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お笑い評論家・ラリー遠田の【この芸人を見よ!】第28回

M-1王者NON STYLEが手にした「もうひとつの称号」とは

nonstyle00.jpgDVD『NON STYLE LIVE 2008 in 6大都市
~ダメ男vsダテ男~』より

 「M-1グランプリ」というのはもともと、それほど社会的に大きな影響力を持ったお笑いイベントというわけではなかった。始まった頃のM-1は、若手芸人が漫才で勝敗を競うというだけのよくあるバラエティ特番の1つに過ぎなかった。だが、回を重ねるごとに視聴率は上がり、世間の注目度も高まっていくにつれて、M-1の存在感は少しずつ大きいものになっていった。

 特に、2007年のM-1で敗者復活戦から勝ち上がったサンドウィッチマンが優勝したことの持つ意味は大きい。サンドウィッチマンの2人は、M-1を制したことで、ほぼ無名の状態から一気に売れっ子芸人の仲間入りを果たした。その過程を見届けてきた近年のお笑い視聴者は、M-1を誰が優勝するかという興味だけで楽しむのではなく、そこに出場した芸人や優勝した芸人がどうやって売れていくのか、といったその後の展開まで含めて楽しむようになってきている。

 その点から考えると、サンドウィッチマンの例とは対照的とも言えるのが、昨年のM-1を制したNON STYLEである。同大会で準優勝のオードリーが爆発的に売れてしまったことで、NON STYLEは常にオードリーと比較される存在となり、「オードリーよりも売れていない」「華がない」「トークが下手」などとさんざん叩かれてきた。これらのNON STYLEに対する悪評のほとんどは言いがかりに近いもので、それほど明確な根拠があるというわけではない。そういった評判は、正当性があるから広まっているわけではなく、2位のオードリーが売れまくっているのに1位のNON STYLEは全然売れていない、というストーリーの方が面白いからみんながそっちに乗っかることにした、というだけの話である。

 最近では、NON STYLEの2人が、そのイメージを逆手に取ったような企画にも顔を出すようになってきている。4月17日放送の『サプライズ』(日本テレビ)では、NON STYLEの2人がゲストに出演。視聴者の電話投票で民意を問う「評決クダル!」という企画で、「NON STYLEがM-1に優勝したのは妥当? 意外?」「NON STYLEとオードリー、どっちが面白い?」といった質問について、どちらの答えが多数派なのかを当てるという過酷な企画に挑んでいた。

 ただ、ここで私は、「NON STYLEはそんなひどい目に遭っていてかわいそうだから、みんなもっと彼らを評価してあげよう」などと言いたいわけではない。厳しい選択を迫られながらも、そこで一喜一憂する彼らの姿は明らかに面白かった。芸人とはそもそも、どんな悲惨な境遇も「おいしい」という魔法の言葉1つで笑いに変えられる不思議な人種である。NON STYLEがただ単にM-1に優勝しただけでなく、それをネタにしてさんざんいじられて、ここまで話題を作って引っ張ることができたのは、ある意味ではこの上なくおいしい思いをしているとも言えるのである。

 NON STYLEはネタもトークも面白い。そんなことは今さら言うまでもない当たり前のことだ。ここでいくら正しいことを言っても、今のNON STYLEのタレント活動に対する営業妨害になるだけだろう。「優勝したのに売れていない」というのは、実力と運を兼ね備えた彼らにしか得ることのできなかった日本一の「おいしい称号」でもあるのだ。
(お笑い評論家/ラリー遠田)

●「この芸人を見よ!」書籍化のお知らせ

日刊サイゾーで連載されている、お笑い評論家・ラリー遠田の「この芸人を見よ!」が本になります。ビートたけし、明石家さんま、タモリら大御所から、オリエンタル・ラジオ、はんにゃ、ジャルジャルなどの超若手まで、鋭い批評眼と深すぎる”お笑い愛”で綴られたコラムを全編加筆修正。さらに、「ゼロ年代のお笑い史」を総決算したり、今年で9回目を迎える「M-1グランプリ」の進化を徹底的に分析したりと、盛りだくさんの内容になります。発売は2009年11月下旬予定。ご期待ください。

●連載「この芸人を見よ!」INDEX
【第27回】ダチョウ倶楽部・上島竜兵 が”竜兵会”で体現する「新たなリーダー像」
【第26回】品川祐 人気者なのに愛されない芸人の「がむしゃらなリアル」
【第25回】タモリ アコムCM出演で失望? 既存イメージと「タモリ的なるもの」
【第24回】ケンドーコバヤシ 「時代が追いついてきた」彼がすべらない3つの理由
【第23回】カンニング竹山 「理由なき怒りの刃」を収めた先に見る未来
【第22回】ナイツ 「星を継ぐ者」古臭さを武器に変えた浅草最強の新世代
【第21回】立川談志 孤高の家元が歩み続ける「死にぞこないの夢」の中
【第20回】バカリズム 業界内も絶賛する「フォーマット」としての革新性
【第19回】劇団ひとり 結婚会見に垣間見た芸人の「フェイクとリアル」
【第18回】オードリー 挫折の末に磨き上げた「春日」その比類なき存在
【第17回】千原兄弟 東京進出13年目 「真のブレイク」とは
【第16回】狩野英孝 「レッドカーペットの申し子」の進化するスベリキャラ
【第15回】サンドウィッチマン 「ドラマとしてのM-1」を体現した前王者
【第14回】小島よしお 「キング・オブ・一発屋」のキャラクター戦略
【第13回】U字工事 M-1決勝出場「北関東の星」が急成長を遂げた理由
【第12回】江頭2:50 空気を読んで無茶をやる「笑いの求道者」
【第11回】バナナマン 実力派を変革に導いた「ブサイク顔面芸」の衝撃
【第10回】山本高広 「偶像は死んだ」ものまね芸人の破壊力
【第09回】東京03 三者三様のキャラクターが描き出す「日常のリアル」
【第08回】ジャルジャル 「コント冬の時代」に生れ落ちた寵児
【第07回】爆笑問題・太田光 誤解を恐れない「なんちゃってインテリ」
【第06回】世界のナベアツ 「アホを突き詰める」究極のオリジナリティ
【第05回】伊集院光 ラジオキングが磨き上げた「空気を形にする力」
【第04回】鳥居みゆき 強靭な妄想キャラを支える「比類なき覚悟」
【第03回】くりぃむしちゅー有田哲平 が見せる「引き芸の境地」
【第02回】オリエンタルラジオ 「華やかな挫折の先に」
【第01回】有吉弘行 が手にした「毒舌の免罪符」

NON STYLE LIVE 2008 in 6大都市 ~ダメ男vsダテ男~

言わずもがな。

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最終更新:2013/02/07 12:56

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