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カメラマンが女性カメアシの顔面を蹴る…ひどかった昔のテレビ業界現場裏

カメラマンが女性カメアシの顔面を蹴る…ひどかった昔のテレビ業界現場裏の画像1
ダウンタウン・浜田雅功(写真/GettyImagesより)

 少し前に放送された『オオカミ少年』(TBS系)に出演したダウンタウンの浜田雅功さんが、1991年に同局系列で放送されていたドラマ『ADブギ』というドラマで、その時の監督さんにブチ切れられたことを話した。

『ADブギ』とは『ママハハブギ』『予備校ブギ』(すべてTBS系)に続く遊川和彦脚本のブギ3部作の最終作で、実際のTBSを舞台とし、主演であるADの加勢大周さん、そしてチーフADの浜田さん、セカンドADの的場浩司さんの3人を中心に展開していく物語。3K(キタナイ・キツイ・キケン)と言われるADという仕事を選んだ若者たちの懸命に働く姿と、青春を描いたドラマである。

『オオカミ少年』の放送で「TBSドラマ・エキストラ多すぎ部門」を紹介した後に、ゲストで出演していた的場さんと共演した「ADブギ」の話になってた。

 野球場みたいなところに、多数のエキストラを呼んでの撮影。メインの3人が撮影前にロケバスで談笑をしていたところ、スタッフさんから準備が出来たということで、現場へ入るよう促されたのだ。浜田さんは「はいはーい」と返事をしたものの談笑を続けてしまい、20分後ようやく現場へ向かった。すると監督が鬼の形相で待っており「お前たちのドラマなんだよ!」と多くのエキストラがいる前で大激怒されてしまったのだ。

 この話においては明らからに浜田さんたちが悪いのだが、元々TBSは「ドラマのTBS」と言われており、そのドラマ班は一種独特な位置に存在していた。

 優秀なプロデューサーを抱え、他局も認める技術と美術力を誇り、TBS内でもドラマ班は特別な扱いをされており、エリート揃いのドラマ班のスタッフはなんとなく“演者よりも上”という空気感を纏っていたのは間違いない。なのでほかの局では下か来てもらえるタレントもTBSでは上側に回るのだ。

 実は僕も一度まさに「ドラマのTBS」という経験したことがある。

 芸人をしていた頃にTBS系で放送されていた『夢のカリフォルニア』というドラマにゲスト出演させてもらう機会があった。

 主演の堂本剛さんの同級生で、セリフも多数あり意外と良い役をもらうことが出来たのだ。同窓会に出席した堂本さんとお話をするシーンをTBSのスタジオで撮影していたときのこと、セリフはないが、カメラの見切りを考えてその場に居なければいけなかったので、僕は邪魔にならないようにお酒を飲んでいる雰囲気でバーカウンターのようなところに立っていた。

 すると足元に何かぶつかったのだ。

 本番中だったので僕は気にせず芝居を続けたのだが、しばらくするとまた何かぶつかった。とりあえず無視していたのだが、ぶつかる感覚が段々と短くなり、さらに衝撃も強くなっていった。さすがに確認しようと思い、芝居をしながら足元も見ると、カメラのケーブルがあったのだ。そのケーブルが何度も僕の足にぶつかっていたのだ。

「これは申し訳ない」と思い、ケーブルの先を見るとカメラマンアシスタント、略してカメアシと呼ばれるスタッフさんが、僕をどかそうと思いわざとケーブルを僕の足にぶつけていたのだ。しかもかなり迷惑そうな顔をして。初対面のスタッフさんにそこまであからさまな態度をとられたことが無かった僕は、少しパニックになってしまった。

 撮影が終わり、現場についてきてくれていたマネージャーさんにその話をしたところ「ドラマのTBSだからねぇ」と、その行動がまるで日常茶飯事だといわんばかりであった。そのとき僕は初めてTBSドラマ班の異様さに気づいたのだ。

 このように裏方と呼ばれるスタッフさんがタレントに対して何かするというのは基本的には稀だが、芸人がたまに「昔のテレビスタッフは怖かった」というようなスタッフさん同士の厳しい指導を、何度か目にしたことがある。

 それはとあるハウススタジオでバラエティ番組の収録をしていたときのこと。メインMCさんと数組の若手芸人がトーク&大喜利のような企画をしていた。

 今のテレビのように、小型のカメラを使い少人数でするようなロケではなかったので、スタッフさんの数は多く、小さなハウススタジオは人でごった返していた。

 本番中、メインのカメラマンさんが最前線で撮影をしていたとき、そのカメラについていたカメアシさんが、うまくケーブルを捌けず、カメラマンさんの足元で行く手を邪魔してしまったのだ。

 カメラマンさんは、その場の出来事を一瞬も逃すわけにはいかない。その為にカメアシさんをつけてケーブルを捌いてもらい、スムーズに移動できるようにしているのだ。そのカメアシさんが邪魔になってしまうなどカメラマン業界においては本末転倒。邪魔をされてしまったカメラマンさんが「邪魔だよ!」という怒号と共にカメアシさんの顔を蹴ったのだ。

 ちなみにカメアシさんは女性。本番中に女性の顔面を靴で蹴る。もちろん全力で蹴っているわけではないのだが、あまりにもショッキングな出来事に、その場にいた若手芸人たちのテンションが、だだ下がりしたのは言うまでもない。

 カメアシさんはカメラマンを目指すスタッフさんであり、夢を諦めない気持ちやカメラマンさんへの尊敬や絆などがある為、そうされても耐えていたのだろう。収録が終わるまで懸命にケーブルを捌いている姿を見て、泣きそうになった。

 もちろんその時メインでカメラマンをしている方も、過去に同じような指導をされているのだろう。それが伝統となりそのような指導方法が当たり前になっていたのかもしれないが、その当時、今から20年近く前であっても時代錯誤だと感じた。

 ちなみにその顔を蹴られたカメアシさんが数年後、ほかの現場で活き活きとカメラマンをしていたのを、今でも鮮明に覚えている。

 昔のテレビ業界、とくに技術さん達は強烈な体育会系であり、芸人だったら逃げ出してしまうほど厳しい世界であった。もちろん今はそのような指導法はないどろうし、あったとしたら大問題になるだろう。

 これはテレビ業界だけではなく、どんな職業でも言えることで、現代において、過去に自分たちがやられてきたような理不尽な指導法や、教育法は今は通じない場合が多い。

 何故なら今は「厳しく育てる」よりも「褒めて伸ばす」が良い指導法として立証されているからだ。

 しかしこの「褒めて伸ばす」という指導法に対して抵抗がある人もいるだろう。それは「褒める」イコール「甘やかす」と勘違いしている人達だ。この考え方が多いのは高齢の世代であり、現代の風潮すら「甘え」とし、その考え方の異質さに気づいていない。

 愛情を込めて褒めるということを「甘え」とした世代に育てられた我々の世代は、褒められることが少なく、往々にして自己肯定感が低い。その現状を見ても、褒めずに厳しく育てるという方法は間違っていたと認めるべきなのだ。

 そんな自己肯定感が低い世代が自分たちが子育てするにあたり、もっとも重要視するのが自己肯定感の上げ方であり、自分たちのように成長させたくないと考えているのだ。

 もしまだ自分が受けていた指導法や教育法を自分たちの下の世代に受け継ごうとしている人がいるのなら今すぐやめるべきだし、そういう考えの上の世代がいたら間違っていると教えてあげるべきだ。

 褒めて伸ばす教育は様々なやり方があるにせよ、エビデンスが多く発表されており、一昔前のようにナンセンスなものではなくなったのだ。

 しかも褒めて伸ばすという教育方法で育った子供のほうが、幸福度や知能は高いとされている。つまり多面的な視点で見たときに褒めた方がトータル的な能力値が上がるし、教える側も好かれる。まさに一石二鳥。

 ただし教える側はただ褒めるだけではなく、「甘えさせる」と「甘やかす」、「叱る」と「怒る」の差を知らなければならない。

 そんな苦労や大変な思いをして褒めているのだから、誰か褒める側も褒めてあげてください。

 褒めの無限ループ。

 

 

檜山 豊(元お笑いコンビ・ホームチーム)

1996年お笑いコンビ「ホーム・チーム」を結成。NHK『爆笑オンエアバトル』には、ゴールドバトラーに認定された。 また、役者として『人にやさしく』(フジテレビ系)や映画『雨あがる』などに出演。2010年にコンビを解散しその後、 演劇集団「チームギンクラ」を結成。現在は舞台の脚本や番組の企画などのほか、お笑い芸人のネタ見せなども行っている。 また、企業向けセミナーで講師なども務めている。

Twitter:@@hiyama_yutaka

【劇団チーム・ギンクラ】

ひやまゆたか

最終更新:2023/04/10 08:55
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