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ジャニーズの崩壊を嘲笑するかのようなジャーナリズムという傲慢

問題に向き合うための当たり前の姿勢

 私は物書きであるが、ジャーナリズムという観点だけで物事をとらえることはしない。私ごときがことの是非を説くなどはおこがましいことは承知だが、ただいつでも違和感を覚えるのは、もはや弱者となった者たちに対して、大の大人が寄ってたかって、我が正義だと大上段に構えて、言いたい放題、罵っているような構図だ。

 不祥事を起こした側、問題を抱える側に対しては、誰が何を言っても許されるのか。自身の正義を絶対として、社会を代表したかのような顔で自分の考えを押し付け、相手の痛みを考えない姿勢こそが、イジメという問題を生み出しているのではないか。そう思えてならない。それは、ことの是非、以前の問題だ。

 会見で、望月記者を含めた一部の記者が騒ぎ立てたときに、井ノ原(快彦)くんが「子供たちも見ています」と訴えかけて、他の記者からも拍手が起きた。あれが何よりの証拠ではないか。ことの是非の前に、大人として、社会人として、問題に向き合うための当たり前の姿勢というものがあるべきだと思うのだ。

 私は基本的にコラムなどで、個人名を出して相手を攻撃することはしない。なにも聖人君子を気取りたいわけではない。直接、本人に言おうと思うからだ。間違っても、大勢の中に入り、弱者となった人間を完膚なきまで打ちのめすようなことはしない。悪いが、そういう状況に対して皮肉ったコメントを出して、自分に酔いしれてしまう的外れな人々も含めて、そんな人間を好きになろうと思わないのである。

 ただ、今回だけは言っておきたい。望月記者のみならず、今の状況は、おかしいと。

「戦うときは1人で、楽しむときはみんなで」を矜持として、私はペンを握り、物語を生み出している。そうした中で、私は自分の目で見てきことで物事の価値を判断してきた。それは大衆の意見や評価よりも、私自身が感じ、私の人間関係によって得られるものが優先されるということだ。
 
 今年7月、いわゆる“木原事件”をめぐり、元捜査関係者が文藝春秋本社で記者会見を開催した。ここに、かつて、森友事件の取材対応をめぐり「週刊文春」にこき下ろされたことがある望月記者が参加していた。冒頭に書いた通り、その報道が原因であれだけ痛めつけられた彼女が、この時は木原事件に関する文春の報道を賞賛していたのだ。私としては、よくもまぁ、自分を不当に扱った媒体の会見に出席し、その相手を持ち上げることができるもんだなぁと驚かされたものだ。

 そして、会見を見ていて抱いた疑問を、彼女に投げかけた。その疑問とは、望月記者が会見で質問する際、自分の所属である「東京新聞」を名乗っていなかったからだ。それは何を意味するのか? 私は彼女に「東京新聞を辞めるつもりなのか?」と尋ねた。すると……ただ、もうよそう。これ以上は、書いているこちらも虚しくなる。

 ジャニーズ所属のタレントである限り、新規起用を見合わせるという趣旨を発表したテレビ局や企業が続々と出てきたのを見て、これでは反社会的勢力に対する扱いと同じではないかと感じた。その組織に所属しているだけで、個人の才能や評価などは無視され、パージされる。そんな異常な状況に対して、なんの疑いも持たずに、厳格や厳正という言葉を振りかざす風潮にバカらしさを覚えずにはいられなかった。そこのどこに、人間味というものがあるのだろうか。

 私は少年隊や光GENJIをテレビで観て育ってきた。彼らは、多くの人を熱狂させたスターだった。そのジャニーズが儚くも崩壊することに、一抹の寂しさを覚えるのは当然だろう。同時に、この危機を頑張って乗り越えて、新しい会社には、ジャニーズすらも超越する、みんなが夢中になるようなスターたちを生み出す存在になっていってもらいたいと願わずにはいられない。

(文=沖田臥竜/作家)

作家。2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、小説やノンフィクションなど多数の作品を発表。小説『ムショぼけ』(小学館)や小説『インフォーマ』(サイゾー文芸部)はドラマ化もされ話題に。最新刊は『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』(同)、『ブラザーズ』(角川春樹事務所)。調査やコンサルティングを行う企業の経営者の顔を持つ。

Twitter:@pinlkiai

最終更新:2023/10/06 15:28
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