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ラジオ批評「逆にラジオ」弟8回

気づきすぎるコラムニストが、虫めがね的観察眼で見いだす小さな大発見『えのきどいちろうの水曜Wanted!!』

enokido.jpgTBSラジオ『えのきどいちろうの水曜Wanted!!』

しゃべりと笑いと音楽があふれる“少数派”メディアの魅力を再発掘! ラジオ好きライターが贈る、必聴ラジオコラム。

 えのきどいちろうは、気づきの人である。しかし彼の書くコラムには、何も特別な事件は起こっていないように読めるし、彼のラジオは何も有意義なことは言っていないように聞こえるかもしれない。だがそれは、受け手が気づく前に、まだ彼だけしか気づいてない面白さについて書いたりしゃべったりしているからで、そのポップな文体やゆるい口調とは裏腹に、受け手は彼が見つけた面白さに必死についていくことで、数々の発見や幅広い視野を手に入れることができる。面白さとは本来、そういう発見の過程にこそあるもので、すでに知っていることを再確認して安心する作業ではない。

 この10月に始まった新番組『えのきどいちろうの水曜Wanted!!』(TBSラジオ 水曜20:00~21:50)は、まさにそんなえのきどいちろうの面白さが、尻尾の先まで詰まった番組だ。ラジオでは、『BATTLE TALK RADIO アクセス』や『ミミガク』(いずれもTBSラジオ)のパーソナリティー、そして『くにまるジャパン』(文化放送)へのコメンテーター出演等、近年はわりと報道方面の役割を担うことが多く、それはそれでお堅い話題に柔らかな切り口を持ち込むという意味で面白いのだが、『Wanted!!』といういよいよ完全に無意味なことができる場を与えられたことで、彼の異様なまでの「気づき力」が、感触的にはあくまでも彼らしくゆるゆると、しかし内容的には全開、そして濃密に発揮されている。

 えのきどの「気づき力」の根底にはもちろん精度の高い観察眼があるが、その眼にはめ込まれたレンズは天体望遠鏡的なそれではなく、むしろ虫めがね的なものだ。遠くよりも近くを見る視力がズバ抜けている。たとえば初回の番組冒頭で彼は、「新番組はいつぐらいまで新しいのだ?」という、普通に考えればものすごくどうでもいいテーマを掲げた。開始1時間までが新番組なのか、半年たっても新番組と呼んでいいのか。そんなこと、ほかのパーソナリティーはきっと誰も気にしていない。新番組を始めるにあたっては、自己紹介をしたり、番組で何をしていきたいかという抱負を語ったり、あるいは最近あった面白い話をしたりというのが定番であり、それでも十分にパーソナリティーにとって目の前にある題材だといえる。さらに、番組名自体について疑問を持ったり、思い入れを語ったりするというのもよくある話だ。

 しかしえのきどは、おそらく台本や企画書であれば番組タイトルの前になんとなくついている、そして新聞のラジオ欄であれば、やはり番組名の前に燦然と輝いている、「新」の字に真っ先に引っかかりを覚え、居ても立ってもいられなくなってしまったのである。番組名よりも手前でとどまって考えてしまう。いちいちそんなところで立ち止まってしまったら、一向に前に進むことなどできない。毎朝起きて、「ベッドからの起き上がり方」について考えたり、「なぜ人は二足歩行をするのか」を考えていたら社会生活が立ちゆかない。そうやって大人は無意識のうちに、手前のことを考えないようになる。しかし、これこそが本物の好奇心であり観察眼であって、だから好奇心旺盛な子どもはすべての角をあみだくじのように曲がって寄り道をして迷子になり、目の前のボールを追いかけて遠くから来る車に気づかず飛びだしてしまうのだ。

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