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残酷すぎる退屈な日常から生まれるドラマ アニメ『悪の華』第1回先行上映会レポート

DSC_0035.jpg司会のニッポン放送・吉田アナウンサー(左)と長濱博史監督。

 3月21日、東京・科学技術館にてテレビアニメーション『悪の華』第1回先行上映会が行われた(この作品は、話数を「回」で数える)。上映の前後には長濱博史監督、出演者の植田慎一郎(春日高男役、第24回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストファイナリスト)、伊瀬茉莉也(仲村佐和役)、日笠陽子(佐伯奈々子役)が登壇してトークを繰り広げ、イベント終了後は報道陣の取材に応じた。

 『悪の華』は「週刊少年マガジン」(講談社)で連載中の同名漫画(原作・押見修造)のアニメ化。4月から放映を開始する。

 技術的には、ロトスコープを採用している点が大きな特徴だ。ロトスコープ自体は既存の手法だが、それを全編、テレビシリーズの頭から最後までやり通した例はほかにない。実写撮影→手描きでアニメ化→アフレコという過程を踏むのは当然として、全編がロトスコープであるため、まず原作者の生地であり、原作の舞台である群馬県桐生市で3カ月間に渡り、実写専門のキャストを起用しての撮影が行われた。その上でアニメの画として描き、音を響かせ、声を載せる。最終的に声優の声が載ると、それは実写でもアニメでもない何かになっていた。

 上映前、壇上に立った長濱監督は「ちょっとポカン、としてしまうかもしれない。普通のアニメーションの映像とは違うので」と言った。

 ちょっとどころではなかった。

 「第1回」はボードレールに心酔する読書好きの少年、春日高男が登下校する何気ない様子に始まり、この物語の発端となる事件の直前までの「何も起こらない時間」を執拗に描いていく。

 「うっせぇ クソムシが」。おそらく仲村佐和のその言葉以外は、何も起こらない日常を映しているだけなのに、不吉な音楽、音響と共に、緊迫した濃密な時間が続く。エンドロールでようやく解放されると、ほっとすると同時に、その20数分への充足感も生まれ、早く次を見たいという気にさせられる。

 スクールカーストを頭で捉えた程度のものではなく、リアルな学生生活の今、あるいは記憶を、そのまま呼び起こされるような完璧な生々しさがある。放映開始前から問題作と言ってもいいかもしれない。間違いなく、新しい何かを提起している。

 すべてにおいてテンションが高い映像の中で、特に光っていたのは実写と声の演技の両方で主人公の春日高男を演じた植田慎一郎の芝居だ。その貢献は、作品が完結していない現時点でも称賛に値する。

 この先、春日高男は密かに想い焦がれる佐伯奈々子の体操着に手をかけたところを仲村佐和に目撃され、心の闇を共有する間柄になっていく。そして「いい子」を演じ続けることに違和感を覚える佐伯も、次第に春日に惹かれていく。3人の関係はどうなるのか。この世界の圧力はどこまで高まるのか――。

 上映後に再び登壇した長濱監督は最初「原作と一緒です。漫画と一緒です。それしか言わないです(笑)」と言っていたが、徐々に言葉の洪水が止まらなくなっていく。

「(ロトスコープは)コントロールが利かないんですよね。髪の毛とか。服のシワとか。コントロールしようとすればするほど、記号に落ち着けようとすればするほど、ウソになっていく。どこまでやっていくかを一話で感じ取り、模索して、方向性が見えてきている」

「これ以降、どんどん色が変わっていく。カテゴライズされたくないんですとにかく。『悪の華』はなんとかいうジャンルです、とか、あれみたいだとならないようにしようと」

「アニメになりすまそうとしているんです。スターチャイルドから普通のアニメとしてリリースしようとしている」

「桐生の試写会でも司会の松崎(克俊、山田役)さんから、犯行声明みたいだと言われたんですが」

「アニメの世界にしか存在しない仲村とか佐伯にしたかった。原作のキャラクターをそのまま出しても。原作を読めばいいんですよね。そういう意味では原作に戻れるつくりになっている」

 そして植田慎一郎、伊瀬茉莉也、日笠陽子が登壇。ここからおよそ1時間、熱の入ったトークが続く。

「2回目すごいですよ。放送を見てほしいですね。1回見ると画に慣れるので」(植田)

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