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社会がみえる映画レビュー#12

映画『東京リベンジャーズ2』新キャストの永山絢斗&村上虹郎の素晴らしさ

映画『東京リベンジャーズ2』新キャストの永山絢斗&村上虹郎の素晴らしさの画像1
C) 和久井健/講談社C) 2023映画「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編」製作委員会

 4月21日より『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』が公開中。本作はいわゆる“前編”であり、6月30日公開の“後編”である『決戦』へ物語が続く構成となっている。

前作を観ていなくても楽しめる親切設計に

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C) 和久井健/講談社C) 2023映画「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編」製作委員会

 原作漫画は累計発行部数が7000万部を突破する社会現象級の超ヒット作。2021年公開の前作に当たる実写映画版はコロナ禍の逆風の中でも44億円を超える興行収入を記録しており、その評価も軒並み高い。

 今回の続編も『るろうに剣心』『ちはやふる』『キングダム』にならぶ、漫画の実写映画化の成功作として語られるであろう出来栄えであり、なるほど『東京リベンジャーズ』というコンテンツが強い支持を得る理由も改めてわかったのだ。

 しかも、今回はまるで劇場版『名探偵コナン』シリーズのように(前作に当たる)“物語の始まり”を紹介してくれるので、原作漫画を読んでいなくても、前作を観ていなくても楽しめる親切設計になっている。

 登場人物は多いが、それぞれが個性的なのですぐに覚えられるだろう。用語も、主人公が属する不良グループが「東京卍會(略してトーマン)」、敵対するグループが「芭流覇羅(バルハラ)」とだけ知っておけば問題ないはずなので、安心してご覧になってほしい。さらなる魅力を紹介していこう。

「不良もの×タイムリープもの」のコンセプトの秀逸さ

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C) 和久井健/講談社C) 2023映画「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編」製作委員会

 『東京リベンジャーズ』は「不良漫画」「ヤンキーもの」に類する作品であり、そこに「タイムリープもの」を組み合わせたことがエポックメイキングだ。

 主人公は現代では27歳のフリーターであり、不良の学生だった時代にタイムリープをする目的は「かつて恋人だった女性の命を救うため」と明確。加えて、過去の出来事がどのように現代に繋がるのか、その因果関係を解き明かすミステリー的な面白さがある。

 加えて、ダメ人間だった主人公が勇気を振り絞る姿そのものが感動的であるし、彼は不良グループ同士の暴力的な争いを一歩引いて俯瞰して見ているような立場でもある。不良ではない大多数の読者および観客にとって、とても共感しやすいキャラクターになっているのだ。

 そして、不良の学生そのものが、現代ではやや成立しにくい、前時代的な印象になりつつあるとも思う。だが、タイムリープ先を10年前(原作漫画では12年前の2005年)のガラケーが登場する時代に設定することで、主人公に同調しながらノスタルジックに「あの頃」の不良の姿を思い出すような構図もある。

 不良そのものになじみのない若い世代にも、それは新鮮に映ったのではないだろうか。もちろん不良たちが振るう暴力は客観的には間違ってはいるが、彼らの関係性や矜持からは、暴力だけではない複雑な価値観や“アツさ”を感じることができるはずだ。

新キャストの永山絢斗や村上虹郎の素晴らしさ

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C) 和久井健/講談社C) 2023映画「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編」製作委員会

 『東京リベンジャーズ』はその「不良もの×タイムリープもの」というコンセプトに加えて、キャラクターの魅力がとても大きい。実写映画化の成功の理由も、豪華な若手キャストたちの、完璧なまでの人気キャラクターへのハマりぶりにあると言っていい。

 特に絶賛を浴びたのは、ひょうひょうとした印象とカリスマ性を同居させた“マイキー”役の吉沢亮と、『HiGH&LOW』シリーズに続き眼光が鋭くも頼れる相棒“ドラケン”を演じた山田裕貴。今回も続投したこの2人は、前作とはまた違った「弱さ」を見せる場面もあり、原作漫画を読んでいなくても彼らの多層的な魅力を知り、さらに好きになれるだろう。

 そして、今回の新キャストとして登場する、仲間思いで誠実さを感じさせる“場地”役の永山絢斗、Netflixドラマ『今際の国のアリス』の役にも通ずる歪んだ感情と狂気を持ち合わせる“一虎”役の村上虹郎が素晴らしい。その村上虹郎は現在は心身の不調のため休養中であるが、その俳優としての力をまたも思い知らされたので、ゆっくり休まれてから万全の体調で復帰してほしいと願うばかりだ。

 加えて、やはり主人公を演じた北村匠海が、本当にヘタレなダメ人間に見えることがとても大きい。『とんかつDJアゲ太郎』の時もそうだったが、カッコ悪い姿もコミカルに演じられる方だからこそ、内面からわき上がるカッコ良さや誠実さもまた際立つ俳優なのだと思い知らされた。

 今回はその北村匠海と、今田美桜演じる恋人とのぎこちなさすぎる会話にも大笑いできたので楽しみにしてほしい。さらに、清水尋也や間宮祥太朗も凄まじいインパクトを与えてくれるので、そちらも大注目だ。

前後編に分けられたこその「飢餓感」

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C) 和久井健/講談社C) 2023映画「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編」製作委員会

 本作で賛否を呼ぶポイントがあるとすれば、やはり前後編に分けられていることだろう。前編も後編も上映時間は90分台で、片方だけではボリュームはやや少なくも思えてしまう。

 とはいえ、謎の多い「運命」につながる(または変えていく)過程をたっぷり見せる前編と、様々な登場人物の想いがタイトル通り「決戦」で爆発する後編に分ける構成にはスジが通っている。探偵もので例えるなら、前編を「事件編」、後編を「解決編」と捉えることもできるだろう。

 何より、前後編合わせて3時間のボリュームでこそ描ける物語そのものに見入った。筆者は映画の後に原作を読んでみたが、エピソードを再構成しつつも、重要な要素を外さない、エモーショナルに盛り上げるための脚本の工夫にも感服した。原作漫画のファンにとっては期待通りか、キャスト陣の熱演もあってそれ以上のものが観られるだろうし、筆者個人は「物語のどこにも削る場面はない」「3時間は必要だった」と思えたのだから。

 長尺の映画を観ることをためらってしまう若い観客がいることを踏まえても、この前後編に分けたことは英断だったと思う。また、筆者は生意気にも試写で前後編を一気に観てしまったが、これはむしろもったいなかった。約2カ月が空いて、やっと公開される後編を観られるという、その良い意味での待ち遠しさ、言い換えれば「飢餓感」は、映像作品が溢れている今ではむしろ貴重だと思えたのだから。

実写映画化したことの意義

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C) 和久井健/講談社C) 2023映画「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編」製作委員会

 この『東京リベンジャーズ』は「実写映画化」そのものにとても意義がある。それは、生身の人間が、暴力を振るう様を演じてこそ「痛み」がリアルに伝わってくるからだ。前作も今回の『運命』もPG12指定がされており、かなり刺激の強い暴力シーンもあるのだが、それを臆さずに表現したこともとても重要だった。

 そして、ファンからの反発が大きくなりがちな漫画の実写映画化において、若手キャストたちが「全員を納得させる」ほどのハマりぶりと、本当に命を削るかのような姿を見せられれば、誰もが実写映画化の「成功」を叩き出したと認めるのではないか。

 さらに、後編に当たる『決戦』では、前編の『運命』の時点ではまだ顔見せ程度だった“松野千冬”役の高杉真宙が「過去最高の高杉真宙」とまで思えるほどに魅力的だった。そして、約3カ月かけて入念に作り込まれた、原作を見事に再現した廃車場のロケセットが、文字通りに「戦場」になる。

 その廃車場の場面は前後編にわたる映画全体の1/3を占めており、“動き”にキャラクターの感情が乗っかるために吹き替えはほぼなし。 地上から10mはあるという廃車場の山のてっぺんは日が昇ると温度が上昇し、まるでサウナのような状態で、キャストはもちろんスタッフも熱と緊張感でフラフラになりながらのハイカロリーな撮影になっていたそうだ。

 その後編『決戦』での凄まじいアクション、およびエモーショナルな展開は、前編『運命』で積み上げてきた物語、キャラクターの感情や関係性があってこそ感動を呼ぶ。前述したように、約2カ月の良い意味での「おあずけ」をくらったからこその、圧倒される結末を見届けてほしい。

『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』大ヒット上映中!
『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』(6月30日(金)公開)
原作:和久井健『東京卍リベンジャーズ』(講談社『週刊少年マガジン』KC)
監督:英勉
脚本:髙橋泉
音楽:やまだ豊
主題歌:SUPER BEAVER「儚くない」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
出演:北村匠海 山田裕貴 杉野遥亮 今田美桜 鈴木伸之 眞栄田郷敦 清水尋也 磯村勇斗/
永山絢斗 村上虹郎 高杉真宙/間宮祥太朗/吉沢亮
配給:ワーナー・ブラザース映画
C) 和久井健/講談社C) 2023映画「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編」製作委員会

ヒナタカ(映画ライター)

「ねとらぼ」「cinemas PLUS」「女子SPA!」「All About」などで執筆中の雑食系映画ライター。オールタイムベスト映画は『アイの歌声を聴かせて』。

Twitter:@HinatakaJeF

ひなたか

最終更新:2023/05/12 16:29
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