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若者たちは何故、自殺するのか?「22年中における自殺の状況」を公表

若者たちは何故、自殺するのか?「22年中における自殺の状況」を公表の画像1

 厚生労働省と警察庁は3月14日、「22年中における自殺の状況」を公表した。自殺者数は2万1881人で前年比874人(4.2%)増と2020年以来2年ぶりに増加に転じた。中でも、問題視されたのは、20歳未満の若年層の自殺の増加だった。そこで、若年層の自殺の状況に焦点を当ててみた。

 22年の自殺者数は男性1万4746人で前年比807人(5.8%)増加、女性7135人で同67人(0.9%)増加した。男性は13年ぶりの増加となった上、800人以上の大幅増加となった。一方、女性は3年連続の増加となっている。

 人口10万人当たりの自殺者数を示す自殺死亡率は、17年以降は16人台で推移していたが、6年ぶりに17.5人と17人台に上昇した。男性の自殺死亡率は21年の22.9人から24.3人に急上昇している。女性は21年の11.0人から11.1人と小幅な上昇にとどまった。

 年齢階級別では20歳代、30歳代および70歳代以外の各年齢階級で増加し、50歳台が4093人で前年比475人(13.1%)増、60歳台が2765人で同128人(4.9%)増、40歳台が3665人で同90人(2.5%)増、10歳台が796人で同47人(6.3%)増となった。

 職業別でみると、有職者が8576人で前年比586人(7.3%)増、学生・生徒等が1063人で同32人(3.1%)増、無職者が1万1775人で同136人(1.2%)増と、無職者が全体の53.8%、有職者が39.2%、学生・生徒等が4.9%の順となっている。

 大きな問題となった若年層の自殺は、10歳未満でも2人の自殺者が出ており、20歳未満の自殺者数は合計で798人と800人目前に迫っており、過去最高となった。

 10~19歳の自殺者数は、16年には519人まで減少したが、17年からは再び増加に転じ、新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、20年には前年比121人(18.4%)も増加、21年には減少したものの、22年には増加に転じた。(表1)

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 学生・生徒等では16年には791人まで減少したが、17年からは再び増加に転じ、17~19年は800人台だったが、20年には前年比151人(17.0%)と大幅に増加して、1000人台に突入した。その後は22年まで3年連続で1000人台となっている。(表2)

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 そこで、さらに詳細に学生・生徒等の内訳をみると、自殺者がもっとも多いのは、大学生の438人で前年比4人(0.9%)増、次いで高校生の354人で同40人(12.7%)増となっている。一方で、予備校生、専修学校生などのその他は111人で同13人(10.5%)減と唯一減少している。

 だが、注視しなければならないのは、確かに数の上では大学生や高校生が多いものの、自殺者が若年化している点だ。特に小学生は21年の11人から18人に増加しており、前年比で63.6%も増加している。中でも、小学生の男子は4人から12人と3倍に増加した。

 また、中学生も21年の148人から178人に30人(20.3%)も増加している。中学生の場合には、男子が前年比21人(28.4%)増、女子が同9人(12.2%)と男女ともに増加している。高校生では男子が同39人(23.1%)増加し、女子は同1人(0.7%)の増加にとどまっている。大学生はでは男子が同7人(2.3%)の増に対して、女子は同3人(2.2%)減少しており、学生・生徒等の合計でも男子は同41人(6.6%)の増加に対して、女子は同9人(2.2%)の減少と、総じて男子学生の自殺が増加している。(表3)

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 自殺の原因や動機は判明しないケースも多い。22年は自殺者数2万1881人のうち、原因・動機が特定されたのは、1万9164人(87.6%)だった。また、自殺の原因や動機は1つではなく、複数の原因や動機が複雑に重なり合っている。この統計では、家族等の証言から考えうる場合も含め、自殺者一人につき4つまで計上して、原因・動機を特定している。

 そこで、若者たちは何故、自殺するのかを原因・動機から探ってみると、「うつ病」「その他の精神疾患」「学業不振」「入試以外の進路の悩み」「いじめ以外の学友との不和」が主な原因・動機として該当した。

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 学生という点では、中学生、高校生、大学生とも「学業不振」と「入試以外の進路の悩み」が1、2位となっているが、中学生では上位に入らない「うつ病」「その他の精神疾患」が、高校生女子と大学生では上位に入っており、さまざまな悩みとともに精神疾患を患うケースが多いことがわかる。

 小学生から中学生の自殺の増加という若年化、うつ病やその他の精神疾患を伴う自殺という結果を踏まえ、若者たちの自殺防止に有効な手段を考えなければならない。

 

 

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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最終更新:2023/04/01 08:00
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