている女性」は自殺の可能性が高いということになる。

 相談窓口や電話相談などさまざまな自殺防止対策は取られているが、新型コロナの感染拡大を機に自殺者は再び増加してしまっている。うつ病そのものが自殺の原因や動機ではなく、多様な要因・背景によってうつ病を患うケースが多いのだろうが、これだけうつ病が自殺の原因・動機としてあがっている点を考えれば、うつ病治療薬の開発がもっとも有効な自殺防止策となるのかもしれない。

 

 

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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最終更新:2023/04/09 09:00
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