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痛烈なハリウッド批判が話題の新作映画

『トロピック・サンダー』に見るハリウッド”やりすぎ”の系譜

t_top.jpg(C)2008 DreamWorks LLC. All Rights Reserved.

 いまや巨大産業となったハリウッド映画は、全世界で公開され、新作が発表されるたびに日本でも大きな話題を集めている。しかしパロディ映画に関しては、いまひとつ、日本人にとって馴染みが薄い。


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 思いつく作品といえば、『フライング・ハイ』を手がけたデヴィッド・ザッカーが監督の『裸の銃を持つ男』(88年)、チャーリー・シーンが主演した『ホット・ショット』(91年)、『007』シリーズなどのスパイ映画をパロディしている『オースティン・パワーズ』(97年)くらいだろう。こうした大作以外のパロディ作品には、どうしてもカルトな分野、というイメージが拭いきれない。

 しかし、ベン・スティラーが監督・脚本・原案・製作・主演まで務めた『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』は、それらのパロディものとは一線を画した存在だという。11月18日発売の「サイゾー」12月号では、同作の人気の秘密について、専門家の見解も取り入れながら様々な観点からメスを入れている。ここでは、その一部を紹介しよう。

■『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』とは?

【あらすじ】おバカな俳優たちのせいで予算と撮影日数がかさみ、プロデューサーから製作中止をほのめかされた監督が、ついに強硬手段に出ることを決意。なんと、俳優たちを極限状態に追い込んでリアルな映像を撮るべく、ジャングルに放り込むというのだ! だが、そこは麻薬組織の縄張りで、本物のゲリラに襲われるハメに……。(監督・出演/ベン・スティラー 出演/ジャック・ブラック、ロバート・ダウニー・Jr.ほか)

 ベトナム戦争を題材にした映画の製作舞台裏を描くコメディだが、細部までこだわり抜いた演出に加えて、豪華なカメオ・スターの出演が話題を呼び、全米興行成績3週連続トップを記録する。しかし、その人気の本当の秘密は、映画のウラに隠された痛快なハリウッド批判にあった。

■タブー破りの禁じ手か? ハリウッドを痛烈批判

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 実は同作は、既存の映画をそのまま模倣するパロディ映画ではない。

「『パロディ(parody)』とか『スプーフ(Spoof)』というのは、既存の映画のいろんなシーンを真似して茶化したもの。例えば『最終絶叫計画』などがそれに当たります。でも、『トロピック・サンダー』は作品そのものではなくて、ハリウッドの映画業界を風刺しているので、『サタイア(satire)』と呼ばれます」(映画評論家・町山智浩)

 実際、『トロピック~』の作中には、映画作品のほかにもさまざまなパロディが数多く見られる。特に印象的なのが、演技派俳優のロバートが演じるカーク・ラザラスが黒人になったところだろう。

「このカーク役は何にでもなれるカメレオン俳優で、白人でありながら黒人になりきって、黒人の尊厳や誇りまで理解したように演じる。ベンは『どんな役でもできるという考え方は、実は傲慢なんじゃないか』と言っていました」(同)

■ハリウッド業界の”やりすぎ”伝説

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 前述のように、映画人でなくとも「大丈夫なの?」というほど、業界を痛烈に批判する”やりすぎ”な同作。しかし、 ハリウッド映画の歴史上、いろいろな意味で”やりすぎ”な逸話は枚挙にいとまがない。
 
 たとえば、お金に関するエピソード。ハリウッド映画は巨額の製作費で話題となることが多いが、その中でもぶっちぎりが、ケヴィン・コスナー主演の『ウォーターワールド』(95年)だ。

「この映画の製作費は1億7500万ドルで、当時の高額ランキングでも五指に入るくらい。でも、映画を観てみると、そんなにお金がかかるとは思えないんですが、実はとんでもないアクシデントが起こっていたんです。映画のセットで巨大な島を作り、海に浮かべてつないでおきました。でも、翌朝スタッフが行ってみると、あるはずの島が影も形もない。つないであるロープがゆるんでほどけ、流れていってしまったんですよ。このためセットは作り直し。その間、製作はストップせざるを得ず、俳優をつなぎ留めるギャラなどでみるみる間に製作費がかさんでいったんです」(映画関係者)

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 続いて、役づくりにまつわるエピソードではこんなものがある。

 役に応じて髪の毛を抜いたりするロバート・デ・ニーロの徹底ぶりは有名だが、04年に公開された『マシニスト』のクリスチャン・ベールは、デ・ニーロを超えていると評判だ。

「不眠症の男を演じるため、クリスチャン・ベールは4カ月の間、毎日りんご1つとツナ缶1つで過ごし、30キロも減量したそうです。結果、スクリーンでの彼はほとんど骨と皮(苦笑)。見ているだけで、ガリガリで死にそうでしたよ」(同)

 『トロピック・サンダー』の作中には、このようなハリウッドの”やりすぎ”に対する痛烈な批判が随所にちりばめられている。単に作品を模倣するだけのパロディ映画とは、ひと味違うのだ。

 「サイゾー」12月号では、同作やハリウッドの裏舞台についてさらに詳しく紹介しているので、同作の鑑賞と合わせてぜひチェックしてほしい。
(丸山大次郎・取材/「サイゾー」12月号より)

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『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』
~11月22日(土)より丸の内ピカデリー1ほか全国ロードショー!~
 ベン・スティラー(『メリーに首ったけ』ほか)、ジャック・ブラック(『スクール・オブ・ロック』ほか)、ロバート・ダウニー・Jr.(『アイアンマン』ほか)という主演3人の顔ぶれもさることながら、カメオ出演の豪華さにも注目。作中で冷酷非情な映画プロデューサーを演じているトム・クルーズを筆頭に、『スパイダーマン』で大ブレイクしたトビー・マグワイア、『ナショナル・トレジャー』シリーズのジョン・ヴォイトなど、実にそうそうたる顔ぶれ。これだけのメンツを集めることができたのは、ひとえにベンの人徳だとか。

☆ベン・スティラー来日☆
そんなハリウッドのやり手ベンが、11月20日(木)に緊急来日決定! 都内某所で会見を開くほか、各メディアにも登場予定なので、ぜひチェックしてほしい。

公式サイト:http://www.shijosaitei.jp/
“役者バカ”達の裏リンク集:http://www.shijosaitei.jp/link/
パラマウント ピクチャーズ ジャパン配給
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最終更新:2008/11/17 00:00
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