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NHKが進める「貴重アーカイブ映像」掘り出し、手放しで歓迎できない事情

NHKが進める「貴重アーカイブ映像」掘り出しは手放しで歓迎できない事情の画像1
NHK(Getty Imagesより)

 新番組が次々と始まる4月は、テレビ好きには楽しみな時期。今春の目玉の1つが、NHKによる過去の貴重な映像を発掘する番組だ。

 NHKの珍番組や珍映像を紹介してきた『天然素材NHK』がレギュラーになるほか、『NHK特集』や『NHKスペシャル』の秀作を再放送する『アーカイブスセレクション』、Eテレの懐かしい子ども番組や幼児向け番組を紹介する『Eテレタイムマシン』、選りすぐりのドラマを4Kでリマスターする『4K名作ドラマ』と、映像資産を活用した番組が一気に4つもスタートする。

「これまでNHKに限らず放送業界では、ソフトを文化遺産として捉える発想が乏しかったのが現実です。テレビ番組は大衆文化や時代を色濃く映し出す貴重な資料なのに、アーカイブが活用される場面はごくごく稀。BSやCS、有料配信では古いコンテンツがビジネスツールになっていますが、基本的に“1度放送したらおしまい”という感覚が強く、過去の映像は倉庫でホコリを被っている状態でした。

 そのため近年では、放送文化や映像文化の発展のために、映像アーカイブを有効活用すべきという声が内外から上がっていました。2020年には、TBSが保管していた討論会の映像を使った映画『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』がドキュメンタリーとしては異例のヒットをした例もあり、過去の映像は娯楽として楽しめるのはもちろん、教育現場でも活用できますし、学術研究の資料にもなり得る。今やネットに押されて存在感が低下しつつあるテレビ業界にとっては、存在感を示す絶好のチャンスです。NHKが4月にアーカイブ発掘番組を一斉に始めるのは、決して偶然ではありません」(テレビ関係者)

 小説や映画は学問の場で研究対象になっているのに、同じ大衆娯楽であるテレビは、そういった俎上にはなかなかあがらない。そういった意味では、今回の過去映像発掘番組に掛けられる期待は大きいが、一方ではこんな意見もある。キー局関係者は言う。

「潤沢な受信料をバックに番組制作するNHKには膨大な映像アーカイブのストックがあり、公共放送という建前がある以上、そういった資産は視聴者と共有するというスタンスを取らざるを得ない。NHKは4K映像の売り込みに必死で、過去映像のリマスターにも力を注いでおり、“放送文化に寄与する”という旗を振って、懸命にその意義をアピールしています。

 しかし、折からの不況や物価上昇で、“受信料を下げるべき”という声は高まっており、NHKへの逆風は強い。4月からは新たに、受信料未払い者に3倍の割り増し金が発生する新ルールが導入されますが、視聴者からはスクランブル放送を望む声がしきりにあがっており、受信料の徴収率も8割を切っています。

 NHK所蔵のアーカイブが貴重な資料だということに異論はありませんが、映像発掘番組が始まるのは、“我々は放送文化の維持や発展に貢献しています”、“そのためにはどうしてもお金がかかります”という受信料戦略の一環でしょう。そもそも現在の受信料が妥当なのかについて、もっと議論が必要でしょうし、莫大な新社屋の建設費用や、平均1000万円超とも言われる局員の人件費の削減など、取り組むべきことはいくらでもあるはずです」(キー局関係者)

 懐かし映像で視聴者をほのぼのとさせて、財布の紐を緩めさせる作戦かも。

藤井利男(ライター)

1973年生まれ、東京都出身。大学卒業後に週刊誌編集、ネットニュース編集に携わった後、独立。フリーランスのジャーナリストとして、殺人、未解決事件、死刑囚、刑務所、少年院、自殺、貧困、差別、依存症といったテーマに取り組み続けてきた。趣味はダークツーリズム。

ふじいとしお

最終更新:2023/03/26 06:00
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