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東野幸治のせいで「体がバカになっちゃった」品川庄司・品川祐の受難

品川庄司・品川祐

「東野さんの『どうした!?品川』で、体がバカになっちゃったっていう」

 品川庄司・品川祐は、あきれ顔でそう振り返った。

 25日公開のニューヨーク公式YouTubeの「30分トーク」に品川が出演。ニューヨークの2人による単独インタビューの形で、トークを繰り広げた。

 冒頭のセリフは、品川がテレビに出演するとどこかナメられている、なぜそんな扱いを受けて大丈夫なのかと屋敷裕政が尋ねた場面だ。

 品川は、共演者が「監督、監督」といじりながら映画を宣伝してくれるのがありがたかったと語ったのち、一呼吸おいて、東野幸治による『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の企画について苦笑いを浮かべた。

「どうした!?品川」が放送されたのは、2012年9月。デビュー当時からギラギラしていた品川は、ベストセラーを連発し、映画監督として実績を積み重ねていくうちにすっかり丸くなり、「韓流スターのよう」になってしまった。そのことに業を煮やした東野が、品川をよく知る芸人仲間を集めて徹底的にイジリ倒すという回だった。この回は当然のように“神回”と呼ばれ、11年たった今でも鮮明に覚えている視聴者は少なくないだろう。

 東野は、破壊の人だった。しかも容赦がなかった。そして、結果としてその対象がなんらかの精神的な再生を果たすことがあったとしても、基本的には「ただ面白いからやってる」だけのように見えた。対象の正体を破壊的に暴くだけで、相手の立ち回りが悪ければ、よろしくない結果を招くこともあった。

 だが、「どうした!?品川」から11年、最近の東野はスタジオMCを安住の地と定めて、波風を立てずに芸能界を生きているように見える。『マルコポロリ!』(関西テレビ)こそまだ往時の名残を見せるが、『ワイドナショー』(フジテレビ系)、『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』(ABCテレビ)では、ひたすら進行に徹している。過去の『あちこちオードリー』(テレビ東京系)では「俺はフロアディレクターのつもりでテレビ出てるわ」との発言もあった。

 東野も、もう56歳。今さらテレビでリスクを冒して過激な振る舞いをする意味などないのだろう。「どうした!?品川」では丸くなった品川をしこたま叩いた東野だが、最近のテレビでの東野こそ、すっかり丸くなっているように見える。そう、テレビでは。

 昨年1月、東野は芸人を呼び出して対談するYouTubeチャンネル「東野vs」を立ち上げた。今年6月、その「東野vs」にキングコング・西野亮廣が出演した。

 西野を「新世界の創造主」とおだて、そのファンを「信者」と呼ぶ東野だが、西野から個室の飲食店で聞いたというオンラインサロンの説明について、西野の発言をシンプルに暴露したのだ。

「お金を払ってリターンを求めてない、つまり幽霊をどれだけ獲得するか……」

 西野は慌てて「おまえ、ホンマおまえ、しゃべんな」と遮り、「よくないやろおまえ、これ使われたら。幽霊会員が増えたらオイシイって、飯の席で言ってたなんて」と困り果てた。だが、東野が「言ってないんですか?」と問い詰めると、「言ったけど……」と渋々応じるしかなかった。

 昨年7月には『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)で優勝する以前のウエストランド・井口浩之を所属事務所・タイタンに訪ね、井口の全身を撮影しながら「すべて神様から取り上げられて、高身長とか二重とか」「見てる人は、うわ気持ち悪、と思うけど」「マイナスがこんだけあってテレビ出てるの奇跡ですよ」「劣悪な精子から誕生した男子」などと容姿についての悪口を連発。井口も「ルッキズムって知ってますか?」とツッコミつつ、もう笑うしかなかった。

「でも、炎上してないでしょ?」

 そこには、トガリ散らしたまま大御所になってしまったという、極めてやっかいな芸人・東野がいた。

 炎上しないのは、東野の根本に後輩芸人に対する愛があるからだ。関係性の成熟している相手に、あえて露悪的な態度で接し、秀逸なリアクションを引き出すことで、東野なりのフックアップを試みているのだ……などと一面的にとらえるには、あまりにも悪口の切れ味がエグい。

 おそらく東野の頭に、上記のような考えはない。ゼロではないだろうが、1もない。0.001くらいだろう。ただ面白いからやっている。特に、意図はない。

 東野が現在出演しているテレビの多くは、さまざまな意図にあふれている。大人の事情にあふれている。視聴者の少ないYouTubeで発散するのが、東野なりの精神的なバランスの保ち方なのだろう。そうして、今後も長くテレビの世界で視聴者を楽しませてほしい……とも、別に思わない。ただ「東野vs」は超面白いので、これからも続けてほしい。井口とか西野とかアンジャッシュ・渡部建とかTKO・木下隆行とか、インパルス・堤下敦も帰ってくるし、そのへんを相手に、聞いたこともないようなひどい悪口をたくさん聞かせてほしい。この原稿の意図は、それだけです。はい。

(文=新越谷ノリヲ)

新越谷ノリヲ(ライター)

東武伊勢崎線新越谷駅周辺をこよなく愛する中年ライター。お笑い、ドラマ、ボクシングなど。現在は23区内在住。

n.shinkoshigaya@gmail.com

最終更新:2023/10/27 00:44
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