日刊サイゾー トップ > インタビュー  > AV30・安田理央×高橋源一郎
「AV30」シリーズ発売記念ロング対談!!

AV誕生から30周年の思い出をAV好き作家・高橋源一郎とAVライター・安田理央がアツく語り合った!!

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■期せずしてアートとなった「500人SEX」

安田 90年代半ばになると、ソフト・オン・デマンドなどインディーズ系(セルビデオ)メーカーが台頭して、00年代初頭にいわゆる企画単体ブームが起こります。以降、女優の質、量ともに充実するんですけど、例えばいまなお現役の吉沢明歩(03年~)や麻美ゆま(05年~)みたいな息の長いビッグネームがいる一方で、デビュー作が売れずにすぐ切られてしまう女優もいたり。そのへんはシビアになっていくんですよね。

高橋 社会の縮図だね。

安田 メーカーも苦しいんですよね。やっぱりインターネットの影響が一番大きいんですけど、作品の本数は増えてるのに価格は下がってますから。そうなると、とにかく売れる作品をつくらなきゃいけなくなって、結果、V&R的なもの、つまり企画性重視のドキュメンタリータッチのものなんかが排除されていく。

高橋 余裕がないから、遊べないんだよね。

安田 高橋さんは、昨年上梓された『恋する原発』(講談社)で集団セックスを扱ってますけど、ソフト・オン・デマンドの名作『500人SEX』(06年)みたいなのは、いまはもう撮れないですよ。

高橋 あれは感動的だよね。全員がイッたあと、エンドロールでやたら叙情的な歌が流れるでしょ。もうね、大作映画を見終わった気分なんだけど、泣いたらいいのか笑ったらいいのかわかんない。もはやアート。

安田 しかも制作サイドにはそんな気はさらさらなくて、ただ結果としてアートになっちゃってるという(笑)。

高橋 そうそう。「これはすばらしいものだから鑑賞してください」って思ってつくると「お芸術」になっちゃう。でも、あの作品は「これはなんなの? もうアートとしかいいようがないよね?」っていうものに、結果としてなってしまった(笑)。

安田 高橋さんって、最近のAVも結構見てますよね?

高橋 僕はDMMの会員だからね(笑)。新作のサンプルなんかはほぼチェックしてます。僕が「AVが変わったな」って思ったのは、00年代後半、プレステージの作品を見てから。あそこって、基本的に女優の名前で売ってないでしょ。

安田 いわゆる「素人モノ」といわれるジャンルなんだけど……。

高橋 別に本当の素人なわけではない。単体女優並みに可愛い女の子たちを、匿名性でもって、街で見かける本物のOLさんとか女子大生っぽく見せてるよね。いいとこ突いてる。

安田 「プレステージ以前」と「以降」では大きな違いがあって、以前は、素人はブスで当たり前、むしろブスだから素人っぽくていいっていわれてたんです。だけど、プレステージ以降は、素人モノでもブスは許されなくなった。

高橋 AVの中でブスが生きていけるのは、もはやヘンリー塚本【AV黎明期からアクの強いSM系のドラマ作品ばかりを撮り続けている、孤高の有名AV監督】の世界だけだね。ときどき僕は近所のホテルで缶詰になって作品を書いてるんだけど、そこのホテルの部屋のテレビのアダルトチャンネルは、ヘンリー作品ばっかり流すの。僕すっかり喜んじゃんって(笑)。

安田 ヘンリーさんはいいですね。最近は特に、エロと作品性がいい具合にミックスされてて。つぼみや風間ゆみも出てるから、必ずしもブスばっかりってわけじゃないですけど(笑)。

高橋 男優の花岡じったをうまく使ってるじゃない。キワモノなんだけど、あの世界では妙にリアリティがある。ほんとにどうしようもない、野獣のような昭和の男。ドラマ性が濃厚だから、ヘタするといやらしくなくなっちゃう気もするんだけど、彼の作品の中では、普通のおばさんみたいな人でもやたらエロいよね。

安田 基本的にAVのカラミって、始まったらあとは男優と女優にお任せで撮る場合が多いんですけど、ヘンリーさんはカラミも細かく演出するんですって。セリフ回しとかも、女優が「たまんねえ……」とか言ってて。

高橋&安田 へへへへへへへ(笑)。

高橋 退廃的で、登場人物が不健康な貧乏人ばっかりで、みんなトラウマを抱えててさ。そんな人たちが、ものすごいねっとりとしたセックスをするんだよね。

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